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なぜタペット音が発生するのか?
エンジンをかけたとき「カチカチ」「カタカタ」といった一定リズムの音がエンジンから聞こえてきたとしたら、それは「タペット音」である可能性が高い。
4サイクルエンジンはカムシャフトによって、吸排気のバルブを駆動してシリンダーの入り口や出口を閉じたり開けたりすることで、吸気や排気を行っている。
そのカムシャフトとバルブの間に置かれているのがタペット(バルブリフター)と呼ばれる部品。そのタペットが由来で、発生しているノイズを指している言葉だ。
カムシャフトを持たない2サイクルエンジンではタペット音はそもそも発生しないので、2サイクルエンジンで「カチカチ」とした音がするのであれば、ここから先に記すタペット音の発生原因とは異なる。
異音の原因解明は非常に難しいので断言はできないが、エンジン始動直後であれば、冷えた状態でピストンとシリンダーのすき間が大きいことに由来する正常な音。走行後に聞こえるようなら軽い焼き付きの可能性があるので、プロショップなどに見てもらうといいだろう。
カムシャフトとバルブのすき間を埋めることができない理由
それはさておき「カチカチ」と音が聞こえる4サイクルエンジンのタペット音もエンジンが暖まってくると、徐々に小さくなってくるのが正常な状態だ。
なぜなら、バルブ周り(動弁系)のパーツのほとんどは金属製で、エンジンが暖まってくるとわずかながら膨張するからだ。そのため、冷えた状態でクリアランス(すき間)をゼロにすることはあり得ない。
前述したように、エンジン始動直後にタペット音が聞こえてくるのが正常というのはそういう意味だ。適切に暖機が進むと、各部のクリアランスが小さくなりタペット音が消えるわけだ。
OHC(オーバーヘッドカムシャフト)の場合、構造的にはカムシャフト・タペット・バルブとなっているか、カムシャフト・ロッカーアーム・バルブとなっていることが多い。OHV(オーバーヘッドバルブ)ではカム・タペット・プッシュロッド・ロッカーアーム・バルブと構成要素が増える。
いずれにしても、カムシャフトとバルブの間にはタペットという部品が存在する。機械を正常に動かすために、部品間には適切なクリアランス(すき間)が必要なのだ。
タペット調整することで異音は小さくなる?
ここからが本題だ。こうした動弁系のクリアランスというのは、徐々に広がってくる。それはパーツの摩耗由来であることが多いが、そうなるとタペット音がいつまでも消えなかったり、エンジン始動直後にそれが盛大なノイズとなったりする。ノイズが発生した場合、メンテナンスが必要だ。
エンジン各部の摩耗によってタペット音が大きくなる構造であれば、当然ながらタペット音を小さくするための手段も用意されている。
ロッカーアームを使っているエンジンの場合、ロッカーアームのアジャストスクリューを調整することでクリアランスを正常にすればタペット音は治まるし、直打タイプの場合はタペットとバルブの間に挟まれたシムを交換することで正常な状態に戻すことができる。
こうやって文字にすると簡単な作業に思えるかもしれないが、ロッカーアームのスクリューを調整する場合でも適切なクリアランスを計測する「シックネスゲージ」といった専用工具は必要になるし、作業時はピストンを正確に上死点にして行わなければならない。
当然ながら、メーカー指定値のクリアランスも調べなくては作業ができない。もしタペット調整を行うのであれば、アマチュアが工具を揃えて下手に手を出すよりもプロに依頼する方が結果的に安くなるし、安心だ。なにしろタペット調整の凡ミスはエンジンブローに繋がってしまう恐れもあるからだ。
なお動弁系の摩耗を抑えるには適切なエンジンオイルを選び、適切なタイミングで交換することがもっとも効果的といえる。
タペット音が出てきてからでは遅いかもしれないが、きちんとオイル交換をするという意識を持つことも重要だ。
レポート●山本晋也 編集●モーサイ編集部・小泉元暉