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【ボア・ストローク長短選手権 2025】今、日本で買えるバイクのエンジン、ショートストローク・ロングストロークのベスト5発表

■上のエンジンは。現行販売モデルで最もショートストローク型のエンジン、さてこれはどんなモデル用?

【ボア・ストローク考察】ショートストロークとロングストローク、なぜ色々あるのか?

ピストン外径(≒シリンダー内径)とストローク(ピストンの上下の行程)の比率で、エンジンのロング/ショート/スクエアストロークが分類できる

エンジンの性格を決める方法は、さまざまあるが、その中で結構重要な項目のひとつがボア・ストロークだ。ご存知のように、エンジンの内部ではピストンが上下運動して燃焼爆発を繰り返し、その力がクランク→トランスミッションを経由して、チェーンやシャフト駆動で後輪を回転させる。

そして、エンジンの内部で動いているピストンが、どれくらいの大きさ(=ボア:ピストンの直径でもあり、エンジンシリンダーの内径でもある)で、どれくらいの距離を上下運動(=ストローク:エンジン内部のピストンが一番上にあるときと一番下にあるときの距離)しているかを表すのが、エンジンのボア・ストロークだ。

ボア・ストロークにはショート型とロング型、スクエア型がある。スクエアとは、ボアとストロークが同じ数値であるタイプで、現行車ではゴールドウイングツアー(73✕73mm:水平対向6気筒)、近似値のものではレブル500(67✕66.8mm:並列2気筒)などがある。往年の名車ではカワサキのZ1(900Super4:66✕66mm:並列4気筒)、ヤマハの2ストモデルRZ250(54✕54mm:並列2気筒)などがスクエア・ストロークである。

現行のホンダ・ゴールドウイング ツアーに搭載される水平対向6気筒1833ccエンジンは、ボア✕ストローク73✕73mmのスクエアストロークを採用

スクエアストロークの特徴として、ものの本などによく書かれているのは、「ショートとロングストロークの中間的な特性」、「総合的な性能を追求したタイプ」、「ピストンの上下運動のスムーズな回転と、トルクフルな特性を両立」「燃焼効率に優れ、高出力と低燃費を両立可能」などとよく説明されている。要は、バランスのいい特性のエンジンということになるが、実際にこのスクエア・ストロークを採用したエンジンは、前述したように現行モデルでは数えるほどしかない。なぜか?

竹を割ったような回答はできないが、現行バイクのボア・ストロークを一覧すると、日本で買えるモデルの内の7~8割がショートストローク型という印象。つまりは、現代のバイクの傾向としては、エンジン回転の反応がシャープで、割と高回転まで回るエンジンが多いということになるだろう。

ならば、なぜロングストローク型が存在するのだろうという疑問が湧くが、それはもちろんメリットもあるからだ。一般的に言われているのは、低中回転でトルクを出しやすいとされている。そして、一度エンジンが回り出して発進してしまえば、そこからアクセルを開けると加速の伸びがいい。高回転まで回さなくても、実用的な速度を引き出しやすい。ひいては、燃費も良好なものになりやすい。などといったメリットがあるのだが、最高出力を追求するには向かないといったデメリットもある。

これ以上詳細に触れると、長々と書いてしまうのでやめるが、ショートストローク、ロングストロークの特徴をさらに知りたい方は、あまたあるボア・ストロークにまつわる記事を検索して、ご覧いただきたい。

そして当記事では、今買えるバイクの中でのショートストローク型バイクのベスト5、ロングストローク型バイクのベスト5をピックアップしてご紹介。バイクのエンジンと言っても、こんなにもボア・ストロークの差があるんだというのを分かっていただけると思う。また、それぞれに乗ったときのフィーリングの違いもかなりあるのだが、これから紹介するモデルにもし試乗の機会があったら、是非その違いを体験して、自分はショート、ロングか、はたまたスクエアタイプのどれが好みなのか、参考にしてみてほしい。

