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これからはスクーターにも乗り心地抜群の【電制サス】が標準装備される!? Astemoの技術体験取材会でショーワの最新サスペンションをテスト

2025年4月1日に日立Astemo株式会社から社名変更したAstemo株式会社は、バイクファンなら聞いたことのある有名パーツブランドを複数保有している。そんな同社の二輪技術体験試乗会の参加レポートを、レース経験・市販車試乗経験ともに豊富な二輪ジャーナリスト、鈴木大五郎がお届けする。

市場投入前の最新技術を多数お披露目

現行の市販モーターサイクルに標準装備されるサスペンションにおいて、50%以上のシェアを誇るショーワ。2021年に日立オートモティブシステムズ、キャブレターで有名なケーヒン、ブレーキシステムで有名なニッシンと経営統合し、現在はAstemo株式会社内の1ブランドとなっている。

この経営統合のメリットとしては各ブランドのシナジー効果が挙げられており、それぞれの強みを共用することで個々のブランドの技術力や対応能力のさらなるレベルアップを図っているという。

そんなAstemoの製品・技術をより広く周知すべく、さる5月末に「“Astemo Tech Show 2025”二輪技術体験取材会」がメディア向けに開催された。そこでは、現在開発中のものも含めてさまざまなパーツの展示や体験試乗が実施されただけでなく、Astemoのエンジニア陣も説明員として参列。各製品・技術の詳細や今後の展望などを直接担当者に聞くことができる有意義な機会となった。

「“Astemo Tech Show 2025”二輪技術体験取材会」で我々を迎えてくれたAstemo社員の方々。

ショーワの次世代電制サスとは?

この取材会において、ショーワブランドからは、セミアクティブサスペンション機構「EERA(イーラ)」の次世代型「EERA Gen2(イーラ ジェンツー)」と、ほかのサスペンションメーカーに先駆けて開発した二輪車用車高調整機構「HEIGHTFLEX(ハイトフレックス)」の最新版と言える「ギヤポンプ式車高調システム」が出品され、これらを搭載した試乗用車両も用意。Astemoのテストコース、塩谷プルービンググラウンドにて走行する機会が与えられた。

電子制御サスペンションは近年、さまざまなメーカーが手掛け、多くのバイクメーカーで純正採用されている。ダンピングやプリロードに加えて車高まで電子制御で調整するものもあるが、やはりそれなりに高価になりがちであるため、ハイエンドモデルに採用されることが多い。

技術体験用のサスペンションが装着されているのは、ドゥカティ ムルティストラーダV4Sの先代モデル。奇しくも最新モデルである2025年型ムルティストラーダV4Sは、標準でマルゾッキ製の電子制御式前後サスペンションと車高調整機能を備えている。

SHOWAブランドの前後サスに換装された試乗車両のムルティストラーダV4S。170馬力を発揮するV型4気筒エンジンを搭載したアドベンチャーモデルだ。
リヤフレームには後部の車高調整に使うシルバーのモーターポンプユニットがマウントされている。ムルティストラーダV4Sの純正状態でのシート高は、国内仕様では810/830mm(シート装着位置で2段階から選べる)。

今回の試乗車に装着されていたショーワの電子制御式サスペンションが他社のものと異なるのは、車体側に電子制御サスペンションのコントロールユニットを備えるのではなく、サスペンション本体に制御基板を備えることで装着の簡素化を図っている点である。

この“機電一体化”構造こそが「EERA Gen2」の特徴で、省スペース効果&コストに応じた仕様変更もしやすいというメリットにより、廉価モデルからハイエンドモデルまで幅広い車両に対応できるという。もちろん、車両のキャラクターやコンセプトに合わせたセットアップは必要だが、量産化されれば、250ccのスポーツバイクやスクーターまで電子制御式ならではの快適な乗り心地を享受できる可能性があるのだ。

次世代電子制御サスペンション「EERA Gen2」のフロントフォーク。サスペンションユニット自体に装着された超小型ECU(写真内、フォークのトップエンド付近にある赤い部品)には、制御基板とソレノイドコイル、コネクタが備わり、6軸IMU(慣性計測装置)センサICもオプションで装備可能。車両側のドメインユニットなどとの連携にも対応する。
次世代電子制御サスペンション「EERA Gen2」のリヤショック。廉価モデル向きパッケージでは、簡易機能版としてリヤショックのみ電子制御とし、ダンパ構造もシンプルなものとしてオプションの6軸IMUセンサICを搭載しないことでコストを抑える想定。

