バイクライフ

【元白バイ隊員が回想する】現場で慌ててしまった取締りのお話「新米隊員時代に痛感した、車両への知識不足」

今回は、私が新人白バイ隊員だった頃に実際に経験した、今思い返しても「アレは焦った…」という珍事件(!?)についてお話しします。

車両の種別と免許の関係が複雑な「あの乗り物」

イメージ写真(※本文とは関係ありません)

1.信号無視車両を停止させる

白バイ新隊員としてひとり立ちし、しばらく経った頃の話です。
その日も私は、交通量の多い国道で交通取り締まりをしていました。交差点が近づくたびに「赤信号を無視する車両はいないか?」といった信号無視の違反以外にも、様々な違反を探すのが習性となっているのです。

白バイに跨っている以上は気を抜ける瞬間はありません。当時は目を皿のようにして走っていました。今でも癖で、信号交差点で違反しそうな車をつい探してしまいます。そんな交通量の多い中、目の前の交差点をとんでもない勢いで信号無視していく車両を現認。

「行った‼︎」と呟き、即座にサイレンを鳴らして追尾開始。……ですが、この時点で私は妙な違和感を覚えていました。信号無視をしていった車は、車幅は広いのに妙に小さく見えたのです。そして運転手の頭が、ちょこっとだけ外に見えている状況でした。

イメージ画像(※本文とは関係ありません)

2.「え!? これ…何?」

問題の車両を停止させ、後方から近づいた瞬間、私の頭は一瞬フリーズしました。後ろから見ると、小型の四輪オープンカーっぽい。でも前に回ると、大型バイク「……ん?」。そう、3輪のトライクだったのです。

しかもいかにもバイクをベースに、わかりやすくトライク化したという見た目ではなく、カウルが大部分を覆っていて、一見すると小さな車に見えてしまう外観だったのです。今でこそ、さほど珍しくもありませんが、当時、田舎ではほぼ見かけない存在。しかもかなり大柄なトライク。冷静に考えればなんて事はないのですが、当時の私はこの時点で完全に混乱していました。

前1輪、後ろ2輪の一般的なトライクは道路運送車両法では「側車付き二輪車」、道路交通法では「普通自動車」に分類。違反の場合は四輪の違反として処理され、免許は普通自動車免許が必要

3.新米白バイ隊員、知識不足を痛感する

今なら即答できますが、当時の私は「そもそもトライクって、普通自動車扱いだったかな?」というレベル。

昔からあるサイドカーならわかりますが、トライクかぁ…という感じで、取締りの現場で「初めて見る乗り物」に遭遇した瞬間でした。とはいえ、焦っても仕方ありません。まずは基本に立ち返り、車検証を確認することにします。

車検証に書かれていた用途は「乗用」、車体の形状は「側車付オートバイ」と記載されていました。「側車付きオートバイなの? もっとわかりやすく記載して‼︎」と、心の中で全力ツッコミです。

当時の私は、なんとなくではありますが、「トライク=普通自動車と同じ扱い」という知識は持っていたため、ここでさらに混乱が加速します。車検証を見れば混乱が解決されると思っていましたが、そうではなかったのです。

4.なぜそこまで気にするのか?

そもそも、なぜそこまで車両区分を気にするのか、理由は単純です。車両区分が違えば、反則金が変わるからです。

これは取締まる側として、絶対に間違えられないポイントなのです。交通取締りで反則金を間違うことは、御法度とされています。当然、誤った反則金で切符を切る訳にはいかないですし、反則切符を作成する上で一番気を付けるべきポイントなのです。

とはいえ、警察官も人間なのでたまに間違ってしまうこともあります(そういう時は、何が何でも違反された方へ連絡等をして訂正させてもらいます)。

複雑になっていく車両区分、ややこしい免許種別

5.免許証を見て、頭から煙が出る

さらに混乱させる要素が……。当然、運転者の方の免許証を確認するのですが、その記載内容を確認すると、普通自動車免許のみ保有。ここで私の脳内会議が始まります。

●免許は「普通自動車のみ」
●車検証は「側車付オートバイ」
●実物は「三輪」
●自分の記憶では「普通免許で乗れる」

「え?これ無免許?」「いや、普通車扱いならセーフ?」完全に思考停止でした。たぶんこの時、ヘルメットの中で白煙が出ていました。

6.資料を確認し、本部に連絡

結局、手持ちの資料と照らし合わせてみましたが、当時の資料にはそこまで詳しく書かれておらず、また参考資料にはこのような大型のバイクを大改造した車両の記載などはなかったのです。

念のため、電話連絡をしてさらに本部へ確認しました。しかし、当時は本部にもトライクに関して詳しい方がおらず、回答までに時間がかなり掛かった記憶があります。

結果、取扱い上は普通自動車扱い。無事に方向性は定まり、四輪の違反処理で完結しましたが、今でも思います。

●車検証は側車付きオートバイ
●実際は三輪
●取り扱いは普通自動車

「ややこしすぎるだろ! 」と。そして反則金は、二輪と四輪で大きく違います。なので、慎重にならない方が無理な話です。

7.車両区分って、本当に難しい

この頃は、トライクに限らず、貨物車両の分類や免許種別もややこしくなっていった時代でした。

例えば、2017年3月から準中型免許等が新設され、取得する運転免許により運転出来る車両の範囲が細分化されました。また、最大積載量や車両総重量でも車両が細かく分類されるようになり、現場の警察官泣かせな状況でした。

特に、普通自動車でも重量や乗車定員によっては大型車扱いになったりと車検証を確認しないとわからない状況なのです。

2017年に新設された準中型自動車免許の新設で、普通自動車以上の免許が細分化。ちなみに中型自動車免許の新設はその10年前の2007年
2007年、中型の新設と同時に、それ以前に普通自動車免許を取得した人は、既得権保護のためにこのような「8tに限る中型免許」になった。後の準中型の新設を含め、より複雑さを増していった

また、現場での確認作業を難しくさせたのが、車検証の小型化です。あの小さな車検証に記載されている内容を確認するのはもちろん、運転手さんに探してもらうのにも時間が掛かるようになってしまいました。切符の作成よりも車両区分を正確に判断する方が時間が掛かる、そんな状態だったな、と今でも思います。

従来のA4版に代わり普通車は23年1月4日から、軽自動車は24年1月4日から小型化されA6サイズとなった車検証。ICタグが搭載される一方、所有者名、住所などは券面には記載されなくなった

最後になりますが、「車両区分」って、取り締まる側でも混乱するくらい複雑なのです。万が一、交通違反をしてしまった際に、車検証の提示を求められたり、詳しく車両の区別について質問されたりして、イライラすることもあるかもしれません。

しかし、取締まる警察官に悪意はないので、優しく対応してくださると現場の警察官も助かると思います。

文●睦良田俊彦  写真●モーサイ編集部、睦良田俊彦

著者プロフィール

睦良田 俊彦(むらた・としひこ) 1986年北海道生まれ
趣味:クルマ、バイク

歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。
県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。

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