ドゥカティのラインアップの中でも、好調なセールスを記録しているムルティストラーダ950がモデルチェンジ。同時に上級仕様「S」が追加された。スペインのバレンシアで開催された国際試乗会では、「S」に搭載される電子制御サスペンションの実力に迫った。
report●鈴木大五郎 photo●DUCATI
万能性がさらに際立つ
ドゥカティのアドベンチャーマシン、ムルティストラーダは今や多数のバリエーションを持っている。その中で最も排気量が少なく、エントリー向きとされていた950がモデルチェンジを行った。
パッと見にはサイドカウルのデザイン変更程度だが、前後ホイールのデザイン変更と軽量化、スイングアームの軽量化、クラッチが油圧式となるなど、細かいアップデートがされている。しかし、最大のトピックは上級仕様「S」バージョンの追加である。ムルティストラーダシリーズの代名詞ともいえる電子制御サスペンション「スカイフック」は1260の「S」と「エンデューロ」のみの装備だったのが、950でもそれが味わえるようになったのだ。

●ムルティストラーダ1260Sから多くの機能を受け継ぐ950S。電子制御サスペンションのほか、クルーズコントロール、クイックシフター、LEDコーナリングライトなどを搭載。グレーの車体色が選べるのもSのみの特徴だ
この950S、とにかく乗り心地が良い! 欧州特有のバンピーな道を走り始めた直後に感じたのはそれだ。リニアでスポーティだった950をワンランク高級なマシンに仕立て上げてくれていた。
午前中はオプションのスポークホイールを装着し、パニアケースも装備したツーリング仕様をテスト。走行ペースもツーリングシーンを想定したのんびりしたものであった。19インチのフロントホイールが持つ穏やかなハンドリングとともにダンピングの効いた足周りを味わい旅気分を満喫したが、午後はキャストホイールのスタンダードな950Sをテスト。重装備からの乗り換えということもありより軽快さが際立つのであるが、従来モデル比で施された軽量化の恩恵もあるだろう、特にスポーツモードを選択すると、全体的に締め上がる減衰力設定もあって、長めのサスペンションストロークを感じさせないリニアな感触。午前に比べ走行ペースも上がった。
パワフルでトルクフルなエンジンは、さほど回転数を上げない走りでも何ら問題ないものの、やはりちょっと回転を上げ気味にして走らせると楽しさが増していく。それは、アドベンチャーマシンを操っているという感覚から、ドゥカティらしいスポーツバイクを操っているという感覚への変化と言えるだろう。
そしてそれはスポーツ/ツーリング/アーバン/エンデューロの4つの特性を1台で体感できる、〝4バイクス・イン1〞をコンセプトとするムルティストラーダらしさが、「スカイフック」の装備によってより明確になった。ムルティストラーダのシリーズ中で950は個人的に最も気に入っていたマシンだったが、「S」は豪華さをウリとしたものではなく、その装備は走りの豊かさを生むためだったのが嬉しい。

●電子制御の「ドゥカティ・スカイフック・サスペンションEVO」は慣性計測装置、加速度センサー、ABSの情報を検知し、セミアクティブに前後サスペンションの減衰力を調整する。また走行モードやタンデム、積載など走行条件に応じた調整も簡単に可能だ

●「S」はメーターが5インチのフルカラー液晶となる
日本の多様な道、様々な走行条件においても、950Sはジャストフィットすること間違いない。
RIDING POSITION
リラックスできるアップライトなライディングポジションは従来モデルから変化なし。840㎜のシート高はこのジャンルにとって標準的だ。決して足着きがいいとは言えないが、タンク後端やシートサイドがスリムなことに加え、車重が軽いので不安感は少ない。ライダーの身長は165㎝
グッドバランスな乗り味と装備
FAVORITE
電子制御式サスペンションで走りに高級感が出た。また、走行シチュエーションに応じたセッティングがイージーにできる点も○。スタンダードに対する価格の差も装備を考えるとむしろ割安感があるし、1260シリーズと比べても〝格下感〞がない。ウィンカーのオートキャンセラーもとても便利だった。
REQUEST
支持されているスタイリングを変える必要はなかったのだろうが、モデルチェンジ感は少々薄い。個人的にはフロント19インチホイールの乗り味が好みだが、前後17インチホイール仕様もあってもいいかも。スポーティさと表裏一体であるが、エンジンは少し振動の多い回転域がある。

●「テスタストレッタ11°」と呼ばれる937ccエンジンは、スリッパークラッチに油圧制御を取り入れ、レバー操作量を軽減。性能面でスタンダードと「S」に違いはない
MULTISTRADA950S
■Specifications[]内はスポークホイール仕様
【エンジン・性能】種類: 水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:94.0×67.5㎜ 総排気量:937㎤ 最高出力:83kW<113ps>/9000rpm 最大トルク:96Nm<9.8㎏ m>/7250rpm 変速機:6段リターン 燃料タンク容量:20L
【寸法・重量】全長:─ 全幅:─ 全高:─ ホイールベース:1594 シート高:840(各㎜) タイヤサイズ:フロント120/70ZR17 リア170/55ZR17[170/55R17] 車両重量:230㎏[235㎏]
【カラー】灰、赤
価格●196万5000円(赤)/ 200万5000円(灰) 発売時期●6月予定
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