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【スズキDR−Z4S/DR-Z4SM試乗】 トラコンとパワーモードがオンでもオフでも最適にライダーをサポート

厳しい環境規制をクリアし、現代の技術で突き詰めた20年ぶりの新DR-Z

約20年ぶりに登場した新DR-Z。右はモタードモデルのDR−Z4SM、左がデュアルパーパスモデルのDR-Z4S

試乗会での技術説明の冒頭で、開発スタッフから「DR-Zはスズキにとって、GSX-Rやハヤブサなどと同等の価値があるモデルである」といった趣旨の発言があった。個人的には「その割にはずいぶんと長い間待たされたな」という思いはあるものの、異議なしである。

筆者は20年ほど前に、モタード仕様にカスタムしたDR-Z400Sを愛車にしていた。DR-Z400SMが発売される前だったか後だったかは忘れたが、これが実によく走った。250㏄ではちょっともの足りないと感じていたパートが、すべてクリアになったイメージだ。もちろん、その当時はやっていた、ほぼレーサーそのままに保安部品を付けたようなカリカリのモタードマシンと比較すれば重く、パワーも不足していたと思う。

しかし、レーサー並みの軽量マシンが一般道で走りやすかったかといえば、さにあらず。DR-Zは多くのライダーにとって間口の広い設定となっていたのと同時に、重量が多い分は耐久性および信頼性に割かれていた。走りが確かなのと同時に、とにかく丈夫でスズキらしさを感じさせるモデルだったのだ。

だが、DR-Z400S/SMは、世界各国の環境規制が強化される中、国内では2008年にカタログ落ち。一方でアメリカ市場だけは規制が緩く、昨年まで販売が継続されていたとのこと。そして、その販売台数も決して悪い数字ではなかったことが、ニューモデルの投入を遅らせた一因になっていたという。

かくして、遂に登場した後継モデル。オンロードモデルと比較すると、なかなか「アッ!」と驚かせることは難しいかもしれないし、遠目で見ると20年の歳月の経過がさほど感じられないような出で立ちだが、じっくり観察すれば外装はシャープさを増した今風のデザインだし、フレームやスイングアームは完全新設計。当然ながらサスペンションもまったく違う。

DR-Z4Sのストリップ。フレームとスイングアームは従来型から進化した新作
新型DR-Zのセミダブルクレードルフレーム。規制対応と最適な剛性・強度を確保するためフレーム、シートレール(アルミ)、スイングアーム(アルミ)を新設計
先代DR−Z400S/SMのフレーム。新型と同じセミダブルクレードルタイプながら、メインフレームは新型のツインスパー型に対してこちらはシングル

エンジンはほとんどのパーツを新作しているというが、従来型をベースにしている。もともとのレベルが非常に高かったからだろうと思えるものの、20年間で進化したエンジニアリングを大いに反映した進化形を見てみたかった気持ちもある。だが、重要なのは「乗ってどうか?」だ。

DR-Z400S発売当時の排ガス規制は、ユーロ2。現在のユーロ5+に比べると非常に緩い規制だったようで、今回のモデルチェンジではまずその点を対策。当然それはパワーダウンを要する方向だが、さまざまな技術を投入して、従来型に遜色ないパワーと、より優れたコントロール性を備えたという。また、厳しくなった法規をクリアするための部品、例えば装着が義務化されたABSやセンサー類、さらに、トラクションコントロールなど新機能に関わる装備によって従来型と比べて結果的に重くなってはいるものの、それを差し引けば本体は従来型より軽量に仕上がっているという。

アップデートが図られたエンジン。ツインプラグ化のほか、スロットル径拡大(36→42mm)、チタンバルブ採用やバルブリフト量アップ、ピストン形状変更など多岐にわたる

今回の試乗会は、午前はオンロードコースでDR-Z4SM(以下SM)に、午後はオフロードコースでDR-Z4S(以下S)に試乗するというスケジュール。両車ともにシート高は890mmと高い。21インチフロントホイールを装着し、サスペンションストロークも長いSモデルのほうが当然シート高が高くなるはずだが、日本仕様ではSにローシートを標準装備してシート高を下げている。軽量でスリムなため、シート高の数値に比べてプレッシャーは少なめではあるが、頻繁に足を着くようなシチュエーションでは少し気になるかもしれない。

とはいえ、SMは800台、Sは400台の年間販売予定数のところ、発売日から1週間経過していた試乗日当日には、すでに合計で1500台を超える受注があったという。客観的に見てもこれはなかなかの数字だが、スズキのほうでは増産を検討しているとのことだ。

モードセレクトのSDMS、トラクションコントロールを司るSTCSなど、ライダー支援のセレクトモード搭載も新型DR-Zの大きな特徴

使い分けが有効なトラコンと、進化を感じるサス設定
【DR-Z4SM】

DR-Z4SM
DR-Z4SM
DE-Z4SM

まずはSMからテストを開始。非常にスムーズで、扱いやすいエンジンが印象的だ。しっかりとしたトルクはあるものの、ある意味シングルっぽくないフィーリングで、ストレスなく高回転を多用できる。また、高回転域に向けてパワーが落ち込むこともなく、気持ち良く回っていく。今回のような全長1kmほどのサーキットやそれ以上に広いサーキットであれば、もう少しパワーが欲しいと感じたが、公道ではその軽さと相まって十分過ぎるパワーだと感じられるであろうことは、過去のモデルからも経験済みだ。

