バイクライフ

実は日本と似ている!? ヨーロッパの二輪免許〈中免〉的制度や〈大型の限定解除〉もある【Vento Italiano N.2】

免許制度は基本、ヨーロッパで共通

イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第2回。
今回はイタリアの自動車運転免許制度について紹介していきます。

とはいえ現在イタリアの運転免許証はEU統一規格運転免許証となっておりますので、他のEU諸国もイタリアと基本的には同じと言えます。というわけで、おおむね「ヨーロッパの免許制度」として読んでいただければ。

まずイタリアのバイク事情に関してビックリなお話を紹介しましょう。なんと排気量問わず、全年齢対象でヘルメット着用が完全義務化されたのは割と最近で2000年3月のこと! そればかりでなく2011年3月までは50ccのバイクについては「免許証不要」という状態でした。

事故の増加なども踏まえ、そこから徐々にイタリアの免許制度も変わっていくのですが、現在……2024年12月時点の主要点をまとめてみました(トラックやバス、トレーラーの免許の細かい内容は割愛)。基本的に二輪車に関するものは「A」系となります。

なお、上位の免許を持っていればそれ以下の乗り物を運転できるのは日本同様です。

「AM」日本でいえば原付一種免許

14歳から取得可能。
運転できるのは、排気量50cc、出力4kW(約5.5馬力)までの二輪車と三輪車。二輪車はサイドカー付きを含む。原動機が電動モーターの場合は出力4kW(約5.5馬力)までのもの。
また、車重350kgまでで最高出力6kW(約8.1馬力)の「軽四輪車両」も運転可能。
いずれも上限速度は45km/hです。

なお、イタリア国外で運転するためには16歳以上でないといけません(隣国のフランスをはじめ、AM免許は16歳からとしているケースが多いことによる)。

軽四輪車両とはマイクロカーなどと言われる屋根付き軽四輪車両のこと。ただし屋根のない四輪バギーも含まれます。

AM免許で乗れる「軽四輪車両」の例。フィアットのEV「トッポリーノ」
「軽四輪車両」のナンバープレートは50ccクラスの二輪車、三輪車と同規格となる

「A1」日本でいえば小型限定普通二輪免許(原付二種免許)

16歳から取得可能。
運転できるのは、排気量125cc、出力11kW(約15馬力)までの二輪車で、出力重量比0.1kW/kg以下のもの。二輪車はサイドカー付きを含む。
三輪車の場合は排気量125cc、出力15kw(約20馬力)まで。
いずれも原動機が電動モーターの場合、出力の上限による。
また農業用車両(四輪車)で「バイク車両」のサイズ制限に収まる車両も運転可能。

「A2」日本でいえば普通自動二輪(かつての中免)

18歳から取得可能。
運転できるのは、二輪車は最高出力35kW(約48馬力)までで、排気量は問わず。ただし出力重量比は0.2kW/kg以下で、最高出力の2倍を超えるバージョンに由来しないこと。
80年代〜の日本の400cc車がおよそ50馬力前後だったのを考えると、A2は普通自動二輪(かつての中免)相当と言えます。
そのほか、出力15kw以下の三輪車、農業用車両(四輪)で「バイク車両」のサイズ制限に収まる車両も運転可能です。

ヨーロッパのヤマハのwebサイトから。MT-09にもA2で乗れる最高出力35kWバージョンがある(本来の性能は87.5kW=119ps)

「A」日本でいえば大型自動二輪免許

新規取得可能年齢は24歳からですが、A2を取得して2年経過した後、実技試験に合格すると最短で20歳で取得が可能。
二輪車(サイドカー付きを含む)は年齢に関わらず全車両の運転が可能。
三輪車は出力15kw(約20馬力)以上の運転も可能ですが、その場合は21歳以上である必要があります。
農業用車両(四輪)で「バイク車両」のサイズ制限に収まる車両も運転可能です。

「B1」日本で近いものは小型特殊…?

16歳から取得可能。
運転可能なのは最高出力15kW(約20馬力)以下の非軽四輪車両と、50cc二輪車などAM免許で乗れる車両。
そのほか、最高出力15kW(約20馬力)以下の四輪ATVバギーや四輪スクーターも運転可能です。
ただし三輪車に関しては制限があり、AM免許で運転できるものはOKですが、それより上の規格のものは運転できません。

AM免許で乗れるフィアット「トッポリーノ」よりもコンパクトに見えますが、写真はB1免許以上がないと乗れない「非軽四輪車両」
「非軽四輪車両」はナンバープレートの規格が二輪車と同様になる

