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障がいがあってもバイクに乗れる!「拓ちゃんのため」から始まった青木治親さんの『サイドスタンドプロジェクト』とは

八重洲出版から季刊発行されているムック「情熱のロードレース」は現在の視点から過去のロードレースを振り返り、今だからこそ語れるあのとき、あの瞬間を関係者の証言で構成しているものです。この本の企画立案から、すべての取材、執筆を行なう、編集責任者でもある川上滋人が本誌に入り切らなかった取材エピソードを記していきます。


今回の本『情熱のロードレース Vol.7 NSR500V その進化の現実と背景』の取材で、久々にゆっくりインタビューできた青木治親さん。
インタビューの順番としては、治親さんの2日後に、拓磨さんでした。なぜ拓磨さんのインタビューが治親さんに関係するかというと、既に本を読まれた方は分かりになると思いますが、拓磨さんのケガに関することで、治親さんも同じ想いを抱いていた、という話が聞けたからです。

幼い頃から一緒に育ち、バイクに乗り続けてきた治親さんでさえ、ケガによってバイクに乗れなくなってしまった拓磨さんに、気後れする部分があったそうです。「自分はバイクに乗り、レース活動を続けているけど、拓ちゃんはそれができなくなってしまった」。そこで、どう声をかけて良いのか悩んでいたというのです。親族である治親さんがその思いを抱くのだから、私が思うのも当然。そしてその思いを乗り越えられたのが、サイドスタンドプロジェクト(以下SSP)をスタートさせ、拓磨さんをバイクに乗せることができた瞬間だったと治親さんは言います。

この話を聞いたとき、私の心の中にずっと抱えていた思いが消えた気がしました。
明後日のインタビューは、拓磨さんがケガする前と同じように話が出来そうだ。実際、そのことは本人にも伝えましたし、思うことすべて、インタビューできました。
それもこれも「拓磨さんをバイクに乗せたい」という想いで動き始めた、治親さんのSSPのおかげです。そうして拓磨さんをバイクに乗せようと始めたSSPには、障がいを持つ多くの方から「自分もバイクに乗りたい」と相談が寄せられるようになりました。

下半身が動かない方であれば、拓磨さん用に造ったシステムを付ければ何とかなる。でもそうしているうちに、目の見えない方から相談があり、そんなことを繰り替えす治親さんは「障がいがあるからバイクに乗れないと決めてるのは、我々健常者側かもしれない」と考えるようになったそうです。
とは言え、なにかアクシデントが起きれば、というリスクは常に付いて回ります。そこでも治親さんは、本誌のインタビューでも語っているように「深刻に考えるくらいなら、まずはやってしまう」という自分の心の声に従い、行動しています。

そんな治親さんの熱い想いを聞いてしまったら、SSPへ応援に行かないわけはいきません。ちょうど2023年3月14日に茨城県・筑波サーキット内オートレース養成所内で、SSPが開催されるということで、行ってきました。
この日は6名のパラモトライダー(障がいを持つ方でバイクに乗る方をSSPでは、こう呼びます)が参加しました。下半身が動かない方が2人、半身麻痺の方が1人、視覚障害の方が3人という内訳でした。
実際に現場へ行っていちばん感じたのは、ボランティアでこのSSPを支えるスタッフ全員が「参加したパラモトライダーに必ずバイクで走ってもらう」という気持ちを持っていたことです。

このSSPで既にバイクに乗ったことのある方もいらっしゃいましたが、障がいを持ってから初めてバイクに乗る、という方もいます。当然、いざ乗るという段階になったら、不安を抱くこともあるはずです。でもそれを支えるスタッフ全員が『必ず走れる』と信じ、そのために丁寧に、そして着実に、バイクをライディングする練習をサポートしながらスキルアップさせていきます。
結果的に、SSPでバイクに乗ったことのある方は前回以上に、そして初めて乗った方は単独で着実に、走れるようになりました。そうして皆さん、走り終わってヘルメットを脱いだ瞬間、満面の笑みで「楽しかったー!」と言ってくれるのです。

聞くところによると、バイクの事故によって障がいを持つようになっても、またバイクに乗りたいとSSPへ参加する方がいらっしゃるそうです。
改めて、バイクって本当に素敵な乗り物だなと思いました。
昨年は神奈川県の自動車専用道路「アネスト岩田 ターンパイク箱根」を一時閉鎖し、パラモトライダーの方々が走行するイベントを開催し、その第2回を2023年も行う予定でいるそうです。

どうしても家に引きこもりがちな障害を持つ方々だそうですが、バイクに乗ったという経験が背中を押し、外に出る機会が増えたという人が多いとのこと。そうした障がい者を身内に持った家族にとっても、前向きに行動を起こしてくれる姿は、家に明るい光を灯してくれるそうです。
「多少リスクがあったとしても、喜んでくれる人がいるのなら、それは全部自分が受けますよ」と笑って語る治親さん。やはり2度の世界チャンピオン獲得は、伊達ではありません。
引き続き、治親さんとSSPの活動を追いたいと思っています。


情熱のロードレース Vol.7 「NSR500V その進化の現実と背景」
■定価: 1,650円(本体 1,500円)
■発売日:2023年2月24日(火)
■体裁:A4正寸、並製、オールカラー100ページ

全国の書店、オンライン書店、八重洲出版オンラインショップで販売中。

著者プロフィール

川上滋人
「情熱のロードレース」編集責任者。1980年代中盤から全日本ロードレース選手権の取材活動を開始し、現在もシリーズ全戦に通い現場での取材を続けるレースジャーナリスト。

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