バイクライフ

【元白バイ隊員が教える】チョッパーカスタムで見かける、手動変速&足クラッチ、通称「ジョッキーシフト」は乗るの難しい? 合法なの?

ハンドチェンジ/フットクラッチは昔の変速方式。ジョッキーシフトはその現代版カスタム

今回は、バイク乗りなら一度は見たことのあるかもしれない「ジョッキーシフト」について書きたいと思います。

戦前や戦後間もなくまでは、多く使われていたバイクのハンドシフト。カスタムバイクの世界ではこれを現代風に変化させて、「ジョッキーシフト」と呼ばれるようになりました。ただし、現行のメーカー製市販車でジョッキーシフト車はもちろんありません。ショップやプライベートレベルでのカスタム例であり、ハーレーダビッドソン(以下ハーレー)をはじめクルーザー系カスタムモデルで見かけたことがあるかもしれません。

左足のペダルをクラッチ操作用に変更(フットクラッチ化)する一方、変速は左側のシフトシャフトから伸びたシフト棒で操作します。街なかで見かけると、すごく器用なことをしているので目が行きますし、けっこう操作が大変そうにも思えます。そして、このシフト方式、令和の公道で走っても違反にはならないのかも気になるでしょうが、そんなジョッキーシフトについて、元白バイ隊員目線で解説します。

1.ハンドシフト/ジョッキーシフトとは?

そもそもジョッキーシフトの名前は、競馬の騎手(ジョッキー)の姿勢・動きから来ているようです。バイクで変速をする姿が、馬上でムチを打つジョッキーのフォームと重なることからJockey Shift(ジョッキーシフト)と呼ばれるようになりました。

競馬のジョッキーがムチを打つ姿が似ているから、「ジョッキーシフト」!?

バイク乗りでも憧れている方の多いハーレーでは、昔はハンドシフト方式が純正採用されていたことで有名ですが、そのほか海外製クラシックバイクや、日本でも戦前などの陸王や目黒などでハンドシフトが採用されていたようです。

2.ジョッキーシフトと昔のハンドシフトはちょっと違う

現代のカスタムバイクで採用されているのが「ジョッキーシフト」ですが、クラッチを足操作で行うという点は共通(※一部クラシックバイクはハンドシフト&ハンドクラッチも存在)なものの、昔のハンドシフトとは、シフトレバーの位置が違います。

ジョッキーシフトは、シフトペダルを通常位置のシフトシャフトから直接延びるシフト棒に換装したもので、ライダー左側の少し後方に伸びています。一方、クラシックバイクのシフトレバーは、タンクの左横か車体左横の比較的高い位置に付き、リンクを介してチェンジシャフト部につながっていました。

ハーレーダビッドソンの単気筒車「モデル21(1926)。タンク左横にある変速レバーからリンクを介してミッションに繋がっている

昔のハンドシフトの方式は、クラッチ操作が重かった時代に、足でやったほうが力が入るからという理由でフットクラッチにし、変速は手動のほうが確実という風に考えられたのだと思います。

では、なぜハンドシフトはなくなってしまったのでしょう?

ナックルヘッドのVツインを搭載したハーレーダビッドソン「FL-47」(1947)もハンドチェンジ車。この後ハーレーでは次世代のパンヘッド(〜1965)まで、ハンドチェンジが純正で存在した

3.ハンドチェンジ、足クラッチの独特な操作方法

現代のマニュアルミッションのバイクが、ハンドクラッチ、フット変速なのはご存知でしょうが、技術の進化でクラッチが軽く操作可能になり、変速は足でラフに操作しても確実かつスムーズにできるようになったからだと思います。そして基本的にハンドルから手を外す必要がなくなり、安定してバイクを操れます。

一方でジョッキーシフトおよびハンドチェンジは、手足の動きが全く異なります。左足に装備されたフットクラッチを踏み込んでクラッチを切る操作を行い、発進のときはそこから徐々にフットクラッチを離して駆動をつなげます(クラッチミート)。そして、左手でシフトレバーを前後に操作してシフトアップ、シフトダウンを行います。

フットペダルを踏んでクラッチを切り、タンク横または横に伸びたシフトレバーを手で操作してガチャっとギヤを入れます。クラッチの操作はまるで四輪のマニュアル車のクラッチ操作のようです。スムーズに発進したり、シフトチェンジするには、慣れが必要です。

4.変速時は必ず片手ハンドルになる操作方法のため、実は危険!?

