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国内初のフューエルインジェクションモデル、ターボモデルまで誕生した空冷並列4気筒の系譜

カワサキは海外戦略車の大型4サイクル車Z1(900Super Four)、国内版のZ2(Z750RS)で成功を収めたものの、さらにラインアップを強化するねらいでZ1ジュニアの位置づけのZ650を1976年に投入。カワサキのいわゆるザッパー系モデルの元祖といわれる同車は、軽さとコンパクトさの利点を活かし、「ナナハンを凌駕する高性能車」との評価が高まった。
その後もザッパー系の空冷並列4気筒DOHC2バルブエンジンが息長く続いたことは前編でも紹介したとおりだが、排気量拡大(652→738cc)によってナナハンモデルとしてラインアップされ、さらにパワーアップが図られていく。
そうしたプロセスの中で、カワサキは国内初のフューエルインジェクションモデルZ750GPを登場させる。発展途上的なメカニズムだったカワサキ独自のFI機構「DFI(デジタル・フューエル・インジェクション)」は、この一代限りで一旦退場となったが、その後には同エンジンをベースにしたターボモデルも登場。
そして、高性能路線を水冷エンジンモデルに譲って以降、ゼファー750に代表されるスタンダードネイキッドも生まれるなど、エンジンの水冷化が主流となった後も、このミドル空冷4発が長く生き残ったのは特筆すべき点だった。

【1982~2007】カワサキ・ザッパーモデルの系譜:Z750GP~ゼファー750ファイナルエディション
1982:Z750GP

アナログからデジタル、マイコン時代の到来を象徴する機種と言えばZ750GPだろう。何と言ってもDFI=デジタルフューエルインジェクションを搭載したモデルとして有名だ。燃料噴射装置はそれ以前、輸出向けにZ1000HやZ1100GPなどがあったが、国内向けにはこれが初となった。
機種記号はZ750-V1。Z1100GP同様、1982年型からはエアフローメーターを廃止して各部センサーで検出した数値を8ビットマイコンにて演算、4連インジェクターの燃料噴射量を決定する方式に改められた。これにより冷間時、また山間部などでも最適な過度特性が得られ、また省エネルギーにも貢献する……がうたい文句であった。
メーターも液晶表示の燃料計、各種警告灯や電圧計を内蔵した豪華仕様で、シリーズ初のセパレートハンドルも装備。角型基調の外装やヘッドライトも新しく、ホイールベースも先代のZ750FXIIIから35mm延長された。
ただし価格は従来型より11万円も高価で、またトラック無線などが発する強力な電波障害に弱く、国内ではDFIを1年限りで撤退させている。車体色は当初ファイアクラッカーレッドのみで、6月1日にエボニーを追加(価格は同じ)。






【Z750GP主要諸元】
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク66×54mm 総排気量738cc 圧縮比9.5 燃料供給装置:フューエルインジェクション(DFI) 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力70ps/9500rpm 最大トルク6.0kgm/7500rpm 燃費32.0km/L(2名乗車時60km/h)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.333 2速1.631 3速1.272 4速1.040 5速0.875 一次減速比2.550 二次減速比2.538
■寸法・重量 全長2170 全幅780 全高1130 軸距1460 最低地上高140 シート高800(各mm) キャスター27° トレール107mm タイヤサイズF100/90-H19 R120/90-H18 車両重量216kg
■容量 燃料タンク21L オイル3.5L
■発売当時価格 64万5000円(1982年4月1日)
1983~:GPz750/F

歴代で車体やスタイリングに最も大きな変革があったのは、このGPzだろう。機種記号もZX750-A1となった。フレームはスチール製ダブルクレードルタイプで、新型のミクニBSキャブを備えたエンジンはラバーマウントされた。これに組み合わされるリヤサスペンション機構はユニトラックと名付けられ、リンクを介してショックユニットの伸縮行程を短くする事で衝撃吸収性や路面追従性を高めている。ダンパー自体も4段階に調整が可能で、スイングアームもアルミの角型パイプにグレードアップ。37mm径のフロントフォークには3段階調整可能なアンチダイブ機構を備え、また左右を連結したエア加圧式とされた。
そして前輪もついに19インチと決別、18インチを採用してディメンションも変更。ハンドリングは軽やかに、しかし軸距を伸ばし安定性も確保している。車体色はスターライトブラック×ファイアクラッカーレッドとギャラクシーシルバー×ノクターンブルーで、2種類のツートーンカラーを用意。




【GPz750主要諸元】
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク66×54mm 総排気量738cc 圧縮比9.5 燃料供給装置:ミクニBS34 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力72ps/9500rpm 最大トルク6.3kg-m/7500rpm 燃費32.0km/L(2名乗車時60km/h)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.333 2速1.631 3速1.272 4速1.040 5速0.875 一次減速比2.550 二次減速比2.533
■寸法・重量 全長2190 全幅720 全高1260 軸距1495 最低地上高160 シート高800(各mm) キャスター26° トレール99mm タイヤサイズF100/90-H18 R130/80-H18 車両重量217kg
■容量 燃料タンク18L オイル3.5L
■発売当時価格 66万円(1983年3月)
1984~:750TURBO

