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地方に行くほどレンタルバイクの需要が高い
東南アジア各国は2022年5月から急速に新型コロナウィルスの規制を緩和し、ほとんどパンデミック以前の入国条件に戻すよう舵を切り、外国人観光客を受け入れ始めている。タイでもいよいよ自由に出入国ができる状態にまでなった。
日本でも人との距離が2m以上あればマスクを外してもいいという政府の方針もあるので、ようやく新型コロナウイルスが緩和し始めたこの夏、海外旅行を検討する人も多いのではないだろうか。
そんな海外旅行でかかる各種費用の中で、意外とバカにできないのが現地での交通費だ。大都市なら電車やバスで手軽に移動できるが、地方ではそもそも交通手段がないことも多い。日本では多数の電車が定刻どおり低料金で運行されるが、そのスゴさを改めて感じる。
さて、タイでも首都・バンコクでならバス、電車、タクシーなど移動手段が数多くあって、利用料金はそれほど高額ではないので懐に優しい。
一方、地方都市では交通網がいまだ発達していない。タクシーやピックアップトラック型のバスがありチャーターも可能だが、日本円で1日あたり1万円近くかかる。地方での観光スポットは県庁所在地などがあるエリアから遠いので、それくらいの費用がかかってしまうことは仕方がない。
そこでおすすめしたいのが、レンタルバイクだ。運転免許証が必要だが、まる1日借りても1000円もしない。それで旅先現地での自由を手に入れることができる。当記事では、タイのレンタルバイク事情について紹介する。
表通りにあるレンタルバイク店なら問題ないが……
タイでは観光地付近ならばレンタルバイク店は山ほどある。宿泊施設から目と鼻の先にあるお店で借りることができる。ただ、稀に悪徳業者もいるので、良質なショップを選択したい。
ちゃんとしたレンタルバイク店は表通りにあって、看板を出しているケースが多い。バイクがきれいで、整備も行き届いているようなら概ね問題はない。そうではなく個人で貸し出すようなケースにはちょっと気をつけたい。手っ取り早く良質なレンタルバイク店を探すやり方は、宿泊施設の従業員におすすめを聞くこと。これでだいたい問題は起こらない。
レンタルバイク店に行くと運転免許証の提示が求められる。しかし、タイでは原付免許や小型限定免許がないので、普通自動二輪以上の免許でなければいけない(タイでは50ccバイク=原動機付自転車という区分がない。流通するバイクは100ccから)。日本で発行してもらった国際免許証を所持していれば、タイ国内でならどこでも通用するわけだ。
良質なレンタルバイク店では様々な事項が記載された契約書が用意されている。英語なのでややこしいが、事故や盗難に遭った際の対処法や連絡先を押さえておけば大丈夫だ。
契約サインと同時にパスポートと運転免許証の提示も必須で、コピーを取るだけの場合と、保証としてパスポートを預かるケースがある。免許証を確認しないレンタルバイク店もあるが、無免許だと万が一の際に自動車保険を利用できないことがあるので注意。
バイクを借りる前にはブレーキやガソリンの量、車両の傷などを確認する。友人のケースでは、出発して30m走ったところでパンクしたことがある。この場合は借りたあとに起こったことなので、修理は自費になった。とはいっても、タイでのパンク修理代はせいぜい350円といった程度ではあるが……。
750円程度でバイクをレンタルできる

