乗りたいバイクがあるけれど、シート高が高くて足着きがどうも不安。多様なビッグバイクが販売されている今、この悩みを感じているライダーも多いのではないだろうか?その解決策のひとつである「厚底ブーツ」をテストしてみた。
■テスト車両は人気のネオレトロ
↑YAMAHA XSR900 価格:104万2200円 カラー:ブラック、マットグレー、ブルー シート高:830mm ㉄YAMAHA 70120-090-819
↑意外にシート高が高めなXSR900。このバイクに身長162cm、体重56.2kgの本誌編集長・生田がテスターとして、普段使っているブーツを履いてまたがったのが下の写真。サスの沈み込みも少なく、地面からかかとまでは14cmで、靴底の傾斜度は36°。足着きの感覚は完全着地を10点とすると2点だ。これがどう改善されるのか?
■足つき性の改善法は数あるが・・・
↑ローダウンキット装着画像
バイクの足着き性を向上させる方法としてポピュラーなのが、ローダウンキット(上画像)やローシート(下画像)の装着などによるシート高の低減。劇的な改善が望めるが、ライディングポジションが変化することでバイクの特性に多少なりとも影響を及ぼす。その点、厚底ブーツは、オリジナルの乗り味をそのまま楽しめるのがメリットと言える。
↑ローシート装着画像
■3種類の足つき性向上ブーツをチェック!
#テスト1 DEGNER オリジナル メンズ サイドゴアブーツ(価格:3万5640円 サイズ:24.0cm~ 27.5cm カラー:ブラック ㉄デグナー ☎075-501-7137)
地面からかかとまで:11.8cm
靴底の傾斜度:28°
足着きの感覚 (完全着地が10点):4
感想:「数値以上に光る “しなやかさ”」
足着き感高評価のポイントは柔軟性にある。まずはアッパー。足首やくるぶし、甲の動きを妨げないくらいしなやかなので、つま先立ち状態でも自由度が高い。そして、ソール。定番のビブラムソールがとてもしなやかで、路面の凹凸や砂利の有無などを探りながら第1指と第2指で接地面を微調整することが可能。急なぐらつきへの対処もしやすい。写真ではかかとが浮いて傾斜度も高く、接地面積が少ないように見えるが、主観的には今回試したなかで一番接地している感覚を得られた。
↑白糸のステッチによるファイヤーパターンがスタイリッシュなアッパーには、2.2mm 厚のオイルドレザーを採用。 別料金(1万800円)でソールの厚さ変更も可能
↑ソールの厚さはつま先で25mm、ヒールで55mm。土踏まず部は通常のブーツと同じ厚みで、ステップに足を乗せてもあまり違和感は感じなかった
↑サイドゴア仕様は履きやすさだけでなくアッパーの柔軟性にも大きく寄与
#テスト2 K’S LEATHER ブラックアンクル (A)(価格:2万7864円 サイズ:22.5cm~ 26.0cm カラー:ブラック ㉄カドヤ ☎03-3842-2000)
地面からかかとまで:10.5cm
靴底の傾斜度:24°
足着きの感覚 (完全着地が10点):3.5点
感想:「高い剛性がつま先の接地感に影響」
アッパー、ソールともに剛性感が高く、くるぶしから下がカッチリ固定されるので、とても安心感がある。足首のシャーリングにより、くるぶしから上の自由度は高い。今回は十分試せなかったが、ライディングはもちろん、普段履きまでもこなすことができそうだ。反面、土踏まず部のソール厚がつま先と同じであることと、甲部分の自由度が少ないために、靴底全体のしなやかさがやや希薄。しなりが少ないぶん、つま先立ち状態では数値は悪くないのに接地感がやや少なめであった。
↑タウンユースで履きやすいデザイン・作りが特長の「ブラックアンクル」の厚底仕様。アッパー素材はオイルカウを使用し、チェンジパッドやプロテクションパッドは内蔵している
↑厚底仕様のオリジナルソールはつま先で25mm、かかとで50mm厚だが、土踏まず部もつま先と同じ25mm(実測値)
↑リヤエントリーシステムの採用 で履きやすさを、面ファスナー付きのベルトでフィット感をアップ
#テスト3 WILD WING 厚底ファルコン(価格:1万7280円 サイズ:22.5cm~ 26.5cm(カラーにより異なる) カラー:ブラック、ブラウン、ライトブ ラウン、ワインレッド ㉄ウィングローブ ☎050-1576-8276)
地面からかかとまで:9.8cm
靴底の傾斜度:20°
足着きの感覚 (完全着地が10点):3.5
感想:「フィット性が安定感を生み出す」
随所にライディングのツボを押さえた作りが光る。実測数値も3品中もっともよく、つま先立ち状態での安定感は優れている。ふくらはぎ下までしっかりガードできる編み上げタイプなのはもちろん、インソールの形状が絶妙で、足が中で変に動くことがないのだ。ただし、自由度の面では若干苦戦。アッパーがなじんでいないこともあるがソールも硬めで、特許を取得しているという、足先を動かしやすい独自のソール形状「フレキシブルサポート」は、体重がかからない状態では生かせなかった。
↑ソールの厚さは、つま先は25mm、ヒールは50mm。つま先35mm、ヒール60mm など、厚さをさらに増した仕様もオプションで用意している。本革製ながら手ごろな価格設定がありがたい。
↑ヒールは斜めにカットされ、ステップに合わせるとつま先が最適な方向を向く。土踏まず部の厚さは普通のブーツと同様
↑脱ぎ履きはサイドファスナーで楽にできる。ファスナーカバーはヒモを挟めるよう大ぶり
■履いてわかった重要なポイント:つま先の動きを妨げない工夫がキモ
〝両足ツンツン〞状態での足着き性で重要なのは、つま先部分の自由度だと思う。そのような状態のときのつま先は、路面に角度がついていたり砂利などが浮いていたりするなかで、バイクを正立させようとベストポジションを探しながら絶えず路面と対話しているのだ。だから、第一指や第二指の動きを妨げない工夫がキモとなる。今回の足着きの感覚判定では、足裏の接地面積ではなく、テスターの主観を数値化している。つま先の自由度は接地面積だけで伝 えることが難しいからだ。できれば、各部の寸法だけでなく、履いてバイクにまたがったときの感覚もチェックしたうえで購入したい。
■まとめ
ライディングブーツは安全性も重要。一概にしなやかで あればいいというわけではない。また、しなやかだから歩きやすいとも限らない。フィット感や足の自由度など、いろいろな要素のバランスが履き心地と足着きのよさに影響する。自分がブーツに何を望むかと、選択肢となるブーツの特性を把握すれば、選びやすいのではないだろうか