バイクライフ

寸法は規格内!? スズキの「電動チョイノリ」、市販なら「特定小型原付」でぜひお願いしたい!

20年前の激安原付「チョイノリ」が、令和の時代に電動で復活!?

隔年で秋に開催されていた「東京モーターショー」が、2023年は「ジャパンモビリティショー」に進化して開催された。出展企業の門戸を広げ、陸上モビリティだけに限らない展示内容となったことで、まさに未来のモビリティ社会をイメージできるショーになっていたことは、会場を訪れた人ならば実感しているのではないだろうか。
まさにモビリティの多様性を感じさせるショーであった。

そんなジャパンモビリティショーにおいて、懐かしく感じる展示もあった。そのひとつはスズキの「eチョイノリ」。2000年代に販売された原付バイク「チョイノリ」をEVとして復活させたコンセプトモデルだ。

「チョイノリ」といえば、リヤサスペンションを持たない構造からもわかるように、徹底的にシンプルなメカニズムとすることでローコストの近距離移動マシンとして開発されたことで印象深い。素材自体に着色することで塗装を省いたフロントカウルも「チョイノリ」のコンセプトを象徴するものだ。
実際、メーカー希望小売価格は5万9800円と当時としても激安だったことで、自転車感覚で購入するユーザーも多かったという。

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ジャパンモビリティショー2023で展示された「eチョイノリ」。
チョイノリ スズキ  原付
2003年に発売された50ccスクーター「チョイノリ」。

「eチョイノリ」は電動アシスト自転車のユニットを活用した電動原付コンセプト

そのスタイリングのまま、令和のショー会場に現れたのだから、当時を知る二輪ファンは驚くほかはなかったといえる。
とはいえ、パワートレインは電動化されている。具体的にいえば、スズキが協業するパナソニック サイクルテックから供給された電動アシスト自転車用バッテリーや駆動モーターを使い、ゼロエミッションの電動原付バイクとして仕上げたのが「eチョイノリ」だ。

ジャパンモビリティショーの会場にて、開発に関わったというエンジニア氏に話をうかがったところ、「eチョイノリ」はいわゆる通常の新車開発プログラムから生まれたものではなく、あくまで電動アシスト自転車の電動ユニットを使った研究の一環として試作されたのだという。車体についてもかつてのチョイノリのパーツを使っているなど、現時点では量産については考慮していない段階のプロトタイプといえる。

そして、開発陣としては量産するならば原付バイクとして出すことを想定しているそうだ。安全面などから原付バイクの基準で作りたいという判断は尊重したいが、筆者個人の思いとしては「eチョイノリ」は特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)として販売する方向で開発してほしいと思う。

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「eチョイノリ」はインホイールモーターではなくチェーン駆動。かつてのチョイノリもチェーン駆動だった。

「eチョイノリ」の車体寸法は特定小型原付の規格にちょうど収まる!?

ご存知の人も多いかと思うが、特定小型原付というのは16歳以上であれば免許なしで運転できる電動モビリティとして2023年に誕生した新カテゴリー。その主なレギュレーションは、最高速度20km/hのリミッターを備えていること、定格出力600W以下のモーターを使っていること、そしてボディサイズは全長1900mm以下、全幅600mm以下といったところだ。

そして、「eチョイノリ」の公開されたスペックではボディサイズは全長1500mm、全幅600mmとなっていた! 特定小型原付の規格に収まるのだ。そうであれば、免許不要で乗れる特定小型原付にしない手はないと思う。

そもそもかつてのチョイノリのコンセプトは超近距離ユースの原付バイクであり、新搭載されていた空冷4サイクル単気筒エンジンの最高出力は1.5kW(2ps)に過ぎなかった。おそらく発進加速でいえば、特定小型原付のレギュレーションに合致する駆動モーターであっても、チョイノリのエンジンと互角以上のパフォーマンスを発揮できるだろう。

eチョイノリ スズキ モーター 電動バイク 原付
ジャパンモビリティショー2023のステージでの様子。eチョイノリは全長1500mm、全幅600mm、全高1015mm、シート高680mmという車体寸法が発表されている。ただし、モーター性能については明かされていない。

歩道を走れなくていい

チョイノリの大きさで歩道を低速で走るのは問題があるのでは?……と思う人もいるかもしれないが、「特定小型原付=歩道を走れる」ではない。
最高速度を6km/hに制限するモードを備えている場合のみ、歩道を走れる「特例特定小型原付」と分類されるのだ。特例モードを持たないのであれば、キックボードのようなフォルムではない小型モビリティを特定小型原付としてもおかしくないと、筆者は思う。

そんな免許不要で乗れる身近なバイク的モビリティの提案として、「eチョイノリ」のスタイリングはわかりやすく、ふさわしいと思うのだが、いかがだろうか。特定小型原付が入口となって、二輪車の魅力に気づくユーザーが増えていくことになれば、バイク業界にとっても明るい道筋になるとも思うのだ。

レポート●山本晋也 写真●スズキ/モーサイ編集部/ジャパンモビリティショー2023
編集●上野茂岐


【編集部註】
特定小型原付は「ノーヘルで乗れる」という点も特徴として取り上げられがちだ。しかし、着用の義務はないが「努力義務」となっている点を考慮すべきだろう。ヘルメットを着用することで安全性が高まることは言うまでもない。

とはいえ、実態として街を走る特定小型原付のキックボードには、ヘルメットを被らず乗っている人が多い。免許不要=そもそも交通法規を知らない、乗り手のモラルといった要因もあるだろうが、キックボード的な乗り物にはヘルメット収納スペースが無いという点も一端にあるのかもしれない。

市販化するのかどうか現時点では未定ながら、ショーに展示された「eチョイノリ」にはシート下にヘルメットを入れられる収納があった。もし特定小型原付として登場しても、ヘルメット着用を後押しすることになるのではないだろうか。

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「eチョイノリ」のシート下収納スペース。
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