「B」日本でいえば普通自動車免許

18歳から取得可能。
運転できるのは総座席数9席までの四輪車で、車両全体総重量3.5トンまでのもの。
またAMとB1で運転可能な車両もOK。なお、イタリア国内においてのみA1で乗れる車両(125cc、11kwまでの二輪車など)も運転可能。
三輪車は最高出力15kW(約20馬力)以下なら制限なし。15kwを超えるものは21歳以上と制限があります。
新規免許取得者には各種制限があります。

ヨーロッパのヤマハのwebサイトから。車両の右上に対応する運転免許のマークがある。125ccのNMAX、トリシティは「A1」、155ccのNMAXは「A2」となっている。300ccの3輪スクーターは「B」=自動車免許となっている点に注目(二輪免許の「A」でも条件次第で運転可能)

【補足】
三輪車とは車体を上から見た時に車輪の配置が二等辺三角形になっている車両のこと。サイドカーは含まない。ヤマハ トリシティ、ピアジオ MP3などバンク機構を備えた三輪スクーターは含まれる。


これらのほか大型の四輪車の免許として以下のものがありますが、細かい説明は割愛します。

C1:全重量7.5トンまでのトラック。取得は18歳から
C:全トラック。取得は21歳から(条件付きで18歳も可)
D1:ミニバス(総座席17まで)。取得は21歳から
D:バス(総座席17超)。取得は24歳から
BE:普通車トレーラー(7.5トンまで)。取得は18歳から
C1E:全重量12トンまでのトレーラー。取得は18歳から
CE:トレーラー。取得は21歳から
D1E:D1+軽量トレーラー。取得は21歳から
DE:D+軽量トレーラー。取得は24歳から

次に免許証の有効期限に関してですが、A1、A2、A、B1、Bについては、50歳に達しない場合は「10年間の有効期限記載日を超えた次の誕生日まで」。
50歳を超え70歳以下では5年。70歳を超え80歳以下では3年、80歳を超えると2年となります。

身体障碍者限定免許(BS免許)は医師の検査に基づき70歳までは5年。ただし、一般免許であっても糖尿病などの特定の持病がある場合には問診した医師の判断によって有効期限が決まり、その場合は記載の有効期限日までとなります(例:50歳以下でも5年未満かつ、その記載日まで有効など)。

なお学科試験については、AM免許のみ異なり、A1、A2、A、B1、Bは共通の試験となります。日本と異なり大型自動車免許であるC1、C、D1、Dなどについては取得にあたり別途追加の学科試験があります。また、日本で言う「二種免許」にも別の学科試験があります。

イタリアの運転免許証(筆者のもの)。現住所は表、裏ともに記載がありません。ただし、生年月日と出身地の記載はあります
イタリアの運転免許証の裏面。運転可能車両のと同カテゴリーの免許取得日、有効期限の記載がされています。左下「12」の所は備考欄で、「01」とは眼鏡・コンタクトレンズ使用必須を表します

イタリアの学科試験にはこんな問題がある

最後にイタリアの運転免許の学科試験で出される、二輪車に関係する問題をいくつか紹介。クイズ感覚で考えてみてください。

質問1
バイク用のライダーズ・ジャケットには、関節の部分に硬い保護パーツが付いています。

質問2
カテゴリーAライセンスがあれば、出力15kWを超える三輪車を運転することもできますが、その場合には運転者が21歳以上である場合に限ります。

質問3
バイク用グローブは季節によって、グローブに入っている断熱材の種類が異なる可能性があります。

質問4
バイクは目立ちにくいため、自動車のドライバーはドアを開ける際には、特に注意する必要があります。

質問5
カテゴリA1ライセンスでは、排気量125cm3までのすべての自動二輪車両を運転することができます。




正解
1◯ 2◯ 3◯ 4◯ 5✕


ミラノ市内公共二輪駐車場の様子。圧倒的に通勤の足としてスクーターが多い
同じくミラノ市内公共二輪駐車場。少数ながらビッグバイクも通勤の足になっている

レポート●酒井 博 編集●上野茂岐

著者プロフィール

酒井 博

1965年生まれ。1990年渡欧、1993年よりイタリアに。
現在はミラノにミラノ人伴侶と在住。本業は二輪・四輪等自動車系を含む機械・電気・電子系などの技術系(同時)通訳、翻訳。そのほか、イタリアから日本向けの二輪・四輪車両輸出業務等を手掛ける。

日本・英国・イタリアの3ヵ国各国の運転免許所持。イタリアの免許証は試験が厳格化された2021年以降に日本人がイタリアの教習所に通って取得した稀有な例である。
普通自動車・大型自動車・大型自動二輪免許。イタリア永久滞在許可証保有。

 

https://www.italogiapponese.it

 

皆様からイタリア・ヨーロッパの二輪にまつわる、ご質問・疑問・リクエストなどをなんでもお知らせください。「本当のイタリア」の様子をお伝え致していきたいと思っております。

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