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バイク映画といえば『イージー・ライダー』……と言っても過言ではないほど、年配の人から「イージー・ライダーに憧れてバイクに乗り始めた」なんて話を聞きますが、それほど当時(1970年)の人気がスゴかったのでしょう。
そんな『イージー・ライダー』の人気に便乗するかのようにタイトルが似ているバイク映画を発見しました!
その作品とは……1971年に日本で公開された『C.C.ライダー』です。
このタイトルを見た筆者は、物語の内容も似ている『イージー・ライダー』のパクリ映画なのかと思っていたのですが、アメリカでは『C.C. and Company』というタイトルで公開されているバイク映画でした(日本向けにタイトルがアレンジされた!?)
ますますどんな映画なのか気になったので、『イージー・ライダー』を視聴済みの上で『C.C.ライダー』を実際に見てみることにしました。
※当記事には『C.C.ライダー』や『イージー・ライダー』本編のネタバレが含まれています。未視聴の方はご注意ください。
会計していない商品でサンドイッチをつくり始める『C.C.ライダー』
結論から言うと『イージー・ライダー』と同じく、やはり「意味が分からなかった」というのが最後まで見た感想です。
ただ、『イージー・ライダー』と違って当時のアメリカの社会情勢を知らなくても笑えるシーンなどもあり、エンターテインメントとして楽しく見ることができるバイク映画だなと思いました。
まず『イージー・ライダー』と同じく、主人公の第一印象が最悪でした。
なぜなら、冒頭でバイクに乗ってスーパーにやってきた主人公・CCが店内に入ると、数枚のパンとナイフ、ハムやチーズなどの商品を使って、サンドイッチを作り始めるんです。
そのあとCCは「マフィンはどこに?」と店員に聞いて、未開封だったマフィンさえも食べてしまいます。
これらの商品は会計をしていないので、もし万引きGメンがその場にいたら、即座に逮捕されているはずでしょう。
その後、スーパーで用事を済ませたCCは、トカゲとカラスという登場人物たちと、旅の道中で故障中のリムジンを見つけます。
クルマに乗っていたアンという女性が助けを求めていますが、気にもせず車内にテレビやお酒があることでテンションが上がり、子供のように無邪気にはしゃぐトカゲとカラスたち。
それでは物足りず、トカゲとカラスたちはアンに嫌がらせをし始めるのですが、CCが彼らを殴ってアンを助けます。
さっきまで盗んだ食材を使ってサンドイッチを作っていたCCでしたが、このシーンでは困っている女性を助けていました。お前、意外といいヤツだったのか……?
アンを助けたあと、バイカーギャング「ザ・ヘッド」のメンバーたちが集まる拠点に戻るCC。そこには「ザ・ヘッド」のリーダーであるボス・ムーンがいましたが、CCに向かって「お前の言い分をいってみろ」と、かなり怒っている様子です。
それに対しCCは「謝ればいいんだろ? 女を取り合っただけじゃないか、それが?」と言うので、CCはチーム内で煙たがられている存在なのだなと分かるシーンでもありました。
次の日、ムーンと共にツーリングをする「ザ・ヘッド」のメンバーたち。
旅の途中で、「モトクロス」と書かれている看板を見かけたムーンはレースに興味をひかれたのか、メンバーと共にレースが行われる会場へ向かうことになります。
ですが、入場料金の2ドルを「ザ・ヘッド」のメンバーたちは頑として払おうとしません。
その様子を見ていた入場料金の回収をする係員は、なぜか入場料を払わない「ザ・ヘッド」のメンバーたちを数えていきます。
「なぜ数えているんだろう?」と不思議に思っていると、「ザ・ヘッド」のメンバーでもないただの一般人に「全部で20ドルだ」といい、払わせようとしていたのです(笑)。
そんな中、会場内ではモトクロスレースが行われており、レーサーたちがオフロードバイクに乗って競い合っている最中でした。
