なぜ信州のそばはおいしいのか?
高冷地でも良く育つそばは、米や麦の栽培に適さない北信の火山灰土の土地でも収穫でき、霧が立つことで、むしろより良い味となった。麺食のそばが普及した江戸中期以降には信濃国の名産と認識されるにいたる。この歴史のうえに、昨今の健康志向によるそばの増産と、品種改良などの努力が、より美味しいそばを生んでいる。
玄そばは黒っぽい殻を かぶっている
9月上旬になると戸隠 高原のソバが開花
信州で美味いそばに 出会うためには 綿密な計画をしよう。
信州をツーリングするなら、どこかのタイミングで美味しいそばを食べたいもの。そして、できることなら2食は食べて、比較などもしてみ たいものである。そのためには、そばを食べに行くという強い意志で計 画を立てねばならない。大規模な店舗ならいざ知らず、小規模の名店はそばの数が限られ、「売り切れ次第終了」ということも多い。早めの昼食(午前11時くらいが目安?)で1食目を済ませ、そこからツーリングを楽しむこと約2時間、違う風土で培った味のそばを遅い昼食でいただくというプランがいい。もちろん、2食目は麺の制限がない店を選ぶ。特に新そばの季節は、地域や店によっては営業時間に微妙なズレがあるので、計画時にしっかり 調べておくべきだろう。そばは山と水とに育てられる。幸運なことに、信州のツーリングルートにはそれぞれの土地の象徴である山と四方へ流れる川がある。2食のそばを求めて峠を越えれば、それだけで良いそばに出会えるのである。
■信州そばスポット1 富倉
志賀草津道路区間を擁し、屈指の山岳道路の印象がある国道 292号。群馬、長野、新潟を結び、県境はどちらも峠越えとなる。その新潟側の峠は戦国時代に上杉謙信が軍用道として開発した富倉峠である。富倉地区のそばは山ゴボウ(オヤマボクチ)の葉の繊維を繋ぎに使用するのが特徴で、独特のつるりとした食感が楽しめる。
・変わらぬ富倉の味を少しだけ気軽に楽しむ 郷土食堂
中野市内にあり、富倉地区に行かずとも富倉そばを味わえる。創業時は富倉地区で、現在も富倉産のそば粉を石臼で挽き、山ゴボウを繋ぎに使用する本格的な味を守る。ぼっち盛り風に盛られたそばを薬味のねぎや唐辛子味噌(かんずり・妙高名産)などでいただく素朴で独特な味わいが魅力。笹寿司もある。富倉そば750円〜。
営業時間:11:00〜17:30
定休日:木曜
住所:中野市吉田中川原1282-8
電話番号:0269-23-0388
・歴史ある県境の峠で伝統の味を守り続ける かじか亭
富倉の味を守り伝えるために 設立されたかじか亭。富倉地区産 のそば粉を近隣の民家で石臼挽 きし、手間をかけて抽出した山ゴ ボウの繊維を繋ぎに用いる伝統の 味をいただける。自家製の醤油か ら作られるそばつゆはほのかに甘 く、すっきりとした味わい。上杉 謙信公ゆかりの笹寿司と一緒に味 わいたい。ざるそば840円〜。
山菜そばや天ぷらそばなど温かいツユ物やそばがき、自家製もつ煮込みなど豊富なメニューがある。
営業時間:10:00 ~18:00(冬季は17:00まで)
定休日:火曜
住所:飯山市富倉 1769
電話番号:0269-67-2500
■信州そばスポット2 須賀川
志賀草津道路の北側、山ノ内町や木島平村を抜け、飯山へと続 く国道403号は、信州らしい牧 歌的で味わいのあるルート。この地の象徴する高社山(高井富士) は成層火山でもあり、周辺の地質はそば作りにも向いている。富倉地区と同様に山ゴボウを繋ぎに用いるそばと長野県無形文化財に指定される“はやそば”が特徴。
・山里の食堂で無形文化財をいただく 栄忠食堂
十割そばながら、繋ぎに山ゴボウの繊維を用いることで独特の滑らかな歯応えと喉ごしが魅力の須賀川そば。さらに郷土色豊かな“はやそば”も味わえる。早蕎麦とも記し、そば切りよりも早く簡単に調理できることに由来。茹でた千切り大根に水溶きのそば粉を混ぜたフワッとした食感をツユにくぐらせていただく。これも美味。
