かつてはオーナー自身がバイクのオイルや冷却水をマメにチェックする習慣があったと思うが、昨今はどうだろうか。
現代のバイクは機械の加工精度の向上などによって、性能もさることながら耐久性も上がっており、メンテナンスフリーのように乗ることができる。 だが、物理の天地がひっくり返ったわけではない。あくまでメンテナンスフリーの「ように」見えてしまうだけなのだ。
今でもちょっとした愛車の日常点検はやっておいて損はない。その一つとして水冷エンジンの冷却水の話をしてみたい。
通常冷却水はラジエターキャップで密閉された水路の中に入っている。水路内の圧力の増減に応じてラジエターキャップが内部で開閉し、その際にリザーブタンクにある冷却水がラジエターに引き込まれる構造になっているわけだが、密閉されている以上は減るはずがないと考えるのが普通だろう。
しかし、バイクとクルマに20年以上乗って、整備も行なっている身からすれば経験上、冷却水は夏を超えると必ず減っている。 もちろん他の季節でも減ることはあるがそこまで顕著ではなく、夏に関しては目に見えて減る。
一般的に水は100度を超えると水蒸気となり気体になる。それは冷却水とて同じことで、ある温度を超えると気体になり蒸発する(なお、冷却水は圧力がかけられているので沸点は100度以上となっている)。
その水蒸気はラジエターキャップの開閉時や、リザーブタンクから抜けていく。
というわけで、ラジエターやウォーターホースに漏れがなくとも冷却水が減ってしまうのだ。
さて、冷却水どのくらい減るかと言われれば、バイクの場合 夏の入り口にはFULLに入っていたものがいつの間にかLOWERを下回っていることがある。クルマの場合、筆者の乗っているBMW 320……オーソドックスな2000ccのNA車だが、これもひと夏を超えるとFULLになるまで1Lほど補充する。
ちなみに、冷却水の減りやすい車種、減りやすい状態(漏れが無い場合)というのもある。
一番わかりやすいのは 電動ファンの回っている時間と回数だ。
電動ファンが回るということはそれだけ水温が高温となっているということである。
つまり、ファンが回っている時間が長い→水温度の高い時間が続いているということになる。
これはあくまで様々な車両の整備をしてきた筆者の経験則だが、そもそも発熱量が多い大型バイク(大排気量車)で市街地走行や渋滞など低速走行が多い場合はちょっと注意だ。低速走行では走行風が少ないため、エンジンが過熱傾向になる。それを何とかしようと電動ファンが回る……というのは皆さんご存知だろう。
今年の夏も猛暑が続いたが、それを乗り切った愛車の冷却水量をこの機会に確認してみてほしい。
レポート&写真●バイク北村バイク 編集●上野茂岐
職業カメラマン。そしてただのバイク好きおじさん!?
中学生からモトクロスをし、高校生になるとキャブセッティングのアルバイトをしていた…そんな根っからのバイク好き(バイク狂?)。
その熱量は写真業にも向けられ、単身渡米しニューヨークで武者修行。
コロナ禍ではバイク熱が再燃しバイクを6台にまで増やした。最近の趣味は2ヵ月に一回車検に行くこと。