ジョッキーシフトは操作の途中で、ハンドルから手を離さなければならない時間があります。通常のバイクと異なり、シフト操作中は車体左側のシフトレバーを握るため、片手ハンドルになります。そのため、不意の路面状況の変化や急なハンドルのブレに対して対応が遅れる場合があります。

特に低速時は、片手運転になるとバランスを崩しやすいです。また、足によるクラッチ操作のため、慣れるまでは発進や停止、特に坂道発進は難しいとされています。やってみるとわかるのですが、ハンドルを片手のみで保持した状態での発進・停止は想像以上に難しいのです。

さらにシフト操作時は左手が塞がっている分、緊急時の運転操作が大幅に遅れる可能性も高くなります。

これらの理由などから、現代交通では危険性が高い操作方式と判断され、現行バイクでは採用されていません。ハンドクラッチ、フット変速のほうが明らかに安定して楽に走れるからです。

5.意外と存在するジョッキーシフトのカスタムバイク

操作性が良くないはずなのに、ジョッキーシフトを意外と見かけることも多いのはなぜなんでしょう。

実はハーレー自体生産台数が多く、今でも実動するオールドハーレーが残存していることと、チョッパーカスタム文化の中で、オールドスタイルへの憧れや好みもあって、ジョッキーシフトカスタムが施されたバイクを目にする機会も意外とあるのです。

また、比較的新しいモデルであっても意図的にチョッパーカスタムをして、ジョッキーシフト化しているバイクもあり、国産の一部車種用にジョッキーシフト化するコンバージョンキットが販売されているようです。

ハーレーのみならず、国産モデルの各車用にもジョッキーシフトキットが存在する。写真は通販サイトで扱われているカワサキ250TR用キット (※Webikeのショッピングサイトより)

6.ジョッキーシフト自体は、違反になるの?

白バイ隊員目線の本題に戻りますが、パッと見て違法カスタムにも見えてしまいがちなジョッキーシフトですが、結論として違反とはなりません。車検に関しても要件を満たしていれば通ります。

もちろん、白バイ隊員時代にも、ジョッキーシフトのバイクだからという理由で違反として検挙したことはありません。独特な運転姿勢や個性的なバイクのため取締り中はつい目が行きがちでしたが……。

ジョッキーシフトは、白バイ隊員にも注目される存在!?

7.違反じゃなくても、操作には細心の注意を!

ジョッキーシフトは違反にならないとしても、注意が必要となります。ジョッキーシフトは片手運転になる場面が通常操作のバイクよりも多くあり、この片手運転の操作時にミスが起こる可能性もあり得ます。

そして、仮にジョッキーシフトが原因となる事故等の発生があれば、安全運転義務違反(道路交通法 第70条)に問われる場合もあるかもしれません。

例えば、ジョッキーシフトの操作に不慣れで運転中にも関わらず前方ではなくシフト部を注視していた等の理由で交通事故を発生させてしまった場合等です。

前述のとおり、ジョッキーシフト自体は違反ではありませんし、その雰囲気には独特な格好良さがあると思います。そして操作方法にも、メカ好きのハートをくすぐる魅力がありそうです。

しかし、運転操作については、通常のマニュアル操作ができるバイクと操作体系が大きく異なるため、誤操作を起こしやすいとも言えます。ジョッキーシフトに興味があるという方は、格好良さの反面で慣れが必要で、通常のマニュアル操作のバイクとは異なった技術が必要となることも心に留めておきましょう。

文●睦良田俊彦  写真●モーサイ編集部

著者プロフィール

睦良田 俊彦(むらた・としひこ) 1986年北海道生まれ
趣味:クルマ、バイク

歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。
県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。

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