バイクやクルマに無くてはならないもののひとつと言えば「タイヤ」。
カタカナで表記されるように「タイヤ」はいわゆる外来語で、英語由来の言葉です。
ただ、英語表記をする場合、アメリカ英語の「TIRE」とイギリス英語の「TYRE」、2種類のスペルがあります。
タイヤメーカーは世界各国にありますが、自社ウェブサイトや広告の製品紹介など、公式な場面でどちらのスペルを使うかはマチマチです。
言葉の歴史をたどっていくと、意外かもしれませんがアメリカ英語の「TIRE」の方が古い英語で、15世紀~16世紀ごろには「TYRE」の表記が使われ始め、両者が入り交じって使われるようになったそうです。
19世紀になるとゴムのタイヤが登場します(それまでは金属製や木製でした)。それを機にイギリスでは「ゴムのタイヤ」を「TYRE」と表記して区別するようになりました。
「タイヤ=ゴム製」が当たり前になるにつれイギリスでは「TYRE」が定着していきましたが、世界的には「TIRE」が主流となっていきました。(ただし20世紀初頭のイギリスの新聞では、ゴム製のタイヤでも「TIRE」で表現しているものもあるなど、人々の間で区別が徹底していたとも言い切れない模様です)
では、バイクのタイヤをラインアップしているメーカー・ブランドの公的な表記を見ていくと……。
主流の「TIRE」派
ブリヂストン(日本)、ミシュラン(フランス)、コンチネンタル(ドイツ)、IRC(日本)
「TYRE」派
ダンロップ(日本)、エイボン(イギリス)、ピレリ(イタリア)、メッツラー(ドイツ)
現在ダンロップは日本の住友ゴム工業のブランドですが、ダンロップブランドのルーツはイギリス。しかもゴムを用いた空気入りタイヤを発明したのもダンロップです。
バイク用ではないものの、住友ゴム工業はほかに「グッドイヤー」(アメリカルーツのブランド)、「ファルケン」(かつての「オーツタイヤ」で日本ブランド)も擁していますが、こちらは「TIRE」表記。ダンロップは敢えての「TYRE」なんですね。
日本ではほぼ流通していませんが、同じくイギリスの植民地だったインドのタイヤメーカー(MRFなど)も「TYRE」を使っています。
ただし「TIRE」を使うメーカー・ブランドも、イギリス英語圏(オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど、かつてイギリスの植民地だったエリアを含む)では「TYRE」に言い換えている現地法人もあります。
例えば、ブリヂストンのイギリス現地法人、オーストラリア現地法人はホームページなど自社製品の紹介に「TYRE」を用いています。
アメリカのダンロップは「TIRE」を用いるなど、逆の「郷に入っては郷に従う」ケースも。
最後に、これは完全に余談ですが「TIRE」という英語は全く同じスペルで「疲れる」「飽きる」という意味の同音異義語があります。が、「TYRE」ではその意味の代用できませんので、英語の試験ではご注意を下さいませ。
まとめ●モーサイ編集部・上野