そんなレース会場を見ていたムーンは「本物のバイクを見せてやろうぜ」とドヤ顔をしたあと、なぜかハーレーのカスタムチョッパーでモトクロスコースに乱入するのです。
「なんでチョッパーに乗ったままモトクロスコースを走っているの!?」とつい思ってしまったわけですが、『イージー・ライダー』でもこれぐらいイカれた人たちがいたのを思い出した筆者。
もしかすると、当時(1960年代)のアメリカのバイク乗りの中には、こういったヤンチャなことをする人たちが多かったのかもしれませんね。
なぜかレーサーの素質があった主人公・CC
翌日、「ザ・ヘッド」のメンバーたちよりも先に起きてバイクを動かすCC。どこに向かうのかと思えば、そこはオフロードバイクなどを取り扱っているバイクショップでした。
所持金が0に等しいですし、これまでの主人公の行動から推測するにオフロードバイクを盗んで逃げるのかなと思っていた筆者。
しかし、どうやら愛車のチョッパーを売り払い、その資金を使ってオフロードバイクを購入するとのこと。
そんなCCはよほどバイクの見た目が気に入ったのか、店員の許可を取って店の周りで試運転をしますが、よ〜く見てみるとオフロードバイクをリヤキャリアにうまく載せて盗んでいましたね(笑)。
主人公なのに盗みを働くシーンが多いように思えますが、華麗にバイクを盗み去ったあと、CCは前日ムーンたちが乱入したレース会場に向かいます。
さっそく盗んだオフロードバイクでモトクロスコース内を走るのですが……「どこでそのテクニックを覚えたんだよ!」と思ってしまうほど、華麗なライディングテクニックを披露しているCC。
その様子を偶然見ていたモトクロスレースの主催者・チャーリーが、「お前はレーサーの素質がある。日曜のレースに出ろ、参加費は15ドルだ」と言われたことをきっかけにCCはレースに出場することになります。
バイクの運転が上手い描写があれば納得がいきますが、そんなシーンはなかったので、どこで覚えたテクニックなのか不思議です。
当日、意気揚々な気持ちでスタート位置につき、レース開始の合図と共に走り出すCC。
しかし、1位になりたい思いからか最終ゴール手前で転んでしまい、フロントタイヤが外れるというハプニングが……!
その結果、惜しくも3位となったCCですが、どういうワケか総合順位では1位に輝いて賞金600ドルを手にします(どういうこと?)。
ちなみに、そのことを「ザ・ヘッド」のボス・ムーンにも伝えますが「そのうちの100ドルを自分のものにする」とCCが言った途端、ムーンは笑いながら「どんな金も全部グループの財布に入れるんだ。つまり、分け合う精神だ」と、ちょっと何言っているのかよく分からない発言をします。
さらにムーンは「調子に乗るんじゃないぞ。リーダーはこの俺だ」といい、その態度に腹が立ったCCはムーンの顔面をブン殴ってしまいます。
殴ってしまう気持ちも分からなくはないのですが、結局CCは残りの100ドルさえも奪われてしまいます。
打つ手なしと思っていた矢先、CCお得意の盗みテクニックで500ドルを無事取り返すことに成功しました。
翌朝、500ドルを手にCCは「ザ・ヘッド」のメンバーたちから遠ざかるようにある場所へ訪れます。
そこは各所に警備員が配備されていて「KAWASAKI」と書かれた看板のほか、カワサキ製のバイクが数多く並んでいる屋外プール付きの豪邸でした。
どうやらCCはモトクロスレースの主催者・チャーリーと会うために豪邸へ向かったそうですが、その建物内で偶然にもアンと出会うことになります。
アンはCCがなぜ「ザ・ヘッド」のメンバーになったのか、そのワケを聞くのですが「俺の働いていたバイク屋に奴らが来た。修理代を払わないから喧嘩になったんだ。どういう訳か気に入れられて仲間に誘われた」という衝撃的な理由で「ザ・ヘッド」に加入したことを明かします。
修理代を払わないムーンたちと仲間になる理由も意味不明ですし、そもそもCCのどこを見て気に入ったのかナゾではありますが、ムーンからすると何か惹かれるものがCCにあったのかもしれませんね。
『イージー・ライダー』とは全く違うハッピーエンドに驚く!