海外では市販の2輪用ターボキットが70年代から存在し、北米市場においてはそれを装着した完成車がZ1-R TCとしてディーラーで販売され、またBMWやポルシェ、国産車にも相次いで4輪ターボ車が普及。80年代初頭には日本の4メーカーすべてが輸出向けにターボ車を発売した。
カワサキ製のターボが公式に発表されたのは81年秋の東京モーターショーで、この時は市販型と異なるいかにもプロトタイプ然としたスタイルだったが、すでにDFIやアンチダイブ、リヤのユニトラックサス、液晶モニターなどの新機構が考案されており、最高出力も110psと発表された。
エンジンはGPz750を基に内部伝達系がサイズアップまたは材質変更により強化され、ギヤ比も変更。日立製HT-10型ターボユニットは排気管長を最短とするためエンジン前方に配置、DFI採用により低中速トルクとレスポンスを確保し、高回転域で強大なパワーを得られるセッティングとして市販型では最高出力112ps、最高速度は235km/hと発表された。
市販車の発表は1983年4月26日から28日にオーストリーのザルツブルグで、また国内での媒体向け試乗会は5月にFISCOで行われた。結果的にカワサキがターボ最後発となったが1984年型としてすでにGPZ900Rがあり、その登場は遅きに失したと言える。だが750ccとしては驚異的な動力性能を獲得し、ターボの有効性を最も強く証明、一石を投じたモデルとしての意義は大きい。機種記号はZX750-E1。



【750TURBO主要諸元】
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク66×54mm 総排気量738cc 圧縮比7.8 燃料供給装置:フューエルインジェクション(DFI) 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力112ps/9000rpm 最大トルク10.1kgm/6500rpm 最高速度235km/h
■変速機 5段リターン 変速比1速2.285 2速1.647 3速1.272 4速1.045 5 速0.833 一次減速比1.935 二次減速比3.066
■寸法・重量 全長2220 全幅780 全高1240 軸距1460 最低地上高152 シート高780(各mm) キャスター28° トレール117mm タイヤサイズF100/90-V18 R130/80-V18 車両重量233kg
■容量 燃料タンク18L オイル3.5L
■発売当時価格 輸出車(1984年型)
1990~:ZEPHYR750/RS

ゼファー750は1990年夏に発売。その前年に登場、大ヒットを巻き起こしたゼファー(400)に続くシリーズ二作目で、立ち位置としては国内最速のスポーツモデルではなく新カテゴリーのネイキッドモデルである。エンジンはGPz750F以来の空冷4気筒を継承するが、全体的なイメージはZ1あるいはZ2にオーバーラップさせ、カムカバーやメーター、灯火系、外装も丸型基調でデザインされており、いわば平成のZ2復刻版と呼べる存在だ。
機種記号はZR750-C1、初期型の塗色はキャンディアトランティックブルーのみだった。メカ的には非常にオーソドックスで新機構などはないが、ほとんどのパーツは新作で、ホイールは前後17インチ、41mm径正立フォーク、アルミスイングアーム、リザーバータンク付きリヤショックなど現代的な足まわりを備え、オイルクーラーやMFバッテリーも標準採用。過不足のない装備と普遍性の高さが人気を博すとともにブームはいよいよ波に乗り、1992年にはシリーズ最高峰の1100も投入された。



【ゼファー750主要諸元】
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク66×54mm 総排気量738cc 圧縮比9.5 燃料供給装置:ケーヒンCVK32 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力68ps/9500rpm 最大トルク5.5kgm/7500rpm 燃費37.5km/L(2名乗車時60km/h)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.333 2速1.631 3速1.272 4速1.040 5速0.875 一次減速比2.550 二次減速比2.437
■寸法・重量 全長2105 全幅770 全高1095 軸距1450 最低地上高150 シート高780(各mm) キャスター28° トレール107mm タイヤサイズF120/70-H17 R150/70-H17 車両重量200kg
■容量 燃料タンク17L オイル3.6L
■発売当時価格 65万9000円(1990年8月20日)
1999~:ZR-7/S

1996年秋から免許制度が改正され、大型二輪車の需要が激増。そこへ投入されたナナハンネイキッドがZR-7で、エンジンはゼファー750と同系の空冷4気筒ながらカムカバーデザインをかつての角型に戻し、さらに現代的なスタイリングとリヤにはモノショックが与えられた。キャブレターもゼファー同様のCVK32だがK-TRIC(Kawasaki Throttle Responsive Ignition Control)を備え、マフラーもZX-9R譲りの4into1を装着した。
軸距はゼファーと同一ながらキャスター角25.5°、トレール量93mmはかなりスポーティで前後にZRラジアルタイヤも採用するが、スイングアームは角断面スチール製。また燃料計やセンタースタンドを備えるなど実用面にも優れ、オプションでパニアケースも用意された。機種記号ZR750-F1、初期型の塗色はメタリックシャンパンゴールドとキャンディライトニングブルーの2色。なお、同車がザッパー系4気筒エンジン搭載車として最後発だが、ZR-7は2004年で国内ラインアップから退場、途中から登場のハーフカウルモデルZR-7Sは2006年まで存続した。

【ZR-7主要諸元】
■エンジン 空冷4サイクル並列4気筒DOHC2バルブ ボア・ストローク66×54mm 総排気量738cc 圧縮比9.5 燃料供給装置:ケーヒンCVK32 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力73ps/9500rpm 最大トルク6.3kgm/7500rpm 燃費37.5km/L(2名乗車時60km/h)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.333 2速1.631 3速1.272 4速1.040 5 速0.875 一次減速比2.550 二次減速比2.250
■寸法・重量 全長2105 全幅755 全高1075 軸距1450 最低地上高130 シート高800(各mm) キャスター25.5° トレール93mm タイヤサイズF120/70-ZR17 R160/60-ZR17 車両重量202kg
■容量 燃料タンク22L オイル3.6L
■発売当時価格 66万5000円(1999年3月15日)
文●高野英治、モーサイ編集部・阪本一史 写真●八重洲出版アーカイブ
【カワサキ・ザッパーの系譜】Z650からゼファー750ファイナルエディションまで「Z650~Z750FX-III」
https://mc-web.jp/archive/157584/





































