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「ヤマハって、なぜ音叉マークなの?」ヤマハ発動機の企業ロゴ=音叉マークが変更され、創立70周年記念で新デザインになった!

1998年以来27年ぶりという企業ロゴデザインの変更は、デジタルでの活用を意識したもの

ヤマハ発動機は、1955年の会社創立から70周年の節目となる今年、27年ぶりに企業ロゴのデザインを変更すると発表した。新たな企業ロゴは、デジタルでの活用を意識してさらに視認性の高い2D(平面)の音叉マークを採用するとのこと。そして2025年1月以降、同社で使用する企業ロゴを順次新デザインへ更新していくという。

また、このほか創立70周年を記念した特別なロゴも制作して発表。この記念ロゴは「挑戦はすべてのはじまり」をコンセプトに、同社が創立と同時に挑戦した二輪車レースのゼッケンをモチーフとしたデザインになっている。この記念ロゴも、期間中に行うさまざまなイベントやマーケティングツール、コーポレートアイテムへ活用し、社内外で70周年を盛り上げていきたいという。

ただし、新デザインロゴを反映していくのは、差し当たって企業アピール用の告知、社員用の名刺などにおいてで、立体感のあるエンブレムを多く採用するバイクの車体用ロゴなどは、しばらく現状のまま継続していくという。

ところで、ヤマハはなぜ音叉マークなのか? 「ヤマハ」って人の名前?

ヤマハ製バイクのほとんどには、英語の「YAMAHA」表記のほか、丸囲みデザインの音叉マークがあしらわれているが、そもそもなぜバイクに音叉をあしらったマークが付くのかと言えば、ヤマハ発動機の起源が、日本を代表する楽器メーカーの「ヤマハ株式会社」だからというのは、ご存知の方もいるはず。

またその楽器メーカー「ヤマハ」の前身が「日本楽器製造株式会社」(通称:日楽=ニチガク)という社名で1897年に設立され、創業者の名前が山葉寅楠(やまは・とらくす)だったのだ。ちなみに、ヤマハの本家とも言える日本楽器製造が社名を「ヤマハ株式会社」としたのは意外に遅く、創業90周年に当たる1987年のことだった。

なお、創業者の山葉氏は、オルガンを試作したのをきっかけに楽器製造の起業を目指したものの、当初は順調にいかなかった。製品を識者に試してもらったものの、調律を酷評され壁にぶつかることに。そこから時間をかけて音楽の理論や調律を学び、試行錯誤しつつオルガンを完成させたのだという。

そうした経験を経た山葉氏は、調律用の道具である音叉を片手に苦労したことから、社章に音叉マークを取り入れることを着想。そしてヤマハの前身、「日本楽器製造株式会社」を設立した翌年の1898年、社章を商標登録。今とは相当に異なる音叉マークだが、当時の社章では音叉をくわえた鳳凰の図がデザインされている。

1898(明治31)年に商標登録された日本楽器製造株式会社(ヤマハの前身)の社章
日本楽器製造株式会社(ヤマハの前身)の創業者・山葉寅楠氏(ヤマハ株式会社のウェブサイトより)

前述したように、音叉は楽器の調律用に使う道具だが、それは鋼鉄で作られたU字型の棒の中央に柄を付けた形状が特徴である。そしてヤマハの音叉マークは、3つの音叉を重ねたようなデザインとなっているが、現在のヤマハ音叉マークの原型となりそうなのは、1916年に商標登録出願されたマークに起源を見ることができそうだ。

今のヤマハマークの原型と言えそうなのが、1916(大正5)年に商標登録さえたこのマーク

そしてこの3つを重ねた音叉、ヤマハの「技術」、「製造」、「販売」の3部門を示して、社内での強い協力体制を表現するほか、「メロディ」、「ハーモニー」、「リズム」という音楽の基本エッセンスの調和という意味も込められているようだ。

微妙に違う、楽器のヤマハとバイクのヤマハの音叉マーク

1955(昭和30)年、ヤマハの量産車第1号として発売された空冷2ストローク単気筒のYA-1(125cc)。タンク両サイドに音叉マークが入っている
ヤマハ初の4ストローク車として1970年に登場したXS-1(650)。1970年代は意外と音叉マークが地味な扱いで、同車ではミラーボディ、タンクキャップに小さく音叉マークの刻印が入る程度だった

ヤマハ(当時は日本楽器製造)が、本業の楽器と異なるバイクの製造に乗り出し、量産第1号機のYA-1を発売したのは1955年。「楽器メーカーがなぜバイクを?」という疑問は、当時の世間でもそして今の我々も抱くところだろうが、日本楽器製造には、戦時中に航空機の木製や金属製のプロペラを製造(させられた?)経緯があり、その試験用にエンジンも製作した経験があったからと言われている。これに加え、重要な車体の製造でも、ピアノフレームの鋳造技術が生かされた。ピアノフレームには、弦の張力に対応する剛性と、適度に振動することで音質を高める弾性が必要だというが、この剛性と弾性、相反する要素を鋳物に持たせるノウハウのほか、すでに持っていた工作機械もバイク製造に活かせたのだという。

なお、ヤマハ発動機の創業者は川上源一氏。日本楽器製造株式会社の第4代社長でもあり、バイクのみならずスポーツ用品、レクリエーション事業など社業の多角化を推進し、ヤマハ中興の祖と言われる人物だ。

かくして日本楽器製造(現・ヤマハ株式会社)の二輪製造部門が独立・分離する形でヤマハ発動機株式会社は1955年に設立。バイク専業メーカーとしての歩みを始めるが、その起源に楽器製造があることを示すのが音叉マークなのである。そして楽器のヤマハでも音叉マークを使用しているわけだが、バイク業でのそれと音叉マークが微妙に異なるのも、けっこう知られているところかもしれない。

上が楽器のヤマハ株式会社のロゴ、下がヤマハ発動機の従来ロゴ。違いが分かるだろうか?

3つの音叉が重なったモチーフは同じながら、楽器のヤマハのそれは音叉が外円に接しないで収まるのに対し、ヤマハ発動機のマークは音叉が外円に接している。これは、同社の音叉マークがバイクのホイールに見立てたデザインだからだという。そしてYAMAHAのロゴ文字についても相違があるようで、楽器のヤマハはバイオレット(紫)基調でMの中央が下まで伸びておらず、アルファベットは微妙に左右非対称の書体を採用。対するバイクのYAMAHAロゴは、赤基調でMの中央が下まで伸び、アルファベットの文字は左右対称の書体。なお、新たなヤマハ発動機のロゴも、こうした基本書体とイメージを踏襲した変更になっている。

文●モーサイ編集部・阪本 写真・図版●ヤマハ発動機、八重洲出版アーカイブ

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