■ながら運転は「携帯電話使用等」といわれる違反
運転中に電話がかかってきたりLINEが入ってきたりすると、ダメとは知っていてもつい携帯・スマホに手が伸びてしまうものです。
もちろん、携帯電話・スマートフォン使用の「ながら運転」は交通違反で、警察官に見つかると取り締まりを受けてしまうわけですが、海外には日本よりもずっと厳しい罰が設けられている国があることはあまり知られていません。
携帯・スマホの「ながら運転」について、日本と海外の罰則の違いを紹介します。
日本における携帯・スマホの「ながら運転」の罰則
日本で運転中に携帯・スマホを手で持って使ったり、画面を注視したりすると「携帯電話使用等」といわれる違反です(道交法第71条五の五)。
携帯電話使用等は、交通の危険を生じさせた場合と手に保持して通話などで使用していただけの場合とで罰則が異なります。
●交通の危険を生じさせた場合(交通事故を起こす原因になったなど)
・1年以下の懲役または30万円以下の罰金
・反則金制度の対象外ですべて罰則の対象になる
・違反点数6点
●手に保持して通話などで使用していた場合
・6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
・反則金1万8000円(普通車の場合)
・違反点数3点
2019年12月に改正道路交通法が施行され、携帯・スマホを手に持って運転しただけでも2回で免許停止、交通事故を起こしてしまえば一発免停に罰則が強化されました。
これでも十分に厳しく感じるかもしれませんが、海外にはこれくらいでは済まされない国があります。
携帯電話使用等の違反件数は全体の5位
内閣府が取りまとめている令和5年版の「交通安全白書」によると、令和4年中における携帯電話使用等の違反件数は25万2456件でした。
点数の加算+反則金の交通反則通告制度の対象となる違反の総数は505万3271件で、携帯電話使用等は全体の5位です。
■交通違反取締り(告知・送致)件数(零和4年)
令和2年中は30万9058件、令和3年中は29万735件だったので、令和4年は大幅に減少する結果になりました。
やはり厳罰化の効果は大きいようです。
「ながら運転」を超厳罰化!イタリアの道路交通法
2023年9月19日、イタリア・ローマから「携帯電話の『ながら運転』が厳罰化」というニュースが流れてきました。
イヤホン・ハンズフリーモードを使用せず運転中に携帯電話・スマホを使用した場合、違反点数は10年でいきなり2か月の免許停止、罰金は最高で1697ユーロへと引き上げられる法案が審議されているそうです。
1697ユーロを2023年11月時点のレート(162円)で日本円に換算すると約27万5000円になります。
さらに再犯者の場合は約2600ユーロ、日本円では約42万円の罰金が科せられる方向で審議されているそうで、日本とは比べものにならないほどの厳罰化が進められています。
そもそも、イタリアは道路交通法が非常に厳しいことで知られている国です。
駐車中にエアコンをつけたままにするのは禁止で、窓を閉めたままのクルマは警察官に声をかけられて車内が冷えていたら罰金という、日本では考えられないようなルールまで存在しています。
700m先からでも確認可能!海外のハイテク取り締まり
日本では、基本的に携帯・スマホを手に保持しているか、あるいは耳に当てているかを警察官が目で見て確認していなければ取り締まりを受けません。
早いスピードで走っているクルマの運転手が「ながら運転」をしているかどうかを目で確認するのは容易ではないし、見間違いをする可能性もあるのだから、ある意味ではユルい取り締まり方法だといえるでしょう。
オーストラリアの警察では、700m先からでも運転手の姿が鮮明に確認できる高性能カメラを導入して取り締まりに活用しています。
まるでスコープ付きのライフルを構えたスナイパーのような方法で取り締まりをしているのだから、まさに「狙った獲物は外さない」という姿勢です。
アメリカでは州によって対応が異なりますが、ノースカロライナ州の一部ではハンズフリー・スピーカーを使用しての通話も禁止となっており、日本よりも厳しい規制が敷かれています。
通話やデータ通信の電波をセンサーで感知する装置の開発も進められており、目で見て確認するだけのアナログな取り締まりからハイテク取り締まりへと進化している最中です。
違反件数は減少しても事故は増加……「ながら運転」の取り締まりは強化が必至
警察庁のまとめによると、令和4年中に発生した交通事故のうち、携帯・スマホの使用に起因して起きた事故の件数は1424件でした。
これは、あくまでも事故捜査のなかで携帯・スマホの使用が確認できたものに限っているので、たとえば事情聴取のなかで「携帯は使っていない」と嘘をついて統計に含まれなかった事故も潜んでいるはずです。
携帯電話使用等の取り締まり件数は減少傾向ですが、事故件数は令和2年・3年・4年と微増を続けています。
また、死亡事故の比率も0.81ポイントから1.97ポイントへと倍増しました。
こういった現状を考えると、さらなる厳罰化まではなくても全国の警察が取り締まりを強化するのは必至です。
時速60kmで走るクルマは、2秒間に約33.3mも進みます。
携帯・スマホに気を取られていると、気づいたときには目の前にクルマや歩行者が……といった事態も十分に考えられるので「ながら運転」は絶対にやめましょう。
レポート●鷹橋公宣 写真・画像●内閣府/警察庁/モーサイ編集部/PIXTA
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。