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紙工作を始めたのは3歳のころ
世界は広く、ダンボールや木でバイクを製作するなど特殊な素材や方法でバイクを作る人がいる。これらは本物のバイク同様の大きさで作っているわけだが、模型サイズということでは紙を素材としてバイクを作っている人がいた。
バイクを紙で再現している鳴瀧さん(@taki_yoshiwo)は、趣味としてKTM 1190 RC8、BMW S1000RR、スズキ ハヤブサなどを製作している。YouTubeに紙工作の製作様子を投稿しており、その中には900万回再生されている動画もあり、海外でも人気を集めているようだ。
当記事では、鳴瀧さんにバイク模型を始めた理由、作るのが大変だった作品の話などを伺ってみた。
鳴瀧さんが紙工作を始めたのは3歳のころ、なにか作りたいという気持ちがあったが、経済的な理由でプラモデルが買えず、悩んでいたそうだ。そこで、思いついたのがどこにでもある空き箱や画用紙を素材とすることだった。
「空き箱や画用紙でおもちゃを作ってみようと思ったのがきっかけですね」
鳴瀧さんが最初に作ったのは1997年から放映されたテレビ朝日「ビーロボ カブタック」に出てくるロボットを画用紙で再現したのが始まり。その後もさまざまなものを作り、現在も趣味として紙工作を続けているのだという。
「当時はうまく作って完璧に再現するという気持ちはなく、なんとなく似たようなものを作って、あとの部分は想像力で補う形でやっていましたね」
鳴瀧さんが製作した紙バイク模型は、タンクやシートの形状、チェーンやタイヤの太さなど、細部までこだわって作られている。では、どのような技法が用いられているのだろうか。
「寸法さえ分かれば作れるので、写真を見る前にカタログスペックから図面を書いて、各パーツはeBay(190ヵ国以上に出品可能な世界最大級のネットオークションサイト)を見て作っていますね」
また、バイクを完全再現するために、全体像がうつっているバイク写真のほか、実車を見て確認してみたりなど、じっくり観察をしてから製作に取り掛かっているそうだ。
作るのが大変だった作品はホンダ VFR800
鳴瀧さんによれば、作るのが大変だった作品はホンダ VFR800。配管が複雑だったり、ラジエターの位置など各パーツを調べて再現していく作業に手間取ったりと、製作期間は9ヵ月もかかり、いつもより大変だったとのこと。
「いうたらただのバイク模型なので、表現っていうよりも再現になってきますね」
時間があるときは1日3時間、現在は1日2時間程度を紙工作に使っていると話していた。
「あくまで趣味でやっていることなので、疲れたらやめます。(本来息抜きである)趣味で疲れたりするのも本末転倒なので(作業を)やめたいと思ったときはやめるようにしています」
各パーツを再現して組み立てると本物のバイクっぽく見える
バイクを再現するために押さえているポイントを聞いてみると……
「たとえば、人間は元々2色型でしょ。哺乳類だから白黒で立体を判断するので、各パーツを忠実に再現して作り組み立てていけば、人間は本物のバイクと錯覚するのではと思うんですよね」
とはいえ、さまざまな紙を使っているとは思うが「紙の種類はというと、空き箱や画用紙、100均のスケッチブック、色を付ける場合は凹凸のあるマーメイド紙。オルタネーターのカバーなどは上質紙を使い、チェーンを作るときは平和紙業のファンシーペーパー「新・星物語」を使ったり、エンジンはリンテックの特殊紙「ニューカラーRシリーズ」など、部位によって扱う紙の種類も変わってきますね」と、バイクによっても使用する紙の種類が違うとのことだが、多くて10種類。少ないときは1種類の紙だけで製作しているとのこと。
ちなみに、学生時代に鳴瀧さんはドゥカティ モンスター400に乗っていたそうで、往復100kmの道を通学して5年間で約20万kmを走行。しかし、愛車は群馬県内を走っていたところ、鹿とぶつかって廃車になってしまった。その後は林道目的でホンダ XR250を乗り始めたという。
KTM 1190 RC8はインド人に大ウケ
YouTubeではスケッチブックの紙を使ってKTM 1190 RC8を製作した動画を投稿したところ、インドの人に大ウケしたそうだ。意外にも日本では紙工作の動画はウケないと鳴瀧さんは話していた。
また、エンジンの中を作ってみたところ、解体でもしない限り見えない部分まで再現したため、エンジニアが喜んでくれたそうだ。
今後、製作しようと思っている紙工作のテーマについては「何回か試しにやってみたことがあるんですけど、パーツの裏側まで見えるのはいいなと思っていたので、切り絵にしてそのパーツの中まで見えるようにしてみたい」という。
最後に紙工作の面白み、魅力的な部分を聞いてみたところ「昔と今では変わっています。昔だったらもう少し工夫すれば次はうまく作れるはず、実物ってこんな感じなんだと、作ってみたらわかる未知の世界があったと思います。紙工作のために学ぶことも面白く、作っている中で構造を理解できる楽しみがありました。ただ、今はどこかに発表して『こういう反応がもらえるんだ』と見た人のリアクションを見るのが面白いですね」
鳴瀧さんはYouTubeでもバイク紙工作の様子を投稿しているので、ぜひ見てほしい。
レポート●モーサイ編集部・小泉 写真●鳴瀧さん