■日没時間帯のライダーズカフェ“Racer”。手賀沼の道の駅や併設の満天の湯にもごく近い。冬場はクルマで来て、コーヒーと料理を楽しんでから入浴という流れもアリかも!?
千葉北部、手賀沼近くにバイク乗りのオアシスあり
筆者の住う地元千葉で、バイク乗りの知人たちがときどき立ち寄るカフェがあるという。いろいろな車種の乗り手がそれとなく立ち寄るカフェ……。各々の好みのバイクでカフェに集うという行為を何十年も忘れていた感覚だが、そのお店は自転車ロケや自身がロードバイクで時折体力維持のために夜遅くに足を運んでいた=船橋方面から手賀沼の先へ至る通称“船取県道”の沿線にあった。
そんな近郊の県道を夜間通り過ぎていたのを思い出しつつ、今回初めてお店を訪ねてみた。
「Riders cafe “Racer”」。店長は、元イタリアンレストランのシェフであった三上祐子さん。
お店の名刺ではRacerの文字色がイエローになっている。日本語読みして略すとお店の名は「レーサー」となるのだろうか。
店内はレース系に特化したディスプレイではなく、お洒落な感じで落ち着ける雰囲気。大きなテーブルがこぢんまりとした店内の中央にあって、来客はそのまわりに座るようになっている。
バイク乗りのためのカフェを目指したという三上さんの言うように、バイクや四輪の駐車スペースは十分広い。キッチンの手前に置かれているヤマハSRが美しく、目を楽しませてくれる。友人たちが美味しいという料理と、コーヒーをオーダーしてみた。
元祖マカロニシチューと、ガーリックトースト。食後にチョコレートのケーキにブレンド。三上さんが「けっこう量が多いですよ」とあらかじめ教えてくれたとおり、ココナッツの容器に入ったマカロニシチューは量がたっぷりであった。一瞬「やっちゃったかな?」と内心焦ったものの、シチューの味の良さとガーリックトーストとの相性も素晴らしく、なんら問題なく完食。
続くケーキとブレンドコーヒーではケーキの濃厚な味わいとブレンドのほろ苦さが良く、こちらもあっさり完食。体育会系気味でやや大食いな筆者も、これらは大満足な組み合わせであった。さすが元イタリアンレストランのシェフらしく、バイクに理解のあるお店ということを切り離して味わった印象でも忖度なしで美味しかった。
そんな食事とコーヒーを味わう合間、平日午後ながらお客さんが入れ替わりで来店し、筆者も交えていただき時間の経つのも忘れて(お店の外観写真を撮るのも忘れそうだった)、ついついバイク話で盛り上がってしまった。常連客の中には年配のベテランライダーでありSRのエキスパートや、モトグッチを以前愛用していて今も多数のバイクを所有する、いわゆる“好き者”もおられた。そのため筆者自身もルマンを以前改造したり愛用していたりした過去を思い出し、取材から完全に脱線。予定以上に長居してしまった。
平日だったのでよかったが、土日にライダーが大勢訪れる日は店内に入りきれないケースもあるようなので、空気を読んで滞在時間を調整するのがいいだろう。居心地がいいからこそ、気をつけないといけないなと感じた次第。
お店が主催するイベントも盛んなようで、女性ライダーのプチツーリングや近郊のライコランド柏店とのコラボ企画もあるとのこと。気になる方はお店のWebページをチェックしていただきたい。

■背後に斜めに合流する道路と目前の県道の三角地帯に位置するRacer。通勤時間や週末は交通量の多い路線沿いにある。駐車場は向かって左手。

■来客用のテーブルと店内のディスプレイ。注意書きを読んでマナーに気をつけよう。

■サンバーストのSRがさりげなく置かれた奥がキッチンとなる。店内は禁煙。

■コンビニの弁当のような上底ではないココナッツの容器。マカロニシチューのボリュームはたっぷりだ。ガーリックトーストに添えられたベーコンも良し。

■程よい甘さで濃厚な味わいのチョコレートケーキ。他にもイケてるスイーツが数種。

■パスタも食べ応えがある。海老、イカ、アサリのペスカトーレビアンコなど海鮮の具がたっぷりの逸品や、白トリュフの香るペペロンチーノなど本格的。

■2018年にバイク免許を取ったことをきっかけに、翌年2019年に同店をオープン。以降、乗ってきたバイクは店内にあるSRの前も、手の加えられていたSRだけだったという店長の三上祐子さん。バイク選びはSR一筋、快活な女性だ。