肝心のバイクのレンタル料金はかなり安い。外国人に対する物価がやや高い観光地でさえ、安いところで200バーツ(約750円)程度だ。タイで最もスタンダードな110~150ccクラスで200バーツ〜350バーツ(約1230円)くらい。新型バイクや走行距離が少ない車両だとやや高く、同じ排気量でも450バーツ(約1580円)くらいする。
この料金設定は店によって、また観光地によって違う。数軒回って相場を掴み、良心的なショップで借りるといい。ボクの個人的な感覚では、山岳の観光地では安めで、観光客の多いビーチリゾートでは高い傾向だ。レンタルバイク需要がある地域=値段も高いと思っていい。
それから、大型バイクを借りられるエリアもある。人気のない観光地にはそもそも置いていないが、北部の古都・チェンマイ、ビーチリゾートで有名な東部のパタヤや南部のプーケットなどにはビッグバイクがある。
大型バイクの相場はクルマと同じくらいなので、行きたい観光スポットの道路状況――舗装されているか、雨が降りやすいかなどを加味して検討したいところ。大型の相場は300~400ccクラスで1300バーツ(約4550円)から。タイは150ccくらいまでがスタンダードなので、このクラスでも十分高めの料金設定だ。
750ccを超えるバイクは3500バーツ(約1万2250円)くらいかかる。コンパクトカーが1000バーツ(約3500円)で借りられるので、ちょっとこの金額は考えものだ。ただ、日本メーカーのバイクやドゥカティ、ハーレーダビッドソンなど様々なビッグバイクが用意されているので、自分が乗りたいバイクでタイの観光地を巡る旅を楽しみたいという人にはいいだろう。
タイでレンタルバイクを借りて走る際の注意点
レンタルバイクを借りての走行で注意したいのは、タイではローカルルールが多いことだ。各地の警察署の考え方次第で、捕まってしまったり、見逃してもらえたりする。
たとえばビーチリゾートのパタヤだと、路上駐車が可能な区域と禁止の区域があって、数cmでも禁止区域に入っていれば即アウトになる。ボクの印象では、これはタイ国内でもかなり厳しい判定だと思う。
離島のレンタルバイクの返却方法が雑すぎる

レンタルバイクの貸し借りの緩さもローカルごとに特徴がある。基本的には借りた人が盗難に遭わないように気をつけなければならないのだが、人口の少ない離島ではそもそも盗難が起きないため、ものすごく借りる条件が緩い。
たとえば、世界的に有名なリゾート地プーケット島の隣に知る人ぞ知る場所としてヤオ島がある。ここは交通網といえばピックアップトラックしかない。島を巡回しているクルマを呼び止めて乗り、目的地に着いたら降りるだけだ。
なので島内の自由な移動にはバイクを借りた方が効率的なのだが、そもそもレンタルショップがない(取材時はなかったが、現在はあるかもしれない)。そのため、辺りにいる住民に声をかけて、使っていないバイクを借りる。有名リゾートの近くとはいえ離島なので、相場は1日200~350バーツ程度だ。

個人が所有しているバイクなので契約書もない。念のため貸し主の携帯電話番号は教えてくれるが、驚くべきはバイクの返却方法だ。貸し主の住所は不明だし、それがわかったところで返却してしまえばそこから帰りの船着き場までの足がまた必要になる。ということで、基本的に返却はプーケット島に戻る船がつく桟橋の前になる。ところが、返却する時間になっても貸し主本人は仕事で来ない。
「適当に置いておいて」。電話すると悠長にそう言うのだ。
タイの離島は治安がよくてのんびりしているとはいえ、こちらは戸惑うばかり。では、バイクの鍵はどうするのだと思っていたら、「いいよ、鍵はさしたまま置いておけば」。
バイクを盗んだところで島民はみな顔見知りだから、島内で売却もできないし、島外に持ち出すこともできない。だから、あまり気にしていない。こういったローカルだけのルールも存在するので、ちょっと辺鄙なエリアでレンタルするときは、借りる前に細かく確認しておいた方がよさそうだ。
レポート&写真●高田胤臣 編集●小泉元暉
■高田 胤臣(たかだ たねおみ)
1998年からタイで過ごしはじめ、2002年にタイへ移住。タイにある「華僑系慈善団体」でボランティア、現地採用会社員として就業。2011年からライターの活動をし『亜細亜熱帯怪談』(晶文社)をはじめ、書籍や電子書籍を多数発行。
noteではタイにまつわる出来事を綴っている。