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【三ない運動の何が問題なのか?(1)】バイクを「高校生に触れさせない」だけでは教育にならない

三ない運動の“功罪”について専門家へインタビュー

「三ない運動」をご存じでしょうか。1970年代後半から始まった社会運動で、当時多発した高校生のバイク事故を防ぐことなどが目的。バイクに関し「免許を取らせない」、「買わせない」、「運転させない」といった3つのスローガンが掲げられたことから、「三ない」という通称がついた運動です。

ところが、高校生のバイク事故が減少した現在でも、この運動が続けられているのはなぜでしょうか? また、実際に高校生の教育に役立っているのでしょうか? 近年「三ない運動」を再考している埼玉県で開催された「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」稲垣具志会長へインタビュー。運動の功罪について解き明かします。


教育現場関係者からは評価されてきた

三ない運動という社会運動は、PTAという保護者からなる組織によって全国的に拡大され、その過程で、各都道府県の教育委員会が教育・指導方針として学習指導要項に取り入れるなどしたことで、各高校の規則・校則に取り入れられていった。

全国高等学校PTA連合会が全国的な展開をやめた今でも、各高校の校則から三ない運動に関する記述が無くならないのは、三ない運動が「生徒をバイク事故で死なせない」という点において、教育現場関係者から評価されてきたからだ。

しかし、社会情勢や交通情勢が変化し、選挙権年齢も18歳以上に引き下げられるなど“大人”というものの概念すら変わりつつある今、様々な足かせとなっていることも指摘されている。

三ない運動の何が良くて、何が悪かったのか? その功罪を埼玉県の検討委員会で「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」で会長を務めた中央大学研究開発機構准教授(インタビュー当時は日本大学理工学部交通システム工学科助教)の稲垣具志氏にお話を伺った。

中央大学研究開発機構准教授の稲垣具志氏(検討委員会が開催されたインタビュー当時は日本大学理工学部交通システム工学科助教)

三ない運動は当時の緊急措置

三ない運動というのは、歴史的に考えるなら緊急措置なんです。当時は、とにかく対策を打たないと高校生が死んじゃいますよと。暴走族が社会問題化したり無謀な運転で命を失うことがあったから、緊急措置としての三ない運動には非常に意味がありました。これは高く評価すべきです。

一方で、現在は三ない運動の効果が出てきて死者も減り、社会情勢も変化しています。
約30〜40年前に行った緊急措置が、現在の交通社会の安全を考えるにあたってふさわしいかどうかを再検証する必要があるはずです。

日本の安全教育は消極的

日本の交通安全教育というのは、けっこう消極的で、すごく対象者を守ろうとします。
例えば、ガードレールや信号機を作ることは、子供たちをほかのクルマなどから守るという意味では功を奏しています。

ところが、守られた子供たちが実際の交通社会の中でどういった所作で動くべきなのかなど、(自己防衛のための行動に関する)教育の機会が失われている状況なんです。

小学生の集団登校で言うと、上級生が下級生を見張っているという程度。イギリスでは、集団登校は「Walk In Bath」と言って、その中で交通安全教育を体系化しています。
役割演技法を用いて上級生が下級生に対して「ここはどういうことに注意すべきか」「こういうことは絶対にやってはならない」ときちんと教えるんです。こうすることで双方の意識が高まります。

教育の主体が子供ではない

三ない運動も同じです。バイクを高校生に触れさせないことで、(バイクの事故から)守られてはいます。
ですが、三ない運動をやることが、教育に乗っかる子供たちの何かしらの成長に寄与することが行われているのであれば構わないですが、ただ単に、バイクに乗る機会を3年間遅らせるためだけのものだったら意味がない。

教育する側が、「私が面倒を見ないといけない3年間は、この子らはバイクで事故に遭うことはありません」といった姿勢では、主体が、教育を受ける子供たちになっていません。
どちらかと言うと、管理する側の視点で言っているものなのです。高校生が生涯に渡って事故の当事者とならないために必要なことは何なのかを考える必要があります。

<第2回目に続く>

「実際の交通社会の中でどういった所作で動くべきなのかなど、教育の機会が失われている」と稲垣具志氏

*本文中の( )内は編集部注

レポート&写真●田中淳麿 編集●平塚直樹

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