話し合っているうちに意気投合をしたCCとアンたちは、一緒に住み始めるわけですが、CCが食材の買い出しで家を留守にしている間に「ザ・ヘッド」のメンバーたちの企みによって、アンが誘拐されてしまいます。
その後、CCが「ザ・ヘッド」のメンバーたちに案内されて誘拐されたアンの元へ向かうのですが、ムーンはアンを人質にして身代金を要求します。
その額、なんと1000ドル! 当時の日本円換算(1ドル360円)で、36万円です。
つい「リアルな金額だなぁ」と思ってしまいましたが、CCは戸惑う様子を一切見せず「そんなに金が欲しいなら倍の2000ドルでどうだ。平地レースでお前が勝てば2000ドルだ」と、かなり強気に答えます。
ムーンがこの提案を断れば、プライドとリーダーとしての尊厳が失われ、もし受け入れても負ければ2000ドルが水の泡となります。
最初は「なんでお前とレースをしなくちゃいけないんだ!」とレースに否定的だったムーンですが、CCから「怖いのならいいけど」と煽られたこともあってか、その提案を受けることにします。
このシーンを見て不思議に思ったのが、アンを誘拐するという大胆な行動を取っているのにもかかわらず10万ドル、100万ドルなど、なぜ値段交渉をしようと思わなかったのでしょうか。ナゾですね。
約束通り2000ドルを用意したCCは「ザ・ヘッド」のメンバーたちと一緒にレース会場である学校へちゃっかり不法侵入します。
そこでCCはルールを聞かされますが、その内容がコース内を10周して先に着いたものが勝利し、もしバイクの故障等があった場合は各所に配置しているチョッパーに乗り換えてもいいとのこと。
一見親切なルールとなっていますが、あくまで彼らは暴走族的存在……ルール自体を破る可能性もありますし、なにが起こるか分かりません。
というか、あのムーンがルールを守るような気がしませんが、レースが始まると先頭に立つCC。
自分が勝てないことを察してか、ムーンはCCの背後について足でCCの車体を蹴り、バイクごとぶつかるなどといった妨害行為を繰り返すので、中々先頭をキープすることができませんでした。
しかし、そんなムーンに天罰が下ったのか、コース場外へ飛び出して停車中のクルマとぶつかり空中へ。そして、地面に頭を強く打ちすぎたことによって、ムーンが息を引き取ることになります(ヘルメットを着用すればよかったのに……)。
その様子を見ていたCCは悲しむ姿を見せることなく、アンを連れてバイクで立ち去っていくわけですが、そんなCCたちを見ていた「ザ・ヘッド」のメンバーたちはバイクに乗って追いかけていきます。
とはいえ、かなりしつこく追ってくるため、彼らを欺くためにCCは大胆な作戦に出ます。
まず、CCは袋小路まで「ザ・ヘッド」のメンバーたちを連れてきて、彼らが到着する前に自らのバイクを崖下に投げ出してしまいます。
その後「ザ・ヘッド」のメンバーたちが、炎上しているCCのバイクを見ている隙に、彼らが乗っていたバイクのガソリンを抜いて火をつけるという画期的な方法で、見事追手から逃れることができたのです。
バイクのガソリンを抜いて火をつけるなんて、かなり鬼畜な所業です!
そして、CCたちが彼らのバイクを一台盗んで逃走をしたのち、ファッションライターとして生きるはずだった道を選ばず、CCと一緒に過ごすことを選んだアンたちの後ろ姿を映して、ようやく物語が終わりとなります。
最後の最後で主人公たちが死ぬ『イージー・ライダー』と、主人公の恋人と一緒に旅をすることになった『C.C.ライダー』。
実際に見てみると全く違うエンディングで、むしろ『イージー・ライダー』よりも面白かったバイク映画だなと思いました。
なお白熱のレースシーンのほか、モトクロス会場をチョッパーで走っているシーンは必見ですので、ぜひ『イージー・ライダー』を知っている人も見てほしい作品だなと思った次第です。
レポート&写真●モーサイ編集部・小泉