なお、この項の最後にショート型、ロング型の定義をご紹介。「ボア・ストローク比」というのがあり、ストロークをボアで割った比率を数値で表すが、前述したスクエアは、ボア・ストロークが同数値だから1。これに対してショートストローク型は1より少ない数値。ロングストローク型は1より大きい数値となる。

ショートストローク型エンジン搭載モデル・ベスト5

※以下ボア・ストローク比をBS比と表記

1位:ドゥカティ ハイパーモタード698モノ/同RVE

ドゥカティ ハイパーモタード698モノRVE
現行市販車史上、最もショートストロークなハイパーモタード698モノの単気筒エンジン

ボア✕ストローク:116✕62.4mm(水冷4スト単気筒DOHC4バルブ)
【BS比:0.537】
■2024年に登場したミドルクラスのスーパーモタードモデル。新設計の659cc単気筒エンジン「スーパークアドロ・モノ」は、非常に高い回転数を達成できる究極のボア・ストローク比に由来しているもので、現在は生産終了となった1299パニガーレに搭載された「スーパークアドロエンジン」の特徴に倣った単気筒。最高出力77.5ps/9750rpm、最大トルク6.4kgm/8000rpmを発揮。

2位:ドゥカティ パニガーレV4R

ドゥカティ パニガーレV4R

ボア✕ストローク:81✕48.4mm(水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブ)
【BS比:0.597】
■1103ccV4エンジン搭載のパニガーレV4/V4 Sに対し、ストロークを短縮しスーパーバイクレギュレーションに対応させた998ccエンジン「デスモセディチ・ストラダーレR」を搭載した最もレーシングモデルに近いスーパーバイクレプリカ。ユーロ5規制に対応させつつ、最高出力218ps/1万5500rpm、最大トルク11.4kgm/1万2000rpmを発揮。レブリミットは1万6500rpmに設定される超高回転高出力な特性が特徴。

3位:ホンダ CBR1000RR-R ファイアブレード/同SP

ホンダ CBR1000RR-Rファイアブレード SP

ボア✕ストローク:81✕48.5mm(水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ)
【BS比:0.598】
■2020年型でフルモデルチェンジしたホンダ製リッタースーパースポーツ(車名もCBR1000RRから同RR-Rへ変更)。大径バルブ採用とフリクション低減をねらってショートストローク化を図り、最高出力発生回転数を1500rpm引き上げて1万4500rpmに設定。ボア・ストロークはレーサーRC213V-Sと同数値で、最高出力は218ps/1万4500rpm、最大トルク11.5kgm/1万2000rpmを発揮。

同率4位 :ドゥカティ パニガーレV2 ベイリス 1stチャンピオン20thアニバーサリー 

ドゥカティ パニガーレV2 ベイリス1stチャンピオン20thアニバーサリー 

ボア✕ストローク:100✕60.8mm(水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ)
【BS比:0.608】
■955ccVツインの「スーパークアドロ」を搭載したスーパーバイク。名称を意訳すれば、スーパー(=超越したといったニュアンス)なクアドロ(=正方形、スクエアなどの意)ゆえに、「大きくスクエアを超えたショートストローク」といったニュアンスになろう。通常のV2/V2Sが2025年に890ccの新エンジンとなった現在、従来型のパニガーレV2はこの記念モデルのみとなった。ちなみに新型890ccV2ドゥカティのBS比は96✕61.5mmで0.640。

同率4位:ベータ RR RACE 4T/同Xプロ 4T 480

ベータRR Race 4T 480

ボア✕ストローク:100✕60.8mm(水冷4スト単気筒DOHC4バルブ)
【BS比:0.608】
■イタリアのオフロードモデル専門メーカー、ベータのエンデューロモデル。公道走行も可能な水冷4スト単気筒シリーズは350/390/430/480と多様な排気量が用意されており、390は350ベースのストロークアップ版、430は480ベースのボアダウン版となる。そしてこの中では、最大排気量の480が最もショートストローク型で、ドゥカティの従来型V2と同率で4位にランクイン。ボア・ストロークの数値は奇しくもドゥカティV2と全く同じだ。