パワーモードは3種類で、どれでも最高出力は変わらないものの、過渡特性が変化する。また、トラクションコントロールの介入設定は、乾いた舗装路面向けのモード1、濡れた舗装路面向けのモード2のほか、オフロードを想定したG(グラベル)モードがあり、キャンセルすることも可能。さらにABSはリヤのみカットすることができる。

車体は自由度が高く、コントロールしている実感も大きい。一方でやや高速のサーキットでは、足周りが動きすぎる感触もある。そこで、3度目の走行前に前後サスの減衰力を強めてもらうと、グッと一体感が高まった。次の走行でさらに締め込んでもらうと、明らかに旋回力が高まり、接地感や安心感も向上。サス設定に関しては時代の流れを最も感じた点でもあり、減衰力を高めていっても非常にしなやかな動きが印象的だった(なお、SMとSではフロントフォークアウターチューブの剛性を変えているという)。

今回はサーキットのみの試乗だったが、SMはワインディングや市街地でも楽しめる素性が垣間見れた。

各ドライブモードの出力特性。A=アクティブ、B=ベーシック、C=コンフォート

■走行シーンや路面状況、好みのライディングスタイルに合わせて、出力特性の異なる3つのモードを選択可能なSDMS(スズキ・ドライブモード・セレクター)。最高出力は変わらず、出力フィーリングの違いを特に低速域から中速域で顕著に体感できるように設定。
モードAは、スロットルを開けたときのレスポンスが最も鋭く、エキサイティングな加速を実現。エンジンパワーをフルに活かすようにチューニングしており、良好な路面でのアグレッシブな走りを楽しむのに適している。
モードBは、自然なスロットルレスポンスで、リニアなパワーデリバリーが特徴。幅広いライディングスタイルや路面コンディションにフィットする満足度の高いセッティングバランス。モードCは、ソフトなスロットルレスポンスと穏やかなトルク特性。快適性を優先したセッティングで、濡れた路面や滑りやすい路面でのライディングに適している。

トラクションコントロールの各モードの制御介入イメージ

■前後輪の速度センサー、スロットルポジションセンサー、クランクポジションセンサー、ギヤポジションセンサーの情報により、リヤタイヤのホイールスピンを検出した際、速やかにエンジン出力をコントロール。ライダーは1・2・G(グラベル)・OFFの4つのモードから選択可能。モード1は乾いた舗装路面向けで、モード2は濡れた舗装路面向け。DR-Z4SとDR-Z4SMは、同じ路面での走行を想定したセッティングだが、サスペンションやタイヤの違いに合わせた専用チューニングを施している。
システムの介入が最も少ないGモードは、未舗装路でも駆動力を保持し、高い走破性と安定した旋回性をサポート。ライダーが滑りやすい路面などのオフロードでの走行でも自信をもって楽しめることに焦点を置いて設定。また、V-STROM1050DEや同800DEとは異なる新コンセプトを採用し、フラットダートだけでなく起伏のある地形でも効果を発揮することを目指してセッティングしたという。

DR-Z4SM

S専用のGモードが、しなやかなパワーを引き出す【DR-Z4S】

DR-Z4S
DR-Z4S
DR-Z4S

午後はオフロードコースに移動してSをテスト。四輪のダートトライアル用コースとのことで、フラットではあるのだが、深いグラベル路面に手こずり、なかなかマシンの本質に迫れなかったというのが正直な感想だ。オンロードでもビクともしないSの車体剛性はオフロードではややもすると高すぎる可能性もあるが、そんな中でもフレンドリーなエンジンとしなやかな足周りが走りをサポートしてくれている印象。

また、S用に専用セッティングされたGモードはスライド時にも失速感がなく、「本当に効いているのか?」と思わせるほど。しかし、トラコンをオフにした際には、やはりもっと滑ってしまってあたふたするのだから、しっかり煮詰められていることが分かる。ライディングのスキルやシチュエーションによっては、非常に有意義な装備と言えるだろう。そして、大型のアドベンチャーマシンに装備されているような安全面を優先した制御と異なり、より積極的なライディングに向けた設定だと感じられた。

ところで、約120万円という価格設定も話題となった新型DR-Z4S/SM。そのことに対しての質問に、開発陣は「妥協せずに、専用設計として作った。適正価格だと思う」と回答した。実際、妥協すればもっと安く作れたはずだが、DR-Zというブランドに対するプライドを大事にして、乗り手にそれを感じさせる仕上がりを実現。こだわりがしっかりと詰まったマシンとなっている。