■店内に貼られているイベントの告知。無水カレーの通知もかなり気になる。

■道具なしで具材と機材を用意してくれるBBQのセットも用意。これを目当てにツーリングというのも面白そうだ。

■インターヤマハカラーのアライのジェットヘルとベルのフルフェイス。三上さんのSRにどちらも合いそうなヘルメット。

■クラシックカフェ風にSRをいじるのに定番とも言えそうなアルミタンク。どうやらこれは常連である同級生さんのコレクションらしい。

■通算2台目のSRは、まだピカピカ。ギター好きの琴線にも触れる塗色が髪の色とよく似合う三上さん。SR以外は所有したことがないという。
photo & report●小見哲彦
中京地区のレトロ風喫茶「呂門」を訪ねてみた
ネットを通じてのバイク仲間が近年増えたおかげで、時として離れた地域の話題を教えていただくことがある。年齢の近い年かさのライダーたちから伝え聞く話は愉快だ。名古屋方面の仲間が集う、良い喫茶店があるという。しかも喫煙OKらしい。
関西に向かう途中でもぜひ寄ってみたいと考えていたところで、ちょうど良い機会に恵まれ、伝え聞いていた喫茶店「呂門」に朝も早い時間から伺ってみた。
開店したばかり、ママさんの朗らかな声で店内に入れていただき、仲間の言う名物の肉ジャガ。これとコーヒーを注文してみた。
お店が立ったのは軽く40年以上も前とのことで、確かに昭和な造りの店内だ。長い間バイクに乗って旅をしていると、古い馴染みの喫茶店も徐々になくなってしまったり、代替わりで新装して清潔感はいいのだが禁煙になるお店もある(時代の流れや健康増進法等で禁煙になるのは仕方ないのだが……)。
呂門の店内は、そんな時代の流れもなんのそので喫煙可能である。タバコの苦手な方には恐縮だが、コーヒーを飲みながら一服するのが好きなライダーにとっては今どき大変ありがたい。そして時間が緩やかに流れる空間のようである。
ワンオペでお店を回しているのと、料理は手作りゆえにしばらく待っていると、ママが持ってきてくれた「肉ジャガ」の良い香りが漂う。普通の家庭料理でいう肉ジャガの概念とはまったく違った個性的な肉ジャガだった。
デミグラ風も感じる醤油麹の洋風的な味付けに、原型に近い大切りのジャガイモ。そして卵と青野菜の乗ったプレート料理に味噌汁とお豆腐が付く。ホッとする味と温もりに、ついつい無言で頬張った。これは美味い。他にもチリコンカンやカレーライス、他に数種類の定食もある。もう少しお腹が空いていたら、もうひと品注文してしまいそうだ。
食後にいただいたコーヒーは風味が良く、あっさり目かやや濃厚なタイプが選べる。すっかり寛いでしまい、締めでいただいた自家製アイスクリームも美味しかった。
店内に漫画のコミックがたくさんあるのを眺めてみる。それに、壁に飾られたお礼の色紙やステッカーボードも。長年、店もママもいろいろな人たちに愛されているのだろう。
客席の奥にはスズキのST250のカスタムが鎮座していた。現在ママはご主人ともどもカワサキのW800を愛用されているとのこと。STは予備車両なのか尋ねると、ハンドルをスワローにしたり形は気に入っているのだが昔の怪我の影響で首に負担がくるとのこと。なるほど、無理はせずにディスプレイして大事に保管するのもひとつの在り方といえる。
呂門は平日朝早くから夕方までの営業だ。開店の曜日や時間が変わることがあるので、お店のXなどで営業日や時間は確認していただきたい。また、ライダーズデーとしてイベントも行っている。二輪の駐車スペースには十分な広さがある。機会があれば、ぜひツーリングの途中でも立ち寄ってみていただきたい。

■お店の外観はなんとも懐かしい雰囲気の建物で、愛知県警東海警察署の斜め向いにある。伊勢湾岸自動車道・東海ジャンクションを南下して国道155線横須賀ICを降りて左折したら、すぐだ。

■外観のイメージカット

■呂門名物の「肉ジャガ」はワンプレートだ。若いライダーだと、これが食欲の導火線になってカレーライスなど追加してしまうかも?

■コミックが豊富に置かれた本棚。何気なく懐かしい販促美人ポスターが残っている。

■判型の大きな本は座席に置いてあったりもする。『モーターサイクリスト』編集部で編集していた1987年の通称「銀本」が置いてあった。これは好き者の琴線に触れる車両がたくさん載った本。

■お客さんから送られた額縁入りの色紙。画面越しの挨拶文にはない温もりを感じられるもの。

■バイクのオーナーズクラブやグループのステッカーに混じって、神奈川の魚平商店やご近所湘南にあるという“TWO STAR”も。ママの超お気に入りのお店なのだそうだ。

■朝早くからお店を取り仕切る朗らかなママ、朋子(ともこ)さん。これからも安らげるお店を続けていただきたい。

■ママが以前飼っていた、愛犬カノンちゃんの写真。随分長生きしたとのことで、筆者も昔実家にいた愛犬の話を少々。家族、なんですよね。

■きれいに保存されているST250カスタム。すっきりまとまった手の入れ方。

■ブレーキマスターシリンダーのリザーバータンク上に“無事カエル”のマスコット。ミラーがバーエンドに付く。

■スワローハンドルはブラックが選ばれている。外装の塗色によくマッチ。

■店内イメージカット。その1。

■店内イメージカット。その2。

■お洒落なレトロ風ポスターがトイレ入り口付近、隠れ気味に保存されている。暗めな場所のこれに気づかない人がいるかも?と、こんな発見も楽しい。

■サントリーのこのキャラクター、筆者はリアルタイムで見ていた世代ゆえに感慨深い。
photo & report●小見哲彦
<取材協力>
○ライダーズカフェ“Racer”
千葉県柏市五條谷49-10
https://riderscafe-racer.com
○和風レストラン“喫茶 呂門”
愛知県東海市横須賀町天宝新田1-1
https://twitter.com/kissa_romon