父親がバイク経験者の高校生ライダーにインタビュー
三ない運動は「免許を取らせない」、「買わせない」、「運転させない」というスローガンを掲げ規制する社会運動。2019年4月に、それを撤廃した埼玉県で行われているのが、免許を取得した生徒、バイク乗車中の生徒(今まで隠れて乗っていた生徒を含む)を対象とした交通安全講習だ。
「乗せる代わりに安全を教育する」、埼玉県が試みているこの新たな取り組みにより、バイクに乗るようになった高校生には、どんな変化や影響があるのか。それを考察するシリーズ3回目も(第1回と第2回の記事は下記参照)、2020年8月24日(月)開催の「令和2年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習(西部地区)」に参加した高校生へのインタビューを紹介する。
今回は、父親がバイク経験者という、原付バイクに乗る男子高校生2人(1人は納車待ち)の声をお届けしよう。
「電車が不便で、駅やバイト先に行くのに使っています」
所沢商業高校2年/平岡さん(16歳・男性) 愛車:ホンダ ディオZX
Q:なぜ免許を取得し、いつからバイクに乗っていますか?
歩いて行ける八高線(東京都八王子市と群馬県高崎市を結ぶJRの地方交通線)の駅に電車が全然来ないんです。それで、8km(バイクで15分)くらい離れた西武池袋線の駅に行くために、去年(2019年)の夏に免許を取りました。
バスは本数が少ないし料金が高いので。バイクは通学では使っていませんが、どこかに行く時に(バスや電車では)不便なので必要なんです。
Q:バイクに乗ってみてどうですか?
(普段の)足として使っていますけど、楽ですね。バイトの行き来にも使っていて、家からバイト先(ホームセンター)までは4kmくらい。たまに友達と秩父に遠出したりもするので、距離的にはかなり乗っていて、毎週ガソリンスタンドへ(給油をしに)行っています。
いずれは大きなバイクに乗りたいので、今年の冬は合宿免許に行く予定です。250ccクラスのスーパースポーツに乗りたくて、一括で買うためにバイトしています。
Q:ご両親はバイクに乗ることを何と言っていますか?
「気を付けな」と言っています。始めは反対していたけど、「学校がいいって言うならいいよ」って。父親は昔大きなバイクに乗っていたけど、今は降りています。
Q:交通安全講習を受けてみて、どうでしたか?
まぁまぁでした。一本橋が難しかったです。教習所でも頑張らないとな、と思いました。
Q:三ない運動についてどう思いますか?
知ってます。(埼玉県では)無くなったんですよね? 乗るなって気持ちはわかりますけど、(三ない運動自体は)いらないんじゃないですかね。
「親父がバイク好きで一緒に乗ろうって」
飯能南高校2年/駒田さん(16歳・男性 ※写真中央) 愛車:ホンダ ディオ(納車待ちのため講習会には電車で来場)
Q:なぜ免許を取得し、いつからバイクに乗っていますか?
今年(2020年)の8月3日に免許を取りました。バイクはまだ納車前です。
免許を取ったきっかけは、親父がバイク好きで、「一緒に乗ろう」って言われたからです。だから、原付免許だけでも先に取ろうと思いました。いずれは大型二輪免許が欲しいから、そのうち普通二輪免許を取って、大型二輪までステップアップしたいなと思っています。ただ、誕生日が3月31日なので、高校にいるうちは大型まで取れない(笑)。卒業したら取りに行きたいです。
Q:(納車後に)バイクに乗れるのは楽しみですか?
空手の習い事に行っていて、今までは電車を使っていたんです。バイクに乗れるようになったら、荷物も運べるし電車代もかからないし、いいなって思います。
Q:ご両親はバイクに乗ることを何と言っていますか?
親父はもうバイクを手放していたんですが、俺が「バイクに乗る」って言ったら「また買う」と言っていました。お袋も親父も「早く免許を取ってこい」って感じでした。
Q:交通安全講習を受けてみて、どうでしたか?
「事故が多いから気をつけた方がいい」という話が勉強になりました。危険予知のポイントなど、具体的な例もあってわかりやすかったです。
Q:三ない運動についてどう思いますか?
よく知らないです。そういうのは自分で色々考えて行動すればいいのに、大人から勝手に決めつけられてかわいそうだなって思います。自分の意見とかあるのに。
2人とも、「日常生活でバイクを活用したい」、「今後はより大きなバイクに乗りたい」、「三ない運動について否定的」という点では共通していた。
なお、埼玉県で実施している安全運転講習会では、駒田さんのように、何らかの理由によりバイクで会場へ来られなかった生徒や、まだバイクに乗っていない生徒についても、座学の講義を行っている。座学では、ヘルメットのかぶり方からバイクの操作、公道の安全な走り方までを学ぶことができる。
*文中の( )内は編集部注
レポート&写真●田中淳麿 編集●平塚直樹