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もちろん二輪にも四輪にもディスクブレーキがあり……
どんなにハイパワーなエンジンを積んでいても、それに見合うだけの止まる能力がなければ、安心してスロットルを開けることはできません。二輪でも四輪でもブレーキ性能が重要といわれる所以です。
ブレーキシステムについては、大きくドラム型とディスク型にわけられます。両者の違いについてはご存じでしょうが、いずれにしても摩擦によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで車両を減速させるという基本は同じです。
単純に摩擦力によってエネルギーを変換するだけであれば、摩擦を生み出す面積を広くとれるドラムブレーキのほうが有利という説もありますが、スポーティなモデルになるほどディスクブレーキが使われるのは、これまた二輪と四輪で共通しているところでしょう。
その理由を大まかに言えば、ディスクブレーキのメリットは放熱性とコントロール性です。放熱性が高ければ連続したブレーキ使用での性能ダウンを抑えることが期待できます。
ブレーキのコントロール性というのは摩擦材(ブレーキパッド/ブレーキシュー)に押し付ける力を微妙に調節しやすいかどうかに左右されます。その点でドラムブレーキよりディスクブレーキのほうが有利といえるのです。
ディスクブレーキはキャリパーの固定方法で性能が変わる!
さらにディスクブレーキにおいても、ブレーキパッドを押し付ける動作を担うキャリパーの種類によってコントロール性は変わってきます。一般論でいうと、もっともベーシックな片押しフローティングタイプよりも、両側からブレーキパッドを押し付ける対向キャリパーのほうがコントロール性において有利とされています。
さらに対向キャリパーにおいても、取り付け方によってコントロール性が変わることは、多くのライダーが実感しているのではないでしょうか。
対向キャリパーの取り付け方には、車軸(アクスルシャフト)と同じ向きのボルトで固定されている「アキシャルマウント」と、車軸に対して放射状の向きで固定される「ラジアルマウント」の2種類に分類することができます。
コントロール性に有利なのは「ラジアルマウント」です。ボルトの方向とブレーキパッドを押す方向が90度異なっていることにより、キャリパーの支持剛性を高めることができます。これにより、ユーザーはブレーキ操作時にカッチリとしたフィーリングを得ることができるわけです。
昨今の二輪においては250ccクラスでもラジアルマウントを採用しているモデルが出てくるほどスポーツモデルにおいては必須といえるメカニズムですが、はたして四輪ではラジアルマウントの採用例はあるのでしょうか。
ラジアルマウント採用車の例:カワサキ ニンジャZX-25R
最高出力48馬力を発揮する並列4気筒エンジンを搭載し、倒立フロントフォーク、ラジアルタイヤ、クイックシフター、電子制御機構を採用するなど、スポーツ性能を追求した250ccスーパースポーツ。ブレーキはラジアルマウントキャリパーとなっている。
アキシャルマウント採用車の例:カワサキ ニンジャ250
ニンジャZX-25R同様に250ccのスーパースポーツではあるものの、価格を含め、どちらかと言うとベーシックなモデル。エンジンは並列2気筒で、フロントフォークは正立式、タイヤはバイアスタイヤとなっている。
日産 GT-Rは純正でラジアルマウントを採用する
結論からいえば、四輪でもハイパースポーツ級になるとラジアルマウントであることは珍しくありません。国産スポーツカーの象徴ともいえる日産 GT-Rのフロントブレーキは、ブレンボと共同開発した6ポットの対向キャリパーが採用されていますが、これはラジアルマウントとなっています。バイクでは2点で固定されていることが多いのですが、GT-Rの場合は3点で固定される凝った設計となっています。
ラジアルマウントよりアキシャルマウントのほうが低コストというのは四輪でもいえることで、対向キャリパーだからといってすべてがラジアルマウントというわけではありません。
ちなみに、レクサスのスポーツフラッグシップであるLC500シリーズにはトヨタ系サプライヤーのアドヴィックス製ブレーキキャリパーが採用されていますが、こちらはアキシャルマウントとなっています。GT-R同様、価格は1000万円級であってもラジアルマウントを採用していないことがあるのですが、それがユーザーの不満につながっているという話はあまり聞きません。
高級モデルはラジアルマウントのブレーキキャリパーであることが当然といった認識でいる二輪ユーザーのほうがブレーキシステムへの意識が高いということなのかもしれませんね。
日産 GT-R:ラジアルマウントキャリパー
レクサス LC500:アキシャルマウントキャリパー
以下はブレンボのチューニング用キャリパー。ラジアルマウントになっている。
レポート●山本晋也 写真●カワサキ/日産/トヨタ/山本晋也/八重洲出版
編集●上野茂岐