バイクライフ

車椅子のまま運転できるバイク・コアラ 製作者の夢は「パラリンピックマラソンの先導車に使ってほしい」

スーパーカブベース車、電動車椅子対応車など兄弟車も

コスト、届け出、数々の困難を乗り越えて発売から5台ほどを世の中に送り出した後も、「コアラ」シリーズは各ユーザーの需要に合わせて形を変え、進化を続けている。

スーパーカブを2台連結したぜいたくな仕様

秘密基地のような工房の中で現在完成を間近にひかえるのは、スーパーカブを2台連結してその間に車椅子の搭乗スペースを設けた車両だ。

このマシンは1人乗り専用でパッセンジャーが同乗することはできないが、車体をよく見ると、連結されたカブのパーツが「コアラ」のように有効活用されていることが分かる。

スーパーカブをベース車両とした、製作中の「コアラ」の兄弟車
ななめ真上から見た写真。1台のフロントまわりに2台のリヤセクションが接属し、そのボディに挟まれるような形で車椅子が乗っている。

たとえばメーター部は1台のカブのメーターをそのままメーターとして活かした下にもう1台のカブのメーターを移設し、ギヤポジションインジケーターとして使っている。

ギヤポジションインジケーターとして利用されている2台目のメーターは混乱を来さないため、目盛り部分が黒い塗装で隠されている。

連結された2台のカブはそれぞれ独立したエンジンの始動機能を持っており、万が一1台のエンジンが停止しても、もう片方のエンジンだけで走行可能という副産物的な強みも持っている。

また、エキゾーストパイプは2本ともフロント部分に移設されており、エンジンに走行風がよく当たることなどから、冷却性能が高まっているそうだ。

車体前方に移設されたエキゾーストパイプ。結果、エンジンに直接風が当たるようになった。

「介助型」は福祉施設などでも活躍中

工房の中央に目を向けると、ここにも製作途中の車両が。これはスーパーカブプロをベース車両としたもので、車体右側に側車のようなフレームが取り付けられている途中だった。

このフレームを作るだけで丸3日かかるという。大変な労力の上に「コアラ」シリーズは生まれるのだ。

この車両は、側車に車椅子を乗せて健常者が運転を担当する「介助型」になる予定だという。

「以前販売した同じ介助型タイプの製品は、障がいのある子どもたち向けのレクリエーションにも使われていて、子供を乗せて走るとやっぱり爽快感があるのか、楽しそうにするんだよね」と片山さん。

電動車椅子でも乗れるバイクの改良に奮闘中

工房の2階に上がると、現在は試乗車として活躍しているという初代「コアラ」とともに、新作の試作車も置いてあった。

ひときわ大柄な「コアラ」の兄弟車。車重は300kg近くあるといい、今後は軽量化も視野に入れてさらなる改良をしたいとのこと。

写真は台湾のバイクメーカーPGOのスクーターをベース車両とした「コアラ」の兄弟車だ。最大の特徴は搭乗スペースが広いこと。電動車椅子でもそのまま乗り入れられるように作っているという。
電装系を繋げばすぐにでも動かすことができるというが、まだ改良を考えているポイントがあるという。たとえば、最低地上高がかなり低くなってしまっている点だ。

最低地上高がかなり低く、フレームと床の間に女性の握りこぶしが入るか入らないか……と言ったところ。

このままでは駐車場に入るときなど道路の縁石にぶつかってしまう可能性があるので、フレームの前方にソリのような反り返しを設けることで、段差をかわせるようにするつもりだという。

「作れば作るほど、際限なく改良して作り込んでしまう。こんな感じだから儲からないんだけどね」と笑う片山さんを見る限り、完成時期は未定のようだ。

次回作は車椅子で乗れるCT125・ハンターカブ!?

さらに次回作としては、6月に発売され高い人気を博しているホンダCT125・ハンターカブをベース車両とした車椅子対応バイクの作成を画策しているとのこと。
完成は2020年秋ごろを見込んでいるとのことなので、その暁には続報をお届けしたい。

レポート●モーサイ編集部・中牟田 写真●片山技研/モーサイ編集部・中牟田

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