ヒストリー

【’80sバイク熱狂時代】NSR史上最高馬力! ライバルメーカーが恐れた1988年式NSR250Rとはどんなバイクか?(後編)

前編はコチラ

※本記事は別冊Motorcyclist2008年1月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

刺激と緻密のピュアブレンド

前編のウンチク(?)に続き、後編はついに’88年式NSR250Rの試乗をお伝えしていこう。
少し緊張を帯びつつまたがるが、第一印象はとても軽くてスリムだ。
レーシーと想像された乗車姿勢も、現行スーパースポーツのような前傾を強めたものに比べれば、ハンドルは近く座面に対して意外に高い位置にある。
しかも両足はカカトまでべったりと接地し、取っ付きから緊張感はほぐれてくる。

●140/60R18のリヤタイヤを収めるため、’87年モデルよりワイド化されたスイングアームを持つ

実に軽い踏みごたえのキック一発で始動したV型2気筒は、カランカランという乾いたサウンドを聞かせ、スロットルをひねると実に軽く吹け上がる。
軽いクラッチをつないでも、ピーキーという’88NSRの先入観を裏切るようにスルスルと進む。
PGMによるキャブと点火系、さらにはRCバルブの恩恵なのだろうが、エンジンは3000〜4000rpmといった低回転でもぐずつきもなく滑らかに回転上昇し、それが加速にきっちりと結びついている。
上体を前傾させ、スリムな車体を挟み込むような戦闘的な姿勢でも、「なんだ随分と普通(に使える)じゃないか」と、さらに緊張を弛緩させてくれる。

●フロントフォークはエアアシストタイプの41㎜径を採用。ブレーキキャリパーは異径対向4ポット、ディスクは276㎜径フローティングタイプをダブルで装備する

もっとスロットルをひねる。
5000、6000rpmと、鮮明に回転の鋭さを増していくエンジンが7000rpmを過ぎ、7500rpmを差した辺りから、尻がシートストッパーに押しつけられそうな加速感に変わる。
と同時に、カーンとした高音を奏でながら、回転計の針はどんどんとレッドゾーンの1万1500rpmに近づいていく。

●センターに位置されたタコメーターは、スポンジマウントされる。スピードメーターは別体式で、レース参戦にあたり簡単に取り外せる仕組みになっている。右側には水温計を装備

この急激な感覚変化、リッタースーパースポーツでも味わえないもので、それがそのままダイレクトに乗り手を高揚させる。
公称出力は45psだが、一説には出荷時でも50psは軽く超えていたとも、さらにはPGMにつながる配線を1本加工するだけで60ps超のフルパワーになるとも言われた’88NSRは、確かに刺激的だ。
そしてこれを走らせながら脳内にひらめいたフレーズは「’80年代のマッハ」だった。

●キットパーツを組み込み、簡単に出力を増大させることができた90度V型2気筒エンジン。フロントバンクに使用されるプラグは短い専用品を使用し、フォークのフルボトミング時に干渉するのを防いでいる。なお、サイドカウリングは6ヵ所のクイックファスナー方式で、簡単に脱着が可能だ

 

急激かつ刺激的な特性と同居する緻密さ。
半分はホンダ的であり、半分はホンダ的でない。

尖ったもの(特性)は安全マージンを見込んで、なるべく万人向けに丸める。
最終的にそうした特性に落ち着くイメージを(個人的に)私はホンダ製モーターサイクルに持っていたが(万人に扱いやすいことは悪いことではない、ただし通をうならせる方向にはなりにくい)、’88NSRには半分ホンダ的ではない匂いを感じるのだ。
だが’80年代マッハと言いつつも、半分は実にホンダらしい。
ピーキーさを強める前段の低中回転で、極力粗さを廃して滑らかかつリニアなレスポンスを味わわせる芸当は、当時のライバル(TZR、RGV-Γ)と比較しても突出しており、その緻密さは実にホンダ的だからだ。

以前、’94以降のNSRにも2度試乗したが、’88で感じられた低中回転の滑らかさはさらに磨きがかけられていた。
だが高回転までの鋭い回転上昇は味わえても扱いやすく丸められて(進化した台形カーブのパワー特性とも言われる)、あの’88のひょう変はなかったと思う。