そして、技術体験用のムルティストラーダV4Sには「ギヤポンプ式車高調システム」も組み込まれている。これは従来の「HEIGHTFLEX」と比べて車高変更に要する時間の大幅な短縮を実現したものだ。

ギヤポンプ式車高調システムを搭載したフロントフォーク。モーターユニットとポンプユニット、油圧ジャッキ、ジャッキ位置センサーを内蔵している。片側だけでシステムが完結するので、もう一方のフォークに同じく片側だけで完結する「EERA Gen2」を装備すれば、ダンピングと車高調の電子制御機能を装着車に一挙実装できる。
リヤショック用のギヤポンプ式車高調システム。高速・高頻度の稼働に対応し、静音動作も実現している。写真は別体型ポンプユニットだが、リヤショックと一体の構造としたポンプユニットも開発されている。

リッター超えのアドベンチャーモデルの中では、ムルティストラーダV4Sは比較的軽量で足着き性も悪くないと言える。とはいえ、決して万人にとってシート高が低いとは言えないマシンである。バイク購入を考えたときに、足着きが微妙というだけで候補から外されることが少なくない事実を考えると、電子制御でシート高を簡単に上げ下げできる車高調整機能付きのサスペンションは、ライダーと車両メーカー双方にとって大きなメリットとなるはずである。そして、自分がこれまで試乗してきた電子制御式車高調整機能を備えたマシンでも車高変更が完了するまでのタイムラグに不満を持ったことはなかったが、その時間がさらに短縮されるならそれに越したことはない。

車高を最大と最小の中間に設定した状態の足着き。ライダーは身長165cm、体重62kg。両足は接地せず、腰を少しずらして片足のつま先で支えている。
車高を最小に設定した状態の足着き。両足のつま先が余裕を持って接地している。

試乗で完成度の高さを確認

試乗車を実際に走らせてみると、停止から発進、走行、停止という流れの中で、すばやく状況に合わせた適正な車高になるのだが、その作動感は乗り手が意識することがないほど自然である。他メーカーではリヤサスペンションのみの車高調整が多いのだが、今回のショーワのサスペンションは前後ともに作動するので、停車時の姿勢やフィーリングがより自然であり、ヘッドライトの光軸のズレを心配する必要もない。

Astemoのテストコースを走行する鈴木大五郎。

ダンピングの電子制御については、今回は3種類のモードが用意されていた。まず、コンフォートモードは乗り心地の良さと路面状況の分かりやすさが特徴だ。アップダウンのあるテクニカルな試乗コースには、至るところに試験用のギャップが設けられており油断ならないのだが、段差を踏み越えてもしなやかにショックを吸収してくれる。

ダイナミックモードでは、ややペースを上げた走りに好マッチング。シャキッとマシンのレスポンスが高まり、スポーティな走りを支える。そして、オートモードを選択すれば、コンフォートとダイナミックの両モードを織り交ぜたような広い調整範囲の中から、走行状況に合わせて適切なダンピングを提供してくれる。

当日は雨模様で路面がぬれていたが、サスの稼働性には問題なし。

このようにモードでキャラクターの変わる電子制御サスペンションは、ムルティストラーダV4Sのワイドなキャラクターをより楽しむのにピッタリなパーツであり、ショーワの製品はその狙いをしっかりと実現していることが確認できた。

担当の方に各種機能の説明やモード変更をつきっきりで行っていただいた。

今回体験したショーワのサスペンション技術が今後実用化され、さまざまなマシンに採用されることで、優れた機能を持つ電子制御サスペンションがより一般的な装備となることを期待したい。

