バイクライフ

【ショベルヘッド再生記9】  まさかの上がりバイクか? ハーレーダビッドソンFXSローライダー 「リヤホイール周辺は難敵なのだ。バナナキャリパーとの格闘」(後編)

■タイトル写真:車体後部の美化と整備が進みました。これはバナナキャリパー加工前に仮組みした全景。

まずはバナナキャリパーの美化作業

前号の第8話終盤では、リヤブレーキのバナナキャリパーにかみ込んでいたキャリパーピストンを打撃しつつ分解したため、新品ピストンを調達しなくてはならない羽目に。余分な出費になってしまいましたが、新品のピストンとシール類、スライドピンやパッドをネット通販のお店に発注しておきました。

それから数日、表面の塗装やコーティングの壊滅したバナナキャリパーの美化に明け暮れることになりました。何しろ素材は表面の荒れでボコボコです。キャリパーステーはスチールですが、キャリパー本体は一応アルミなので削り過ぎてもよろしくない。

そのため、ポリッシャーで表面の古い塗膜の残骸を軽く剥がした後は、ひたすら手作業でバナナキャリパーの表面をはぎ落とし、大面積の部分はペーパーの目を少しでも揃えるようにヘアライン的に研いで、ボコボコ感を消していきました。裏面の方が重症だったので、そちらはポリッシャーに120番のペーパーで多少削ってならしてから手作業で進めました。

ホイール(ローター)から外したバナナキャリパーの裏側。クモさんのご遺体が2体ほど。
あまりにボコボコなので120番のペーパーでざっくり削ってみます。
表側は地肌が容易に出たので調子づいてせっせと磨く。手が”毒手”のようだ。
ピンスライドのカシメされた側の摩耗や傷は少なめなので、清掃後このまま再使用します。
外周の磨きまで進めた後、240→600番でメが整うように努力している途中。
キャリパーを保持する純正のサポート。裏側のバリや角を滑らかに磨き、削ります。
アルミの地肌のままでは白く曇ったり錆も出やすいので、サフを吹いておきましょう。

よく効くようにおまじない!? キャリパーの保持部を小加工

美しくなってきたところでサフを吹いておき、いったん黒で塗装した後、ホイール共々車体に仮留めして感じを見てみます。取付けの構造は、キャリパーの重さを前側のスライドピンの2点で保持してキャリパー下のスプリングでアシストしている感じのようで、スプリングの張りが結構強い印象。

スプリングには、キャリパー下側のラウンドした部分が乗っかっているだけなのですが、上へ押し付ける力がかなり強くて、「左右のキャリパーピストンが微量に動く作用を妨げてはいないだろうか?」という疑問が湧きました。

前オーナーの三平さんからも、純正のブレーキはあまり効かないという話を聞いていた事もあって、自己責任で改造を試みることにしました。

ホイールとサポート部を組み付け、キャリパーとスプリングの作用具合を見ているところ。
これが張力が強めのキャリパー下から押すスプリング部材。アクスルと同軸のステーで固定されています。

実施したのは、スプリング張力を少しだけ低減させることと、スプリングがキャリパーを押す部分を従来の曲面から極力平面にすること。スプリングの頭の樹脂部材が安定するようにキャリパーボディをならし、キャリパー後端のピストン側を削り落として軽量化も図ってみました。

仮組みからキャリパーを外して加工にかかります。スプリングの当たる部分をマーク。
スプリング上の樹脂部品と面が合うように、キャリパー下部をベルトサンダーで0.5~0.8ほど削ってみました。
スプリング接触部を滑らかに加工後、キャリパー後端を削る準備。
写真はキャリパーが逆さまの状態。削っているのは車体後方部のキャリパーボディになります。

バナナキャリパー後端の車体表側は内側から見ると丸い穴が空いているのですが、そこは特に役割のない不要部分の模様。そこで、ピストンに近い部分の肉厚を残してアール状に削り落とし、全体と同じく黒の塗装をしておきました。制動力では大した効果は望めないでしょうが、作動性が少しでも良くなればというおまじないでもあります。

穴の空いたところが元々中空になっていた箇所。
穴の内側まで削ったところで、これ以上は追い込まずに整形の方向にしよう。
車体斜め後ろ下から見た外観。角を残さずに丸く整えてピストン外周部に合わせてみます。
キャリパー裏側の部材はだいぶ凹面気味な平滑度が整ってきました。

