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■R12G/Sライト・ホワイト
伝統のオン・オフモデルをオマージュした「G/S」=ゲレンデ/シュトラッセの車名


ご存知のように、BMWの旗艦アドベンチャーモデルはR1300GS/アドベンチャーで、その下位機種にF900GSがある。そして先ごろ登場したR12G/Sは、排気量的にも重量的にも中間に位置するモデルだが、車名の表記はGSではなくG/Sだ。
それぞれドイツ語の頭文字を当てたものだが、G/Sはゲレンデ(オフロード)・シュトラーゼ(ストリート)の意味で、オフロードとオンロードの性能を融合したモデルという意味が込められ、1980年に登場したR80G/Sがその始祖である。
その後BMWは1980~1985年にかけ、R80G/Sベースのマシンでパリ・ダカールラリーに参戦。81、83、84、85年に総合優勝を飾るなど、2バルブOHVボクサーツインのラリーでの安定した走行性能という強みを発揮し、不動の人気を獲得することになる。
85年を区切りにダカールラリーへの挑戦を一旦終了した後も、BMWのオンオフモデル(この当時はまだアドベンチャーモデルの名称はなかった)の人気は高いままで、87年には80G/Sから排気量を拡大したR100GSが登場。このときにGSへと改名が行われたのだが、/=スラッシュが取れたGSは元祖の意味と異なり、GS=ゲレンデシュポルト(オフロードスポーツ)の意味になったという。
とはいえ、語源が微妙に変わろうとも、BMWのオンオフモデルのスピリッツは継承されて今に至るのだが、R12G/Sは、元祖R80G/Sへのオマージュと伝統的な空油冷ボクサーツインのエンジン形式で、今一度オン・オフの素の楽しさを本気で盛り込んだという意思を、車名で表明したのだろう。
ちなみに、車名にG/Sを入れた例では、先代RnineTをベースにしたRnineTアーバンG/S(2017)が先にあるものの、今度のG/Sは「都会のG/S」という断り(!?)の入らない、紛れもないR80G/Sのオマージュモデルと言えるだろう。

前輪21インチで長いサスストロークを確保し、R12G/Sは本気のオンオフ性能を両立

R12G/Sの注目ポイントは、オフ走破性を意識したフロント21インチホイールの採用と、前210mm/後200mmと十分なストロークを確保したサスペンションだ。参考までに記せば、17年に登場したアーバンG/Sはフロント19インチホイール採用で、サスペンションは前125mm/後140mm。前輪をベースのRnineTから2インチ大径化の19インチ化しているとはいえ、サスストロークはわずかな延長に過ぎない(RnineTは前後120mmストローク)。
アーバンG/Sを上回る車体の伸長化はR12G/Sの本気のオフ走破性を想像させるし、実際それに対応してR12シリーズがベースのフレームは、G/S専用にステアリングヘッド部を改変。さらにフロントフォークはアクスル部をオフセットさせ、ストローク量を多くしつつトレール量を増やしてオン・オフでの走行安定性を確保。一般に「リーディングアクスル」とも言われるこの配置は、一部アドベンチャー系モデルのほか、エンデューロ系モデルにもよく使われる方式だ。
これに加えて、R12G/Sを更にオフ寄りとした仕様が、R12G/Sスポーツだ。前後タイヤをさらにオフロードパターンものとして(ミシュラン・アナキーワイルドを標準装着)リヤホイールを18インチ化し、最低地上高を標準240mmから255mmまで上げている。さらには大型エンジンガード、ハンドルバーライザーとハンドルプロテクター、エンデューロProのライディングモードなどを採用したもので、「エンデューロパッケージ」仕様とも称される。少しややこしいが、日本ではこの仕様をR12G/Sスポーツと称する。
付加されたエンデューロProについては別項で説明するが、オフでのスライドコントロールや意図的な姿勢変化などの制御を弱め、積極的なオフロードアクションを可能とする設定になっており、腕の立つオフロード乗りも満足させるように仕立てられた仕様だ。
2段構えとも言えるオン・オフ走破性を味わわせる仕様は、きめ細かいニーズを応えるものと言えるだろう。R12G/Sスポーツの価格はR12G/S(標準)対して割高となるが、オンロードメインで足着き性も犠牲にしたくない層は標準仕様を、よりダート走破性が欲しい層はスポーツというように、選択肢が存在するのは有り難いことと言える。