ボリューム満点のも りそば1000円。は やそば御膳1000円。 一品料理では岩魚 の塩焼きやそばせ んべいなどもある。
営業時間:10:30 ~ 14:00(夜は予約のみ)
定休日:火曜
住所:山ノ内町夜間瀬 8156-5
電話番号:0269-33-6230
■信州そばスポット3 戸隠
北信地域は昔から大きなそばの生産地であった。標高が高く、霧が多い場所で育ったそばは実がしまり、霧下そばと呼ばれて重宝されている。神話と忍術とそばの里である戸隠は、中世の頃には戸隠三千坊と呼ばれるほどの賑わいをみせた修験道の聖地であった。行者がそばがきを携行食にしたことが戸隠そばの原点といわれる。
・自家栽培する霧下そばを歴史ある神話の里で しなの屋
専用の畑で秋そばの時期(10〜11月)に 合わせて霧下そばを自家栽培する。竹で編まれた円形のざるに5つの束でそばを盛る、戸隠の特徴である“ぼっち盛り”された風味豊かな手打ちのそばを辛みのある戸隠大根の薬味でいただく。お茶請けとして供されるそば団子は、甘辛いタレとともにそばの風味を楽しめる逸品。ざるそば700円〜。
営業時間:9:30 ~ 17:30
定休日:不定休(12月〜3月休業)
住所:長野市戸隠 3498
電話番号:026-254-2248
・知れば知るほどそばは美味しくなる!? 戸隠そば博物館とんくるりん
戸隠のそば文化を様々な展示物で知ることができるミュージアムと地元の名人から直接指導を受けられるそば打ち体験道場、食事処が併設された施設。そば打ち体験は、ひと鉢(4人前)のそばを混ぜる、練る、打つ、延ばす、切るという全行程を体験できる。
■戸隠そばミュージアム/開館時間9時〜17時/入場料200円。■そば打ち体験/料金3250円(ひと鉢とツユ・薬味代)/所 要時間約1時間。そばは持ち帰り可能。
通常は3本の麺棒を使い、四角く(四つ出し)延ばすが、戸隠そばは1本の麺棒で打ち、丸く延ばす(丸延ばし)。
営業時間:9:30 ~ 17:30
定休日:第3水曜休館
住所:長野市戸隠 3018
電話番号:026-254-3773
・そば本来の深い味わいを年間を通して楽しめる うずら家そば店
新そばが熟成する厳寒期に石臼で製粉することで、そば本来の旨みをさらに引き出し、マイナス20度の冷凍庫で保存することで、年間を通して風味、甘み、豊かな食感を保った 手打ちそばが魅力。戸隠そばの特徴である水切りされていないそばに合わせた、手間をかけて作られるツユが見事に融合して喉を通るのは快感である。ざるそば840円〜。
営業時間:10:30 ~16:00 (売り切れ次第終了)
定休日:水曜(冬季は臨時休業あり)
住所:長野市中社 3356
電話番号:026-254-2219
■信州そばスポット4 小谷
武田信玄の家臣が発見したといわれる小谷温泉は、明治時代にド イツで開催された万国霊泉博覧会に草津、登別、別府とともに出展。その名湯へ向かう山の斜面の段々畑ではそば畑も見られる。小谷村では乾燥から製粉までを一元化した乾燥調整製粉施設と貯蔵冷蔵庫を運用し、年間を通して安定したそば粉の質が保たれている。
・古民家で味わう2種類の自家製粉そば そば屋蛍
できることなら2種類のそばを味比べしたい。
築120年を超える古民家を改修した趣深い佇まいの店舗。囲炉裏にかまどにランプのある店内で味わえるのは、石臼で自家製粉した2種類のそば。殻を取り除いた更科系の『蛍の緑(880円)』 とそば殻を一緒に挽いた『深里(780円)』というメニューで、薄くダシの効いたツユでいただくと より鮮明なそばの味に出会える。
あつあつのこんにゃくもお勧め。
営業時間:11:30~17:00
定休日:火・水曜(冬季休業)
住所:小谷村中土真木 16588
電話番号:0261-85-1810