DR-Z4S

DR−Z4S/SMの各部紹介

先代のDR−Z系がベースだが、最新の規制に対応しつつ出力の向上、メカニカルロスの低減、エンジン特性の改善が図られた水冷単気筒398ccエンジン
デザイン的なアイコンともなるバイファンクションLEDヘッドランプ。コンパクトなユニット内にリフレクターを装備し、効率的な配光を実現
軽量で強度と柔軟性の高いアルミ製のテーパーハンドルバーの中央に、フル液晶インストルメントパネルを配置するハンドル周り。写真では見にくいが、ハンドル左側にヘルメットホルダーを装備
左の操作系。グレーのモードセレクターとボタン、ウインカー、ホーン、前方にパッシングとハイビーム切り替えを配置
右操作系は、スターターとキルスイッチ、その下にハザードボタンを配置
フル液晶インストルメントパネルの表示

■液晶パネルメイン部には、速度、走行距離、ギヤ段数、燃料残量、時計、走行モードやトラコンのレベルなどを表示。またディスプレイの両側には、ウインカー、エンジン警告灯(MIL)、ニュートラル、マスターウォーニング、ハイビーム、トラクションコントロールシステム、ABS警告灯、ABSファンクション、水温警告灯、油圧警告灯、バッテリー充電警告灯を見やすいレイアウトで表示。

燃料タンクは先代モデルの9.5Lから8.7Lへと減量されたものの、先代比約5%の燃費改善で、航続距離は4Sで241km、4SMで250kmを想定
JASO(日本自動車技術会規格)のシート高900mm以下の規定に適合させるため、4Sは30mm低いローシートを標準採用してシート高を890mmとしている
4Sの前輪タイヤは21インチの80/100サイズで、内部構造とコンパウンドを4S専用にチューニングしたIRC製GP-410を標準装着

■ABS付きのブレーキは270mm径ディスクとニッシン製2ポットキャリパーの組合せ。なお4SのABSはリヤOFFモードに加えて、スズキでは初のフロント、リヤOFFモードも装備。KYB製倒立フォークは280mmストロークで伸圧減衰力調整が可能。

リヤタイヤは18インチの120/80サイズでフロントと同様のIRC製を標準装着

■リヤサスペンションは、KYB製のプリロード調整を含むフルアジャスタブルタイプショックをリンクを介して支持し、296mmと十分なストロークを確保。

車体左側サイドカバー部にキーロック式の工具、書類収納スペースを確保

4SM用シートは4Sより30mm高い(厚みのある)標準シートを装着。前後サスストロークが異なるため、結果的にシート高の数値は4Sと同じ890mmとなる
4SM専用の内部構造とコンパウンドを採用した17インチタイヤはダンロップ製SPORTMAX Q5A

■フロントブレーキは大径310mmフローティングディスク+ニッシン製2ポッドキャリパーの組合せ。KYB製41mmインナーチューブ径のフロントフォークは伸圧減衰調整付きで260mmのストロークを確保

17インチホイールのリヤタイヤも、専用の内部構造とコンパウンドを採用したダンロップ製SPORTMAX Q5Aを採用

■リヤブレーキは240mm径ディスク+1ピストンキャリパーの組合せ。4Sと同じくKYB製のリヤモノショックはフルアジャスタブルで、オンロード重視の4SM専用設定のストロークは277mmを確保。

DR−Z4S/同4SMのライディングポジション

DR-Z4Sのライディングポジション
DR-Z4SMのライディングポジション

■モタード/オフロードモデルらしいアップライトで自由度の高い乗車姿勢の2台。両車ともにシート高は890mmとなるが、身長165cmの体格で実際またがってみると、Sのほうがやや足着きが悪い印象。ローシートの形状が影響しているのだろうか。座った状態ではノーマルシートを採用したSMのほうが前後に動きやすく感じられた。

DR-Z4S/DR-Z4SM主要諸元

※< >はDR-Z4SM
■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク90×62.6mm 排気量398cc 圧縮比11.1 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力28kW(38ps)/8000rpm 最大トルク37Nm(3.8kgm)/6500rpm 燃費27.7<28.8>km/L(WMTCモード値)
■変速機 5段リターン 変速比1速2.285 2速1.733 3速1.375 4速1.090 5速0.863 一次減速比2.960 二次減速比2.866<2.733>
■寸法・重量 全長2270<2195> 全幅885 全高1230<1190> 軸距1490<1465> シート高890(各mm) キャスター27°30′<26°30′> トレール109<95>mm  タイヤF80/100-21 M/C 51P<120/70R17M/C 58H> R120/80-18 62P<140/70R17M/C 66H> 車両重量151<154>kg
■容量 燃料タンク8.7L エンジンオイル1.9L
■車体色 チャンピオンイエローNo.2/ソリッドスペシャルホワイトNo.2、ソリッドアイアングレー<スカイグレー、ソリッドスペシャルホワイトNo.2>
■価格 119万9000円

レポート●鈴木大五郎  写真●岡 拓、スズキ 
車両説明/まとめ●モーサイ編集部

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TEL0120-402-253(お客様相談室)
https://www1.suzuki.co.jp/motor/

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