リヤサスの取付け部も我流に小加工してみる

外からは見えづらいチェーン裏側とスイングアーム内側の清掃もしておきましょう。

キャリパーの研磨や加工の一方、スイングアームも内側のしつこい汚れや錆を真鍮ワイヤーブラシで削ぎ落としました。すると、クローム表面のスイングアームはまあまあ綺麗になりました。

この作業の際、ふとリヤサスの取り付け部が目に入りました。スイングアームのサスの受け部分とリヤサス下側に、隙間がないんです。「あれ?」と思ってリヤサスを外してみると、スイングアームの受け部分にはリヤサスの当たっている痕跡が左右ともに残っていました。

しつこい汚れと錆は、真鍮ワイヤーとインパクトで時短処理。ここでリヤサス付け根に着目。
左も右もリヤサス下部がマウントに接触しているように見えます。
スイングアーム側のマウントの角には、サスの当たった打痕のようなものがあります。ここは削ってみよう。

サスが荷重を受けて沈むと、レイダウン角って少し変わると思うんですが、ここが当たっているという事は、荷重がかかってもサスが本来縮むべきところまで自然に沈んでくれていなかったのかもという疑惑が生まれました。そして、大柄なアメリカ人ではなく体重の軽い私が乗るとしたら、「余計にサスの入りが鈍くなるかも?」と考え、四角い断面のスイングアーム側サス受けの”角”を少し削ることにしました。

この部分を斜めに削って、サス底部の干渉ゼロをもくろむ。
斜め削りの後、サスの下側とは隙間が出来ました。

削った後はシルバーで補修塗りをしておき、サスを組み付けると、今度は隙間が見えるようになりました。今のハーレーモデルではこんな事はなく品質は良いと思うんですが、ショベルが生産されたAMF時代のハーレー(※)モデルは、当時から言われていたように仕上げが少々粗雑。以前もフレーム前部で、手を切りそうなバリのある箇所がありました。

※編集部注:1969年から1981年まで、アメリカの大手機械メーカーAMF(アメリカン・マシン・アンド・ファンダリー社)の傘下にあった期間のハーレーダビッドソンのこと。大量生産による品質低下と日本車メーカーの台頭で危機に瀕した、ハーレー歴史上の「不遇の時代」と言われています。

タンデムステップのステー受け。これも錆びてぶっきらぼうな四角い部材。
角を丸めて補修塗装をしておきます。
フォワードステップ取り付け部下側の鋭いバリ。怪我の元なのでこれも削って滑らかに加工。
加工に狂っていた週末、狩野溶接の社長が新しいバイクで遊びに来て、少し研磨のお手伝いをして下さいました。
ローターが若干レコード状に減り気味だったものの、偏った削りを避けるため400番で軽く研磨。
表面が荒れていたスプロケも一皮向いたらだいぶサッパリ。錆止めクリヤーを拭いておきました。
バナナキャリパーの補修パーツが到着。エキパイのガスケットも届きました。

やっぱりこのショベルが生産されたAMF時代のハーレーは、”田宮基準”とはだいぶ製造精度の違う”外国の古いプラモ”みたいな気がします。今ではそうした仕上げの見直し処理もまた楽しいのですが(いつしか重度なM気質になったかも……)。

こうして作業を進めているうちに、バナナキャリパーのリペア部品が届き、ピストンシールとダストシールを取り付け、パッド周辺に適切な油分を薄く塗布して復元を終えたので、次回はそれに関連してリヤのマスターシリンダーのチェック&整備に移行していきます。重要保安部品ですので慎重に進めます。(つづく)

左上のピンが、容易に交換出来る方の新品スライドピン。
内側は程々綺麗になっているので、新品のシール類を取り付けましょう。
ピストンシール、パッド、ピン。それぞれに合うようにワコーズやゾイルのグリスを使い分けて塗布し、取り付けていきます。
適宜油分を塗布し、ピストンシールとダストシール、キャリパーピストンの組み込みを完了。
ピストン側パッド裏に付くコレも、錆を落として錆止めをしておきました。
新品のパッド類。ブレーキグリスを適所に薄く塗り、キャリパーを確実に組めば完成。

文と写真●小見哲彦

著者プロフィール

小見哲彦(こみ・てつひこ)
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーを経験してバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。2021年からは、防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を依頼されている。

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