「跨ってからスタンドを払うほうが、安定して安全じゃない?」
「転倒しそうで、めちゃくちゃ怖いんですけど……」

教習所で誰もが一度は抱くこの疑問。実はこれ、現場で指導している僕らも、毎日のように耳にする言葉です。ズシリと重い教習車を前に、不安定な状態でスタンドを払うのは、初心者にとって恐怖でしかありませんよね。

では、なぜ教習所では頑なに「先にスタンドを払え」と教えるのか?
そこには、あなたが公道に出てから「一生無転倒」で過ごすための、深い理由が隠されているのです。
こんにちは!現役二輪指導員で、YouTubeチャンネル『VREAST(ブレスト)』で“バイクの楽しさ”を発信している「ばく」です。今回は、教習最大のミステリー「乗車手順の違和感」について、指導員の視点から徹底解説します!

1. 「うっかり」が命取りになる時代があった
今のバイクは、スタンドが出たままギアを入れるとエンジンが止まる「サイドスタンドスイッチ」という安全装置が標準装備されています。しかし、一昔前のバイクや一部の輸入車には、そんな気の利いた装置はありません。
もし、スタンドを出しっぱなしで左カーブに突っ込んだら……?
そのスタンドが支点となり、車体は一瞬で跳ね飛ばされます。 バイクは趣味性の高い乗り物。あなたが将来、憧れのビンテージバイクに跨る日が来るかもしれません。どんな時代の、どんな相棒でも安全に乗れるよう、教習所ではあえて「装置に頼らない安全の儀式」を徹底させているのです。

2. 「不自由」こそが、あなたを救う最高の訓練
実は、僕ら指導員がこの手順を譲らない一番の理由は、ある大切な技術を習得してほしいからです。
「バイクを指一本で支える」

二輪の教科書で、そんな写真を見たことはありませんか?
200kgを超える鉄の塊でも、重心軸さえ捉えれば、驚くほど軽く支えることができます。跨る前にスタンドを払うという動作は、まさに「バイクの重心を身体で覚える」ための最短ルートなのです。
この感覚を掴んでいないと、信号待ちで少し傾いただけでフラついたり、渋滞中の低速走行でバランスを崩したりしてしまいます。教習所で行う毎時間行う乗り降りの「不自由さ」は、実はバイクを自在に操るために必要な技術、重心軸を掴む基礎トレーニングだったのです!

3. 「降りてから立てる」は、自分の身体を守るため
降車時も同じです。「跨ったままのほうが楽じゃん」という誘惑は、実は罠。
跨ったままサイドスタンドを立てようとすると、足元が見えにくく、スタンドが中途半端な状態で止まってしまう「掛け損ね」が多発します。その状態で車体を預け、もしバランスを崩したら……。
重たいバイクの下敷きになり、逃げ場を失います。最悪の場合、足の骨折や、他車を巻き込む二次被害も考えられます。
しかし、先に降りていれば、万が一倒れても「パッと手を離して身を守る」ことができます。 「バイクは傷ついても、自分は無傷でいる」。
この絶対原則を守るために、僕らは「降りてからのスタンド操作」を指導しています。

その手順には「安全」の理由がある
「面倒だな」「怖いな」と感じるその一瞬の動作。
それこそが、公道に出た後のあなたを守る、もっとも確かな防波堤になります。一見遠回りに見える「型」を積み重ねる(反復練習)ことで、見違えるように技術は向上します。そうすればあなたのバイクライフはより長く、よりスマートなものに変わるはずです!
焦らず、一つ一つの動作に意味を込めて。
安全にバイクを楽しむために。
以上、現役二輪指導員YouTuber『VREAST(ブレスト)』の「ばく」でした!
文●ばく

二輪指導員歴19年。現在も教習所でライダーのタマゴたちを育て、日々の教習で自身も学びながら生徒たちと共に成長を楽しんでいます。
YouTubeでは相棒はなちゃんとVREAST(ブレスト)というチャンネルで、“教習所課題でわかるバイクの本質”をテーマにバイクのインプレッションやツーリングやメンテナンスで“バイクの楽しさ”を伝えています。
愛車はKAWASAKI900super4 Z1・F.B Mondeal SMX125・HONDA TLM200
YouTube:@VREAST


































