バイクライフ

【ショベルヘッド再生記5】 まさかの“上がりバイク”か?   ハーレーダビッドソンFXSローライダー「サビ穴だらけの純正エキパイに施された“神治療”」

■ここまで錆落としをしたものの、Vツインの後方が実は穴だらけ。結局狩野溶接さんの「匠の技」で延命処置をすることに。

悩ましき穴空きエキパイ問題から、ひとときの逃避

前号、第4話の終盤で外して調子に乗って磨いていたエキパイに、小さな穴ぼこを多数発見してしまった!

そこで(!?)イヤ~な予感がしたので「見なかった事にしよう♪」と、数日間はほかの作業に没頭したのでした。

錆を落としした鉄部品は、未処理ではまた錆びるので保護対策を実施。各種研磨剤の実験で入手しけっこう散財しました。

車体右側のマフラーを外した内側にはリヤブレーキのマスターシリンダーだの、キック始動に関連した部品など色々ありますが、外側からやれそうな箇所としてマフラーステーと思しき鉄の部材を外してみたり、リヤのマスターシリンダーを外して取り付けの構造や部材の構成を見学(?)してみました。へぇ、こんな風に補強が入ってら……みたいな造りもありました。

ブレーキペダルの連結部が良い味を出してます。分離してみよう。
プランジャーなる物体が、いともあっさりマスターシリンダーから取れました。
サイレンサーの”ステー”も外してみます。わりとぶっきらぼうな鉄の棒ですね。

そうして部品を外していくと、フレームのステー等の角が面取りされていなかったり、溶接のスパッタがそのまんまになっている部分を発見。掃除ついでにやっておこうと、ベルトサンダー等でちょこちょこと粗い部分を削っておきました。後になって作業した際など、手の切り傷が防げますからね。

サイレンサーを懸架するステーも錆と塗膜の劣化で機関車風味の肌になっていたので削り落とし、磨きっぱなしでは錆びるため錆止めのクリヤーを暫定的に塗装して保管しておきます。

フレーム後部の処置に集中した後で、以前錆を落としてあったタンデムステップのステー部材も再度外してピカピカに研磨。劣化エキパイの悩ましい問題から、いっとき逃避の日々を過ごしたわけです。

古い塗膜は全部粉と化しました。後で塗装するつもりですが、クリヤーで暫定的に保護しておこう。
マスターシリンダー&サイレンサーのステーを外すと、汚れたフレームの掃除が出来ます。
マスターシリンダーの取り付けステーはこんな板材。裏側の補強がシンプルです。
「なんじゃこりゃ?」と、妙なホースをひっこ抜いてみると、フレームがブリーザー受けの役目だった?
油汚れと錆と土がゴチャ混ぜになってました。脱脂しながら真鍮ブラシをかけます。
スパッタの残りとハンガー部分の尖ったエッジを、ベルトサンダーで軽く削り落とします。
長年付着していた油分のおかげで、この付近は錆での劣化が少なかったです。奥も脱脂して保護しよう。
ブレーキマスター付近は後日改良することにして、一旦復元。なかなかキレイ。
タンデムステップのステーを、研磨材の実験がてらさらに磨きまくりました。

劣化エキパイの処置は他力本願しかない? ……いざ、狩野溶接へ!

プスプスと、ダメ押しのようにエキパイの穴を開けまくるフジエダ君(右)と狩野社長(左)。狩野溶接にて。

明らかに自分のやれる範囲を超えた作業は、無理せずプロの技に打開策を委ねる以外に方法はありません。自分でアーク溶接などやろうものなら、致命的な大穴を空けるのは確実なので、今や駆け込み寺のように頼っている都内葛飾区堀切の狩野溶接に連絡を取り、工房にエキパイを持ち込んでみました。「穴ボコ数個の補修ならば、狩野社長が何とかしてくれるだろう♪」と、当初はまだ軽~く考えていたわけです(本当)。

くだんのエキパイを、TIGで使っているタングステンの棒でプスプスつついていた同社の藤枝クンが「これ、ダメなんじゃねーの?」と笑いながらエキパイを振り回して遊んでいるのですが、この男、私と学生時代からのバイク仲間で、実に率直かつ遠慮なくモノを言ってくるのです。

そうして見れば、持ち込んだ時よりも穴ボコがいつの間にか増えてるじゃありませんか。「なんで増えてんだよ?」と目をパチクリしていると狩野社長が「チ~ン!」と終了のテーマを発した。

しかし「いやいや、捨てるわけにはいかないんですよ」と、筆者はすがるような視線を向けるのでした。

かくして、狩野社長の神業が炸裂!

