雄大なスケールの広がる北信エリアは、景観やワインディングはもちろん、温泉や歴史、文化など、この土地特有の特徴も多い。今年の春は、と言わずに何度も訪ねてみて、その奥深さを堪能してほしい。
report●櫻井伸樹
広いエリアには魅惑の旅スポットがあふれている
人が歩むような速度で草津の湯畑の横を抜ける。ここ数年は外国人観光客のおかげでいつでもにぎやかだ。
外湯の魅力に後ろ髪を引かれつつ街を抜け、国道292号「志賀草津道路」へと向かう。
志賀草津道路は、国内でも有数の絶景スカイラインだ。草津側から入れば、まるで芸術的とも言えるターンを繰り返し、標高を上げた先には白根山の真っ白い山並みがズワワッと迫る。
やがて山田峠に差し掛かる辺りがこの道のハイライト。
森林限界を突破したこのエリアに高い木々は少なく、山の稜線にへばりつくようにハイスピードコーナーが続いている。アクセルを開けてその景色の中にバイクとダイブしていけば、日常の悩みやしがらみ、くだらない人間関係など、どこかにふっ飛んでしまうだろう。
この景色と道は、時として人生にも影響するほどの圧倒的な力を持っている。
秘境 毛無峠
毛無峠。エンジンを切ると、冷ややかな風に包まれる。右を見ても左を見ても荒涼とした景色。空の青さ、下草の緑、そして黄土に光る大地、全てがまぶしい。
ここは山深い北信エリアにおいて、ちょうどそこだけ「馬の背」のようにぽっかりと空いた不思議な空間。南北が切り立っているので常に風が強く、真夏でもひんやりしている。
その風景は実に雄大で迫力あるスケール感に満ちているが、どこか他の場所にはない寂しい静けさがある。
かつて毛無峠の直下には「小串鉱山」という硫黄の採掘所があり、昭和初期には2000人を超す人々が生活を営んでいた。
しかし地滑りで多くの犠牲者が出たり、硫黄による亜硫酸ガスの影響で周辺の木々が消滅するなど、一方ならぬ悲しい歴史がそこにある。
峠に立つとどこか寂し気な雰囲気に包まれるのはそんな過去があったからかもしれない。しかしその寂しさや郷愁といったセンチメンタルな世界観こそ、この峠の大きな魅力である。
豊かな大自然とそこに生きる人々の営みに思いを馳せる
北信エリアはかなり広い。東は草津、軽井沢、浅間、嬬恋といった群馬と長野の県境辺りから、西は小谷、白馬、大町などの北アルプスの麓までを内包する。
東側は前述した志賀草津道路や毛無峠はもちろんのこと、その南の鬼押し・万座ハイウェー、つまごいパノラマラインなど走りどころに困らない。
その一方で北アルプスの麓エリアは、南北を走る国道148号が中心となるため走りはあまり楽しめない。しかしこの周辺が楽しいのは、県道322号や白馬の黒菱ラインなど、スキー場の中を縫って北アルプスの中腹まで行ける道が点在すること。また北信の中心である長野、千曲、上田、小諸といった町は歴史的に趣深い場所も多いので、ルートの中に組み込むとより旅に深みが出ることだろう。
北信エリアは長野県の中でも、平均的な標高は県内で一番低い。その一方県下最大の豪雪地帯でもあり、雪の回廊が有名だ。
東信エリアとはまた違ったテイストでライダーを楽しませてくれるだろう。
これから来るツーリングシーズンには、是非北信エリアに足を運んでみてはいかがだろうか。
路線開通予定日時の問い合わせ
上信スカイライン | 4月24日水曜日15:00 | 須坂建設事務所 TEL:026-245-1670 |
豊野南志賀公園線 | 5月22日水曜日15:00 | 長野県北信建設事務所 中野事務所維持管理課管理係 TEL:0269-22-3138 |
奥志賀公園線予定なし | 5月24日金曜日14:00 | 長野県北信建設事務所 中野事務所維持管理課管理係 TEL:0269-22-3138 |
つまごいパノラマライン | 4月11日木曜日午前 | 嬬恋村役場建設課 TEL:0279-96-1973 |
万座ハイウェー | 冬期閉鎖なし | 万座温泉観光協会 TEL:0279-97-4000 |
黒菱ライン | 7月1日月曜日 | 八方尾根索道事業者協議会 TEL:0261-72-2715 |