ヒストリー

【’80sバイク熱狂時代】平vs水谷の大バトル! バイク好き以外も魅了した、1985年の全日本ロードレース選手権

●最新鋭機を手に飛ぶ鳥を落とす勢いの現役チャンピオンへ、型遅れのマシンで戦いを挑む元チャンピオン。1戦ごとにドラマがあった。
ウォルター・ウルフカラーのウエアをまとった"東海の暴れん坊"水谷 勝が最新のYZR500を駆る平 忠彦を果敢に追いかける。
スピードの違いは明らか。しかし絶対に諦めない姿勢が、見る者の心を熱く打った。そんな戦いが、1985年の全日本ロードレース選手権にはあったのだ。

report●石橋知也

※本記事はMotorcyclist2018年1月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

好敵手の存在に沸いた全日本ロードレース 平vs水谷の大バトル!

角川映画「汚れた英雄」(82年12月公開)の主人公、北野晶夫(草刈正雄)は虚像だが、そのスタントマンだった平 忠彦は、北野以上にカッコいい実像だった。
ハンサムで長身で、寡黙。そしてヤマハファクトリーのエース。全日本ロードレース選手権を83年、84年と連覇し、3連覇を目指した85年。平人気は最高潮だった。

●80年代のレースシーンに君臨した名ライダー、平 忠彦選手。全日本ロードレース選手権500㏄クラス3連覇のほか、86年は世界GP250㏄クラス最終戦で見事な勝利。90年には悲願の8耐優勝も飾る

一方のライバル水谷 勝は、真逆の存在だった。
強大な敵に、不利を承知で真っ向勝負を挑む一匹狼。82年の全日本ロードレース選手権国際A級500ccクラスで破竹の7戦全勝を達成したが、スズキのワークス活動は83年で終了。84年よりプライベーターとして参戦していたが、85年からスポンサーに石油王のブランド、ウォルター・ウルフが付いた。
ただ、水谷のチームはスズキファクトリーではなく、水谷と監督、水谷の個人契約メカニック1人の計3人だけだった。

マシンも平のYZR500・0W81は、世界GPを戦うエディ・ローソンと同じ最新鋭機。

●名機の誉れ高いYZR500(0W81)

対して水谷のRGΓ・XR70は、82年型XR45の改良型で、パワーも操縦性も劣っていた。
それでも彼は諦めない。そして対決構図を水谷はわざわざ演出した。
クールな平に対して、おどけたポーズとビッグマウス。勝てないと「待ってろタイラ!!」とやるのだ。

●82年に全日本RR選手権500㏄クラスで7戦全勝し、チャンピオンを獲得した水谷 勝選手。85年の愛機RGΓ(XR70)はすでに時代遅れとなったスクエア4エンジンを搭載していたが、ファインチューニングで戦闘力を維持した


85年の全日本GP500は全9戦で、平は4連勝を含む5勝。文句なしの3連覇だった。
一方水谷は平が転んだ菅生で1勝しただけ(残り3戦はスポット参戦したGPライダーのワイン・ガードナーが優勝)。
だが、ちょっとでも水谷が平を抜けば大歓声(どちらのファンからもだ)。観客数は、その水谷が勝った菅生で3万人、最終戦の鈴鹿では6万人が集まった。
80年代全日本は、世界でも例を見ない高度で巨額な費用が投入された、特別な国内選手権だったのである。

そして現在、トップカテゴリーであるJSB1000もまた、依然高いレベルを誇るレースが展開されている。しかし、一般人に近いライダーをも巻き込んで夢中にさせるパワーまでは持ち得ていない。

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