すると、数秒考えるふりをしていた狩野社長。おもむろにノギスでエキパイの寸法を計り(外周ではない)、工房の隅っこから鉄板を引っ張り出してきたのです。

狩野社長が、勘で想定切除範囲を決める図。中央部は指でへこむほどの薄さでした。

ただの平たい鉄板で何をするつもりなのか、そこからはカメラを構えて作業を見てる(撮ってる)だけの私でした。

エキパイのダメな部分を切り取る前に、切れ目を入れた鉄板をあらかじめエキパイの曲率に重ねて叩き合わせてから、エキパイの劣化部分周辺を切除。その部分にピッタリ合うように点付け溶接をしながら内外から叩き、細かくアールを合わせて切れ目も溶接で塞いでいくという作業となりました。やっぱり、こんな職人芸は私には到底無理でした。

ノギスで決めた寸法に合わせ、鉄板をカットする狩野社長。
切り出した鉄板に、サンダーで切り込みを入れていきます。
エキパイのダメな部分に押し付け、切り込み入りの鉄板を叩き曲げつつエッジは点付け溶接。
鉄板がある程度形になったら、エキパイの患部を切除。
カットした跡に、加工した鉄板を徐々にはめ込み、点付け→叩き修正→接合へ。
片側が安定した後に、全周の曲線合わせでエキパイの外側を叩いて修正。
叩き棒で内側からも微妙に叩き、エキパイ角の曲率を整えます。
さらに内側から叩いて、微妙な膨らみを整えているシーン。
隙間を塞ぎ、肉盛りした部分をサンダーで削って曲面を整えます。
徐々に角がなくなって、曲線が整っていきます。
サンダーの後は、ポリッシャでどんどん滑らかに仕上げ。
塗装予定だったので、ランダムサンダーで足付けしやすいよう処置。
錆止めのジンクを塗ったような雰囲気で、錆穴などなかったかのように治療が完了!
お手本=弟子しごきを始めてしまう社長。ZZR600のエキパイのときもしごかれた。
これですよ。深い部分はさすがに残りましたねー。深追いは、やめとこ……。

そうして出来上がった、エキパイのリヤバンクの排気口付近。塗装前提の仕上げですが、十分元通りの曲率になって継ぎ目がまるで分からなくなっていました。これは筆者のローライダーに限らず、交換する部品が完全に欠品した車両にも“一筋の光明”的な技と言えそうです。圧巻の出来栄え!

エキパイの問題がこのように解決したので、あとは良い塗料でしっかり塗装するのみ。そんな想像をしていたら、狩野さんが穴空きを恐れて深追い研磨しなかったエキパイの一角を磨いてしまった。同じように磨けという暗黙の指令でしょうね。はい、この後はしっかり塗装させていただきます。   (つづく)

切り取られた部分がこちら。完全に薄くなっていました。
耐熱塗装はエンジンと同時期に行うことにして、次回は傷んだ足回りを先にやりましょう。

■取材協力
有限会社・狩野溶接工業
https://kano-w.com/

文と写真●小見哲彦

著者プロフィール

小見哲彦(こみ・てつひこ)

無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーを経験してバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。2021年からは、防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を依頼されている。

  1. 初心者ママライダーの感じたRebel 250 E-Clutchの魅力。「私の心を落ち着かせてくれる存在です」

  2. 【わかる?】車検のある400ccクラスで発売からもう4年……だけど2024年まで『ベストセラー』を誇ったHondaのバイクってどれだと思う?

  3. 【え?空冷?】新型『CB1000F』を「予備知識ゼロ」でレビューすることになった→聞いてた話と違うじゃないか!?【Hondaの道は1日にしてならず/CB1000F ①第一印象 編】

  4. 【驚異の価格】新型EVスクーター『ICON e: (アイコンイー)』は26Lのシート下収納スペースありで充電もラク!【Honda2026新車ニュース】

  5. 徹底解説!レブル250の「Eクラッチ」が圧倒的に支持される「7つの理由」って? 【Honda E-Clutch/Rebel 250 S Edition編】

  6. 【質問】このバイクの車名ってわかる? Rebel 250(レブル250)じゃないよ!DAYTONA×Dope製のCL250向け『カスタム』です!

  7. ツーリング好きの私が年甲斐もなく『峠の走り』に夢中になってしまったバイクの話【Hondaの道は1日にしてならず/GB350 S インプレ・レビュー 前編】

  8. バイク歴18年のライダーはGB350 Cで初のMT車デビュー「これにしかない良さがあります」

  9. CRF1100L Africa Twin(アフリカツイン)が予想外のニューカラー!?新型モデルからは『MT』と『<S>』が無くなり『DCT』のみに!

  10. GB350はモトクロスの女王、川井麻央選手も絶賛「GBがいいヤツすぎて仲良くなりました」

  11. Honda純正オイル「Pro Honda」の上位グレード「SPORTS」と「PREMIUM SPORTS」はどこまで違う? Honda二輪車のエンジン開発にも使用されるハイグレードオイルは〇〇〇が全く別物です!

  12. 【新車】125ccスクーター『LEAD 125(リード125)』がニューカラー2色追加で新発売! シート下スペース約37Lでスマートキー&USBソケットも標準装備!

  13. 10年、20年後も色褪せない「控えめに言って最高」GB350 Cを全力で絶賛する理由

  14. GB350を手に入れて1年半。休日はバイク漬け。女性ライダーの語る愛車の魅力。「行動範囲を広げてくれる素晴らしい相棒」

  15. 大排気量ツアラー一筋だったベテランライダーがXL750 TRANSALPに乗って感じた自由と楽しさとは?

  16. のんびりツーリング最強の大型バイク『CL500』がアップグレード!新色にも注目です!

  17. 通勤・通学、二人乗りもOKの遊べる125cc『ダックス125』は初心者の人も安心!

  18. 50歳からライダーデビュー。エネルギッシュな女性ライダーが考える悔いのない人生

  19. 新型『NX400』ってバイク初心者向けなの? 生産終了した『400X』と比較して何が違う?

  20. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー