甲信

【おとなの信州探訪】非日常の佳景を求めて信州ツーリングへ:後編

●県道40号(諏訪白樺湖小諸線)を白樺湖から上っていくと、この区間唯一の大型ヘアピンカーブ(写真)がある。遠くに見えるのは小諸市だ。このカーブの先に小さな展望台があり、北に浅間山、東に荒船山、南に蓼科山が見渡せることから「三望台」と呼ばれる

※本記事はMotorcyclist2019年9月号に掲載されていたものを再編集しています。

 

幸せになれる信州ミート

翌日の悪天予報も鑑み、SAでの朝食以降は日中ひたすら走り回っていたため、長野市のビジネスホテルに到着したときには空腹も限界突破寸前。

●戸隠神社前郵便局前から鬼無里へは一部すれ違い困難な細い道と急カーブが続く。頂上付近は切り通しとなっており、側道へ入ると展望台がある。峠を越えると鬼無里。下りきって開けた所が国道406号の鬼無里交差点で鬼無里中心街となる

いわゆる〝最高のソース〟を得た夜の肉祭りは、人生最大規模に魂を揺さぶられるものとなった。

バラエティあふれる信州の肉に関する関谷の解説、そして料理の画像は今後公開する記事を読んでいただくとして、まず訪れた『すき楼』にて『りんご和牛信州牛』のすき焼きをいただく。
口に入れた瞬間、かつてない幸福感が押し寄せてきた。

まさに天にも昇る気持ち……それは、単なる気のせいではなく、科学的な根拠もちゃんとある。

肉好きにとっては常識かもしれないが、牛肉や豚肉に多く含まれているトリプトファンという必須アミノ酸の一種からは、精神の安定に大きく影響を与える幸せホルモン〝セロトニン〟が生成され、さらにアラキドン酸と呼ばれる必須脂肪酸は、脳内で至福物質とも呼ばれる〝アナンダマイド〟という神経伝達物質に変化するのである。

良質な飼料と良好な環境で大切に育てられた信州牛の霜降り肉には、それら〝幸せホルモン誘導物質〟がよりハイクオリティなものとなっていることは想像に難くない。
実際、臭みやえぐみの一切ない濃厚な肉汁が舌と喉を越えて体に吸い込まれていくたび、思わず笑顔がはじけてしまう。
ふたりで顔を見合わせながら箸の動きが止まらないのだ。

すき焼きを完食した後、河岸を変えて鶏や馬も味わったが、どれも実にデリシャスだった。
舌の肥えている関谷は「これらの味を仮に東京で楽しんだとしたら、値段は倍どころか3倍以上になるかもしれない」と感嘆。
交通費、場合によっては宿泊費などを払っても、それに勝る満足感を得られるなら最高ではないか。

●鬼無里周辺には驚くほど高い場所に突然集落が存在する。急勾配の曲がりくねった道を上っていくと、そこには確かに生活があった。さらに高度を上げるとUターンすら難しいぬれぼそった道が現れてキモを冷やした……

 

今が旬の山道の先に

翌日、天候不良の予報は的中したものの、ポジティブな脳内物質が満ち満ちていたせいもあり、カッパを何度となく着たり脱いだりすることも全く苦にならない。
ヴェルシス1000SEは先進のABSとトラクションコントロールの他に、路面の変化に即座に反応しライダーを支援してくれる電子制御サスペンションが装備されているため、曇りから雨、ところにより濃霧と、目まぐるしく天気の変わる信州路を安心感と共に駆け抜けることができた。

松代から上田市を抜け、蓼科牧場まで南下した後、蓼科スカイラインで佐久に入る。
途中、県道40号を経由するが、この道は諏訪市から小諸市までの約80㎞を結ぶ長野で一番長い県道だ。
我々は立科町の国道142号から女神湖にかけての区間を通ったが、なだらかなカーブと直線で標高1000m以上の白樺林を貫く快適な道である。

蓼科スカイラインは、佐久と蓼科をつなぐ全長38.6㎞の舗装林道で、関谷が言うには「約20年前までは史上最凶の道のひとつで、その優雅な名前に騙された人が遭難するような道だった」そうだ。
確かに所々ガードレールもない舗装林道だが、現在はそこまで道路状況は悪くないし、蓼科山の大河原峠から臨む絶景は素晴らしい、らしい……当日の濃霧が悔やまれる。

この行程の中で、『信州ポーク』を探しつつ、とんかつとトンテキに舌鼓を打ち、最終目的地となった佐久市では〝畑の肉〟ということで大豆を原料とする味噌を使った安養寺ラーメンをいただく。
ここでも信州味噌の歴史に触れることができ、またまた好奇心が満たされたのだった。

 

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