バイクライフ

【ヤマハSDR(200)にセローエンジンをドッキングしたSDR−F号!】プライベーターが作った超変わり種バイク(後編) 

■タイトル写真:違和感のない仕上がりを見せる本田さんオリジナルのSDR-F

ヤマハの異色2ストネイキッド+人気トレッキングモデルの合体

ラメ塗装の際立つ左後方からのアングル。ホンダの市販レーサーRS125R用のホイールがレーシーです

前編で、スズキのボルティにまさかの2スト・RG250ガンマのエンジンを積んでみたり、ホンダの市販レーサーRS125Rのフレームを生かしたユニークな車をを製作した本田 久さんの作品をご紹介しました。しかし、私(カメラマン小見)が個人的に特に”推し”だったのは、今回ご紹介する2ストのスポーツ車ヤマハSDR(1987年)をベースに4ストエンジンに換装した「SDR-F」なのです。

この車両を製作したのはかなり昔とのことで、存在をご存知の方もいるかもしれません。筆者の小見も「X」などへの氏の投稿をだいぶ前に見て、その車両の存在を知っていました。しかし、実物の細部を見ると、やはり一見の価値ある力作でした。

元々スリムでスポーティなSDRを好んでいた、当時24歳だったという本田さん。歳を取っても乗れて、見ても所有しても楽しいバイクを作ってみたいと考えていたそうです。そして27歳になった頃のあるとき、不要となり引き取り手を探していたセローと巡り合ったそうです。

前編で紹介したように、本田さんの職業は金属の精密加工。そこで、以前から持っていたSDRの車体に、セローエンジンを積めないかと画策。エンジンを搭載するためのマウントほか、取り付け箇所に適したアルミ材やカーボンを使用して(スプロケまで自作!)このバイクを作り上げたのだそうです。

オフモデルDT200Rベースのエンジンを、特殊メッキを施された専用のトラスフレームに搭載しコンパクトかつ軽量な105kg(乾燥)にまとめられたSDRは1987年に登場

■鮮烈な印象を与えてデビューを果たしたヤマハSDR。当時のゼロハンスポーツ並みにスリムかつコンパクトな車体に割り切ったシングルシート、そして目を引く専用のトラス状フレームとスイングアーム。ヤマハ独自のデザインセンスを感じさせ、今なおファンは存在するものの、1980年代後半当時の高性能路線からは外れていたこともあり、短命に終わったモデル。

独特なSDRシャシーに、自作マウントステーでセローエンジンを搭載

細部を含めて手を入れた箇所を教えてもらったところ、ほとんどカスタムショップ並みに考えられた部品を製作して、エンジンの換装や重心位置の変化に対応した改造が為されていて、実に立派なものでした。

また、ドゥカティ愛好者らしく、塗装に際してはベベル世代のドカらしい大粒のラメを入れたシルバーを苦心して自家塗装しています。筆者がかつて長らく撮影で関わっていたメンテ専門誌の編集長が、ベベルギヤ駆動のドゥカティ900SSを所有していたのをよく見ていたこともあり、晴天の空の下で輝くラメに、馴染み深いトーンだなぁと思わず見入ってしまいました。

この塗装は、ラメの粒が大きいため標準的なスプレーガンでは塗装が難しいはず。作業工程ではけっこう苦労されただろうと拝察します。

そして、実走の初期段階では、重心がやや前寄りになっていたように感じ、本田さんはフロントフォークのセッティングも変更。プリロードを少し高めにかけて、ダイブするスピードや単位あたりの時間に沈む量を調整されたそうです。

このクラスの軽二輪のシングルエンジンには筆者も少し思い入れがあり、筑波サーキットで開催されていたNS2クラスに、かつてポンコツのヤマハSRX250を直して出走し楽しんでいた時期がありました。そのため、本田さんが製作した軽妙な4ストのシングルエンジンと、見栄えが良くスリムなトラスフレームのSDRの組み合わせに感じ入るものがありました。実は筆者も、こんな構成のモデルをヤマハさんに実現してほしかったのかもしれません。

かくして、本田さんが腕を奮って製作された「SDR-F」は、本田さんの若い頃のコンセプト通りに仕上げられたのでした。

ヤマハSDRの独創的なフレーム

■特長的な鋼管ダブルクレードルフレームは「タンクレールとテンションパイプの間をトラス(桁組)形状にパイプで結ぶことで縦剛性を、またヘッドパイプからリヤアームのピボット軸に向けて直線的に短い距離で結ぶことでねじれ剛性を高めた」とリリースに紹介され、リヤアームもトラス構造として強い印象を残していました。しかし「アルミデルタボックスのように、幅のある左右のメインセクションだけで“曲げ・ねじれ剛性”を確保することができず、幅の狭いSDRはフレーム上面に補強プレートを設けて左右を結び、エアクリーナーボックスを補強メンバーにする」など、相応の苦心があったと開発陣は語っています。

年齢を重ねてからも乗りやすい仕様にと、移植されたのがセロー225のセル付きエンジン。写真はセル初装備のほか、タンク容量の拡大(7.6L→8.8L)などで人気を得た1989年型のセロー225

本田さんオリジナルのヤマハ「SDR-F」各部紹介

ヤマハセローの225ccエンジン(セル付き)を抱え込んだフレーム主要部分の状態。SDRの鋼管ダブルクレードルフレームの上側を生かしつつ、下部のマウントをセローエンジン搭載用に大幅改造
スピードメーターの取り出し変更と製作されたエンジンマウントの見える左側動力部
セルモーター部分の逃げも考えて製作された、アルミ削り出しの前側エンジンマウント
エンジン背後にブローバイのキャッチタンクを配置。見事なエンジンマウントも確認できます。ブレーキマスターはホンダNSR50用に変更
ケーヒンPWK-28にK&Nパワーフィルターを装着したキャブレター周辺。オイルキャッチタンクをエンジン背後に設けたのは、この構成にしたためでしょう
カーボンパネルに取り付けたメーターは、ドゥカティ400SSからの流用。さりげなく見えているステアリングステムはA2017材を使ったワンオフのトップブリッジ
フロントブレーキにはブレンボ製キャリパーを採用し、サポートは7075材で製作。ローターはヤマハTZR250(3MA)からの流用
トガシエンジニアリングで調達したカーボンパイプを使い自作したサイレンサー。走破性を重視してか、やけにしっかりしたスイングアームが目を引きます
カーボン製のサイドカバーに付けられたエンブレムは銅板を採用し、経年変化をも楽しめるように考慮。この発想はシブい
マニアックなベベル・ドゥカティの愛好家も唸らせそうなシルバーのフレーク塗装の仕上がり
4ストエンジン化した事でミラーの振動に変化が出て、その対策としてミラー取り付けの可能なマスターシリンダーの後方クランプを製作。オーナー”久”氏の刻印が入ったこだわりの削り出し部品
「何用のスイングアームだろう?」と思ったら、なんと’88年型のヤマハ市販レーサーTZ250用! 補強を取り去ってシンプルな構成になったものの、この車体には必要十分な剛性でしょう
’91型RS125R用ホイールに付けられた自作のスプロケにも”久”マークの刻印が!
前編で紹介した変わり種カスタム2台と、今回紹介のSDR-Fを製作した本田 久さん。良い車を見せていただきありがとうございました

Report&Photo●小見哲彦

著者プロフィール

小見哲彦(こみ・てつひこ)
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーを経験してバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。2021年からは、防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を依頼されている。現在当ウェブで「ハーレーショベルヘッドのFXSローライダー再生記」「ホンダ・エイプカスタム記」などを連載中。

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