そのほかに披露された製品・技術群

カメラセンシングを軸にした「二輪ADAS」を体験するために用意された試乗車。ベースはトライアンフのアドベンチャーモデル、タイガー1200GTプロだ。取材日は雨天で、この試乗車に装着されている機器の一部が非防水仕様だったため、残念ながらコース走行体験はできなかった。
試乗車では、カメラはウインドスクリーンの基部に左右1つずつ装備されていた。バイクでは現在、車両周囲のセンシングはレーダーが主流だが、カメラの認識技術はレーダーとはまた異なる機能に活用できる。モノカメラセンシングの二輪適合性評価も進行中とのこと。
当初の予定では、千鳥走行に対応した前車追従型クルーズコントロールや、路面検知技術を活かしたサスペンション制御、道路脇の標識の読み取りなどの機能を実走行で体験することになっていた。
雨天だったため、屋内でモニター映像を使った疑似走行体験が行われた。Astemoの二輪ADASの強みとしては、カメラセンシング技術だけでなく、車両統合制御としてAstemoが扱う各種製品を使用したソリューションを提案したり、シミュレーション・プラットフォーム構想を行ったり、包括的な対応ができることにあるという。
開発の企画段階からサスペンションとブレーキの機能を相互に理解し設計を同時に進行させる「Harmonized Function Design」により製作されたフロントフォークとブレーキキャリパー。従来構造に比べてバネ下重量を123g(8.5%)軽量化しているとのこと。綿密な解析により構築された独特のキャリパーマウント構造は、ブレーキフィーリングにも好影響を与えうるという。まずは全日本スーパーバイク選手権やスーパーバイク世界選手権といったレースでの実用化を目指し、将来的には量産スーパースポーツへの標準装備も視野に入れている。
この写真に写っているブレーキキャリパーは、Astemo独自技術のFSW(Friction Stir Welding=摩擦攪拌接合)を使って製造されたモノブロック品で、FSW技術の進化で従来より小型化されている。センターブリッジを採用して剛性を高めていることも特徴だ。
こちらはオフロード競技車両向けのブレーキキャリパー。ブリッジ部中間部に穴を設けることで軽量化し、ブリッジからピストン間にかけてのリブ形状を最適化することにより剛性を上げている。また、デザインも一新して、スライドピンからハンガーピンにつながる線を強調している。
このABSユニット用基板は、ABS適用拡大やサイバーセキュリティといった法規の動きに対応するようアップデートされたもので、オプションでIMUを内蔵することも可能となっている。
現行シリーズと同一のサイズ&スペックながら、コストダウンを実現したコミューター向け小型スロットルボディアッシー。ISC(アイドルスピードコントロール)をプレート1本締め締結のビルトイン構造として、部品点数を削減するなどしている。コミューターは膨大な台数が生産されるので、パーツのコストダウンは非常に重要となる。
こちらのスロットルボディは小排気量車両用ETB(Electronic Throttle Body)として世界最小サイズでありながら、スーパースポーツ用ETBと同等のスロットル応答性を実現。クイックシフターなどにも対応可能だという。なお、ETBに関しては200〜500ccの単気筒エンジンに向けたラインアップの拡充も進められている。
スロットルバルブの開閉に2個のモーターを使用してドライバビリティを高めつつ、モーター2個分のターミナルを集約したコネクタにより全幅への影響を最小に抑えたETB。市販車では2024年型CBR1000RR-Rファイアブレード/SPで採用されている。このほかにも、Astemoは最適レイアウト設計と作りやすさを追求しながら、さまざまな並列多気筒エンジン用ETBを提案している。
ブラジルのバイオエタノール燃料E100など、FFV(Flexible-Fuel Vehicle)対応のために廉価な高耐食性材を採用したインジェクター。噴霧を実機に合わせてカスタマイズすることで内壁面への燃料付着を減らし、エミッションを低減する試みもなされている。
インド向けFFV対応の燃料ポンプモジュール。サクションフィルターに紙フィルターを採用することにより限られたスペースで最大面積を確保し、フィルターライフ性能を確保。また、2次フィルターレスシステムを構築することで、FFVでもガソリン車と同等のタンク周辺レイアウトを実現した。
ECUの領域でもさまざまな改良が進められている。これは小型単気筒エンジン向けETBと2気筒エンジン向け機械式スロットルの両方に対応できる小型ECU。サイバーセキュリティ法規にも対応しており、さらに二輪初となるプロアクティブ制御を搭載している。これはライダーが必要以上にアクセルを急開したときにスロットルの動きを抑制することで、ドライバビリティを損なわずに燃費を向上させるというものだ。
モーター、ギヤ、インバーターを一体化した“機電一体構造”の電動パワートレイン。小型モーターサイクル搭載を主眼に、エンジンから置換可能なサイズを実現。実車搭載・走行による課題抽出が進められている。

report:鈴木大五郎/モーターサイクリスト編集部 photo:Astemo

LINK

Astemo株式会社
https://www.astemo.com/jp/

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