■カラーラインナップの3色それぞれにリヤ17インチで標準仕様のR12G/S、リヤ18インチ採用をはじめオフ寄りの設定としたエンデューロパッケージを盛り込んだR12G/Sスポーツが設定される。

■標準仕様の主要装備。濃い色で表記されるのがオプション装備だが、3つのライディングモードをはじめ、キーレスライドやギアシフトアシスタントPro、クルーズコントロールなど、ライダーアシスト機能は十分装備されている。

■R12G/Sスポーツの基本装備。標準仕様に対し、水色表記のエンデューロパッケージの仕様が標準装備されたのが特徴。路面に応じて随時空気圧を変更する場合も想定してか、スポーツはRDC(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)がオプション扱いとなる模様。

■サンドローバー・マット色のR12G/Sスポーツは、スタイルオプション719IIと称され、通常のエンデューロパッケージのほか、ハンドルバーライザー(+20mm)、ハンドルバー傾斜(10度まで上方へ変更可能)などが装備される。

■「スポーツ」に標準装備のエンデューロProのライディングモードでは、スロットルレスポンスがダイレクトになるほか、オフロードでのスライドやジャンプアクションなどを考慮してトラクションコントロールは最小制御、前後リフト制御の解除、前後ブレーキの制御も最小制御ないし制御解除などの設定となる。

■R12シリーズがベースだが、変更が加わったG/S専用のメインフレーム。エンジン搭載ポイントは同じだが、ステアリングヘッドを前方かつ上方に位置変更し、長いストロークのフォーク装着に対応。車高が全体的に上がるため、サイドスタンド取り付け位置も適正化。

■R12G/S標準仕様と、スポーツのディメンション比較。水色部分がスポーツの数値。スプリングトラベル(サスストローク)は同数値ながら、スポーツにリヤ18インチホイールを採用することで、標準とスポーツにはロードクリアランスほか、キャスター、トレールの数値に差が現れる。フロントアクスルは、フォーク前側にオフセットさせたG/S系共通の装備。

■リヤ18インチ採用のR12G/Sスポーツとリヤ17インチの標準仕様の場合では、フロントフォークの突き出し量も異なる。標準の突き出し量が15mmなのに対し、リヤの車高が上がるスポーツは前フォークの突き出し量を3mmと少なくして前後の車高バランスを最適化。

■長いストロークのリヤモノショックを装備するため、ほかのR12シリーズよりも垂れ角を大きくしたスイングアームに、ショックを寝かせた状態でダイレクトマウント。カルダンジョイントの角度も大きくなっている。







■指針式の速度計内に各種警告灯、下側の液晶表示部にギヤ段数、ライディングモード、切り替えでオド、トリップ距離ほか各種情報を表示。オプションで設定されるデジタルメーターでは、回転計表示も付加される。
R 12 G/S/同スポーツ主要諸元
※< >内はスポーツ
■エンジン 空油冷4サイクル水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク101×73mm 総排気量1169cc 圧縮比12 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力80kW(109ps)/7000rpm 最大トルク115Nm(11.7kgm)/6500rpm 燃費19.6km/L(WMTC値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.375 2速1.696 3速1.296 4速1.065 5速0.939 6速0.848 一次減速比1.737 二次減速比2.910
■寸法・重量 全長2250 全幅860 全高1256 軸距1580<1585> シート高860<875>(各mm) キャスター26.9°<26.8°> トレール120.8<121.3>mm タイヤF90/90-21 R150/70R17<150/70R18> 車両重量229kg
■容量 燃料タンク15.5L オイル━
■車体色 ナイト・ブラック・マット、ライト・ホワイト、サンドローバー・マット
■価格
【R12G/S】245万1000円(ナイト・ブラック・マット)、249万3000円(ライト・ホワイト)、267万4000円(サンドローバー・マット)
【R12G/Sスポーツ】254万5000円(ナイト・ブラック・マット)、258万7000円(ライト・ホワイト)、269万2000円(サンドローバー・マット)

まとめ●モーサイ編集部・阪本 写真●BMWモトラッド
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