2015年のもてぎオープン7時間耐久ロードレースで、YAMAHA YZF-R25を駆りクラス優勝を飾った、国産ブレーキパッドブランドのベスラ。
レースが本職ではないチームが総合優勝を目指すチャレンジは、そこから始まったといっても過言ではないだろう。
本誌もこのチャレンジを追いかけ続けてきたが、令和元年、悲願の総合優勝を勝ち取った!!
間口は広いが優勝するのは困難
世界最大の草レースを目指して1998年にスタートした、もてぎ7時間耐久レース、現在は250cc以下のバイクを使用した7時間耐久レースとなり、ベテランからビギナーまで参加出来るエンジョイラブルな耐久レースとして人気を博している。
とは言え、上位入賞を狙う実力のあるチームも多く参戦しており、バイクやライダーのレベルはもちろん、7時間トラブルなく走りきるにはチームの総合力が試される。優勝を目指すには僅かなミスが致命傷となりうる、本格的な耐久レースへと変貌するのだ。
2019年のもて耐は、福田たかお選手、遠藤弘一選手、佐藤昭仁選手という布陣で悲願の総合優勝を目指すこととなった。
しかし8月24日の予選の際、早くも課題が。
「エンジンのパワーがしっかり出ていない感じがする……」
予選1回目のタイムアタックを終えた、第1ライダーの福田たかお選手がメカニックに告げる。3年目を迎えたエンジンのままでは、今年の7時間を走りきれない恐れ有りと判断したチーム。
そこで今回ニューエンジンを調達したのだが、セッティングが決まり切っておらず、2分16秒714と普段より2秒以上タイムが出ていなかったようだ。ECUのマップやサスペンションを調整して第2ライダーの遠藤弘一選手が2回目のタイムアタック。しかしタイムは2分15秒120と、遠藤選手もタイムに納得がいっていない様子だった。
結果として5番目のタイムで予選通過したが、優勝候補の一角であり予選トップのNMC×ATJRacingは、2分11秒479という驚異的なタイムを叩き出していた。このタイム差を少しでも埋めなければ、総合優勝への道は閉ざされてしまう……。
マシンをより良い状態にするべく、チーム一丸となってセッティング作業を行う。エンジン、マップ、サスペンションなど、その追求は着用するレーシングスーツにまで及んだ。
運命の決勝がスタート!
8月25日午前9時、恒例のル・マン方式で、2019年のもて耐がスタートする。
ベスラレーシングは遠藤選手が5番グリッドからスタート。ベテランらしい落ち着きと果敢に攻めるアグレッシブさを織り交ぜた巧みな走りを見せ、順調にラップを重ねてポジションを上げていく。
しかし、耐久レースは速さだけでは勝つことはできない。
ベスラレーシングwith制動女子がエントリーしているWT(水冷ツイン)クラスでは、ピットインからアウトまでの時間が4分と定められているため、勝つためにはピットイン回数を少なくする事も重要な作戦だ。パワーか燃費か、そのバランスを制したチームに有利に働くレギュレーションとも言えるのだ。
そのためベスラレーシングwith制動女子は燃料セッティングを薄めにセットして燃費を稼ぎ、ピットインを6回で済ませる作戦をとっていた。
それによりトップに浮上し、このまま行けば総合優勝の可能性が高まってきたに思えた。
しかしレース中盤過ぎ、突如として燃費が思うように伸びなくなってしまい、7回目のピットインを実施する作戦に変更せざるを得なくなった。
これで優勝は遠のいてしまったか……。そう思えたが、速いラップタイムを刻み追い上げを見せていた2番手走行のNMC×ATJRacingに黄旗区間での追い越しのミスがあり、180秒のペナルティストップを課せられてしまった。
この3分は大きい……! これによりベスラレーシングwith制動女子に、総合優勝のチャンスが生まれることになる。
追うNMC×ATJRacing、逃げるベスラレーシングwith制動女子……! 怒濤の勢いで追い上げるNMC×ATJRacingがすぐ後方に迫るなか、ついにトップでチェッカーフラッグが振られた! 両者のタイム差は何と2秒465の僅差。ギリギリの接戦を制して、悲願の総合優勝を手にする事となった。
実力も当然ながら、あと1つ、目に見えない何かが作用したような、そんな感覚を覚えたレースだった。
<2019年もて耐決勝レース正式発表上位6チームリザルト>
優勝#57 ベスラレーシングwith制動女子 CBR250RR 171周
2位#103 NMC×ATJRacing CBR250RR 171周
3位#8 `頂’ 初号機元チャンプ&SE CBR250RR 171周
4位#1 YSSレーシング×MGR.レーシングサービス Ninja250 171周
5位#13 Team KYOEI Aチーム CBR250RR 169周
6位#33 信建設&YM project CBR250RR 168周
※ 優勝#57・5位#13・6位#33と上位3台がベスラのブレーキパッドを選択していた