ロングストローク型エンジン搭載モデル・ベスト5

※以下ボア・ストローク比をBS比と表記

1位:ホンダ スーパーカブ110ほか

ホンダ スーパーカブ110

ボア✕ストローク:47✕63.1mm(空冷4スト単気筒OHC2バルブ)
【BS比:1.342】
■リッター60km/L以上の好燃費を誇るホンダの109cc単気筒シリーズが、ロングストローク型エンジンのナンバー1に! ロング型というとテイスティな味わいのエンジンを想像しがちだが、好燃費と実用的な加速を両立できる特徴があり、特にピストンの軽くて小さな小排気量では、近年の他社製コミューターでもロングストローク型の採用例は多い。ホンダでは同系エンジンをクロスカブにも搭載。ほかに、ディオ110のスクーター用eSPエンジンも同じボア・ストロークのため、スーパーカブ110エンジンと共用部分があると考えられる。

2位:ホンダ GB350シリーズ

ホンダ GB350

ボア✕ストローク:70✕90.5mm(空冷4スト単気筒OHC2バルブ)
【BS比:1.292】
■21年に登場したGB350に搭載の新型空冷単気筒は、ホンダの自動二輪モデルでは異例のロングストローク型。クリアで歯切れのよい鼓動と常用回転域での力強さをねらったエンジンは3000rpm付近にトルクピークを設定。質量の大きなフライホイールを採用し、その慣性マスで、爆発ごとの粘りのある燃焼フィールを実現。一方で、不快な振動は一次バランサーと、メインシャフト同軸バランサーで抑制。同時に、低中回転域重視の実用性と良好な燃費性能も実現。日常使いで優秀なパワーユニットとして好評を得ている。

3位:ホンダ C125ほか

ホンダ C125
スーパーカブ110用エンジンのボアを3mm拡大し細部を見直した、123ccのC125系単気筒エンジン

ボア✕ストローク:50✕63.1mm(空冷4スト単気筒OHC2バルブ)
【BS比:1.268】
■スーパーカブ110らと同じストロークで、ボアを3mm拡大し、123ccに排気量アップした空冷単気筒エンジンがロングストロークの3位にランクイン。110系エンジンよりも上質な回転感と上質なシフトタッチが味わえ、実用的な小排気量単気筒のパワー特性を実現。テイスティな方向をねらったエンジンではないが、こちらも110系と同様に良好な燃費性能を誇る。この123ccエンジンも、ほかにグロム、モンキー125、ダックス125、CT125ハンターカブなどに搭載される。

4位:ベネリ インペリアーレ400 

ベネリ インペリアーレ400

ボア✕ストローク:72.7✕90mm(空冷4スト単気筒OHC2バルブ)
【BS比:1.237】
■戦前の1911年に創業したイタリアンメーカー「ベネリ」は1960年代までレースシーンで活躍。以後も意欲的な市販車を投入したものの1980年代後半に消滅。紆余曲折を経て現在は中国の銭江モーター(QJMOTOR)傘下でブランド名が継続。インペリアーレはクラシックな単気筒モデルで、最高出力21.1psを5500rpmで発生。ゆったりとした走行感での味わいをねらったエンジンで、ライバルは同じくロングストローク型のGB350、ロイヤルエンフィールドのクラシック350あたりとなる。

5位:ロイヤルエンフィールド クラシック350ほか

ロイヤルエンフィールド クラシック350

ボア✕ストローク:72✕85.8mm(空冷4スト単気筒OHC2バルブ)
【BS比:1.191】
■GB350、ベネリの400に続き、奇しくもミドル排気量の単気筒が3台もランクイン。上記2車のライバルモデルでもあるクラシック350だ。クラシカルな外観の空冷単気筒エンジンながら、着実に進化熟成している同車のエンジンは、低回転ではふくよかなトルク感を味わえ、中回転まで回せば相応に刺激的な加速を見せる。なお、この350ccエンジンはクラシック350のほか、ブリット350、ハンター350、クルーザーモデルのメテオ350にも搭載されている。

まとめ●モーサイ編集部・阪本一史  写真●八重洲出版アーカイブほか

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