そのひょう変=刺激的な力強さは、果たして本当に速いのか、それとも後の進化型NSRのほうがスムーズで速いのか、今回の試乗では比較することはできないが、この’88NSRが、2サイクル250レプリカの最も刺激的な部分と実質’80年代から始まった性能競争のなかで磨かれた洗練というものを、作為なく純粋にブレンドして見せたことは間違いない。

ワインディングでは高回転を踊らせて波に乗った走りを楽しみ、高速域ではトップ6速140㎞/h弱からパワーバンドに入り鋭く加速するという、250㏄現行モデルでは味わえない楽しさを改めて確認し、今の軽二輪市場では考えられないまばゆい競争が真剣に行われたいたことを、懐かしく思い出した。

 

Specification

1988 HONDA NSR250R

●エンジン:水冷2サイクルV型2気筒 クランクケースリードバルブ ボア・ストローク54.0×54.5㎜ 総排気量249㎤(㏄) 圧縮比7.3 気化器TA20 点火方式PGM CDI 始動方式キック

●性能:最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.8㎏ m/8000rpm 

●変速機:6段リターン 変速比①2.846 ②1.941 ③1.500 ④1.272 ⑤1.136 ⑥1.045 1次減速比2.360 2次減速比2.733

●寸法・重量:全長1985 全幅640 全高1105 軸距1355 シート高770(各㎜) キャスター24° トレール90㎜ タイヤF110/70-17 R140/60R18 乾燥重量127㎏

●容量:燃料タンク16.0ℓ オイル1.2ℓ

●当時価格:57万9000円(’88年1月19日発売)

 

あわせて読みたいオススメ記事はこちら!

アバター

モーサイ編集部

投稿者の記事一覧

1951年創刊のモーターサイクル専門誌。新車情報はもちろん、全国のツーリングライダーへ向けた旬な情報をお届けしています!

モーターサイクリストは毎月1日発売!

関連記事

  1. 【’90s名車列伝】“ライダーを育てるバイク” ドゥカティ・90…
  2. 第1世代Zの延長線上にあったZ1000J 誕生の舞台裏
  3. じつは初代スーパーカブの同窓生!? 昭和33年生まれのヒット商品…
  4. 【MCアーカイブ】ホンダNSR250R(1986年10月)
  5. 「セローらしさ」って何だ? 初代の構造に込められた“理念”
  6. 中古二輪車スペシャリストが選ぶ! いまなお高人気の平成生まれ7モ…
  7. 【遙かなるグランプリへ3】ホンダに続け! 偶然の出会いが生んだス…
  8. 歴史を彩った名車シリーズ SUZUKI GSX1100S KAT…

旅に出よう!

おすすめ記事

往年の名ライダーが来場するSUZUKA Sound of ENGINE2019のチケットは9月15日発売 【’80sバイク熱狂時代】スーパーカブとライバルたちが繰り広げた伝説の燃費No.1争奪戦 大人気アニメゆるキャン△の、「リンちゃんのサイドバッグ」がついに先行予約開始! 長く愛されるデザインとは? 初代スーパーカブも見られる「The Long Life Design Selection」が開催中 自分の愛車がタナックスカタログの表紙に!? 「2019 TANAX フォトコンテスト」開催!! 【’90s名車列伝】目指すはOVER300km/h! ’90年代最速マシンの象徴、ZZ-R1100の挑戦(後編) 春のツーリングに行きたい!全国お薦め旅先セレクション〜中国・四国編〜 “参加したい”がすぐ見つかる!2018バイクイベント情報!〜ライディングを基本から学べる Honda Dream モーターサイクリスト・スクール〜 【NEW ITEM】Alpinestars SMX-6 v2 BOOT 【’90s名車列伝】20年という歳月で「ZZ-R」が得たもの、失ったもの ZZ-R1100/ZZR1400比較インプレッション
BIKE王

ピックアップ記事

カテゴリー記事一覧

PAGE TOP