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激レアの最強免許証「フルビット」とは?
運転免許証の中で“最強”の呼び声高い「フルビット免許証」をご存知でしょうか。
免許証における「フルビット」とは、運転免許証の右下に記載されている14個の「種類」の欄がすべて埋まった状態のことをいいます。
この免許証を持つ人は「フルビッター」と呼ばれることもあり、そのレア度の高さゆえ周りから尊敬の眼差しを浴びています。
ちなみに、フルビットという呼び方の由来は、コンピューターの世界でデータを「0」か「1」で表示する2進数において、データの最小単位を「1ビット」というところから来ています。
現在の免許証には「普通」(普通自動車運転免許)「大型」(大型自動車運転免許)「大自二」(大型自動二輪免許)「大特二」(大型特殊自動車第二種免許),etc.など、取得した免許の種類が名称で記載されていますが、1994年までの運転免許証には免許取得の有無がビット表記されており、取得した種類に「1」、取得していない種類に「0」と記されていました。
このことから、すべての免許種類に「1」が表示されている免許証、表示方法が名称に変わってからも種類の欄がすべて埋まった免許証のことを「フルビット免許証」と呼びます。


フル免許とは何が違う?フルビット免許が最強と言われる理由
単純に、運転免許証に記載される全種類の車両を運転できるようにするためには、順番を問わず「大型自動車第二種」「大型特殊第二種」「けん引第二種」「大型自動二輪車」の4種類の免許を取得すればOKです。これを「フル免許」といいます。
「フル免許」と「フルビット免許」。どちらも制度上は同じ効力を持つ免許ですが、なぜ「フルビット免許」がとりわけ“最強”と言われるのでしょうか。
それは、フルビット達成のためにはただすべての免許を取っていけばいいというものではなく、免許を取得する順番にも細心の注意を払わなければならないものだからです。
例えば、はじめての運転免許で普通自動車運転免許を取得した場合、「原動機付自転車免許」と「小型特殊自動車免許」の免許が自動的についてきますが、免許証には記載されません。
いきなり大型自動二輪免許を取得した場合も、「原動機付自転車免許」や「普通自動二輪免許」の運転はできますが、やはり免許証には記載されない状態になります。
このように上位・下位の関係を持つ免許では、上位の免許を先に取得してしまうと下位にあたる免許の「種類欄」を埋められず、フルビットを達成できなくなってしまうのです。
特に、「原動機付自転車免許」と「小型特殊自動車免許」は他の免許に付属してくる場合が多いため、最初に取得しないとフルビット達成が難しくなります。
全種類の免許を取得するだけでとてつもなく大変なのに、取得する順番も考えなければならないのです。この難易度とレア度の高さからフルビット免許は“最強”と呼ばれています。

すでに何らかの免許を持っている人がフルビットを取得するには
フルビットを取得するには、免許を取得する順番に気をつけなければならないと話しましたが、もうすでに「普通自動車」などの免許を持っており、下位の免許種類枠が埋まっていない人は、二度とフルビットを取得できないのでしょうか。
結論として、時間と労力と費用がかかりますが、不可能ではありません。
運転免許には「一部取消し」という制度があり、申請することで一部の免許を取り消すことができます。
「普通自動車」や「大型自動二輪」などの上位免許を一度取り消したのち、下位の免許を取得してから再度上位免許を取得しなおすことで、フルビットを目指すことが可能になります。
ただ、免許の取り直しには膨大な手間や費用がかかりますので、すでに免許を持っている人は覚悟して挑戦する必要があるでしょう。
新たな免許制度で突如取得が困難になることも
また、順調に「フルビット免許証」の取得を目指している中、道路交通法の改正によって突然フルビットが達成できなくなってしまう場合もあります。
実際に2017年3月には、「普通自動車」と「中型自動車」の中間に相当する「準中型自動車」免許が新設され、すでに中型自動車の上位免許を取得していたフルビット免許取得挑戦者は、絶望の淵に突き落とされました。振り出しに戻る……とまではいかないものの、新設された「準中型自動車」の欄を埋めるためには、すでに取得している「中型自動車」や「大型自動車」などの免許を一度返納し、「準中型自動車」から順番に取り直さなければならなくなったからです。
こういった突然の法改正は仕方ないことではありますが、フルビット免許を目指してコツコツ努力してきた人にとっては一大事。「マジかよォ……」とやるせない悲しみを覚えてしまうのも無理ないですよね。

フルビットは名誉の証!! 取得できればあなたは英雄!?
もっとも、運転免許証に記載される全種類の車両を運転できるようにするのが目的なら「フル免許」で事足ります。「フルビット免許」だからといって運転できる車両の種類が増えるわけではなく、フルビット免許に公的なメリットがあるわけでもありません。そのわりに取得するには大変な苦労が必要です。
しかも、一般人にとってはほぼ使い道のない「大型特殊自動車第二種」や「けん引第二種」などの免許も取得する必要がありますので、多くの人が「そんな意味のないことはやりたくない」と思うはず。
しかし、フルビット免許を持っているというだけで強烈な達成感や自己満足感は間違いなく味わえるでしょう。クルマ好きの間では有名人になったり、話題性では無敵と言えるかもしれません。
それに、何よりフルビット免許は名誉の証、普通の人がやらないことをやり遂げてしまう人こそ「英雄」だと筆者は思います。
フルビットまでの道のりは長く苦しいですが、「我こそは」という熱い情熱を持った猛者は今からでも挑戦してみてはいかがでしょうか。

レポート●清水秀明 写真●モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実