ツーリング先で写真を撮りたいと思う人がいる。楽しい記憶を補完するため、どこで何をしたか記録するため、さらに今だったら「SNSにアップしたい」という場合もあるだろう。反対に、バイクでどこかに走って行く楽しさ、そこで体験した感動や心の振幅が重要で、写真を撮る必要はないと考える人もいる。
でも、どちらにしても、美しい景色、見たことのない光景、非日常的な空間に出会うことは、ツーリングの楽しみであり、心を洗ってくれる素敵な出来事だ。
地形の変化に富んだ伊豆半島にはそんな“行く価値アリ”のビューポイントや壮観な眺めが少なくないから、そうした場所を巡るのを目的にツーリングをしてもいい。
- 1.恋人岬(伊豆市) ●土肥から国道136号を8㎞南下した道路沿い。駐車場からは南側対岸にある黄金崎を背景にした写真が撮れる。また、徒歩で行く展望デッキからは南北に駿河湾を見渡すパノラマが広がり、天気がいいと富士山も望める
そして、当たり前だがバイクで行ける場所がいい。荷物やヘルメットを持って、急な階段や坂道を上って行く絶景ポイントよりも、できればバイクでそのまま乗り付けられるところが気持ちいい。
- 2.稲取細野高原(東伊豆町) ●稲取の町から上がっていく面積125haの広大なすすきの草原。標高821mの三筋山の山頂下駐車場からの眺めは、ご覧のような比類なき絶景。仲間がいれば遊歩道を走る自分を撮ってもらうことも。なお秋のすすきイベント時(10月6日~11月10日・入山料600円)は、ふもとの第2駐車場から先は車両進入禁止
写真を撮りたい人ならなおさらだ。できれば愛車と一緒に、というのはお約束だろう。というわけで、バイクに乗ったまま行けて、そこで写真が撮れるという条件の下、伊豆の美しい景色、壮観な眺めを探してみようと思ったのである。撮りようによっては〝インスタ映え〟もバッチリ、いつも以上に「いいね」がたくさん集まる、かもしれない(笑)。
- 3.戸田港(沼津市) ●人影が消えた夕暮れの浜辺から戸田の町を臨む。夕日は見られなかったが、青いトーンの山塊は水墨画のような予想外の美しさだった。バイクのヘッドライトやフラッシュを当てて工夫すればこんな絵を撮ることもできる
スマホやコンデジの発達、またSNSの隆盛で、気軽に愛車の写真を撮る機会が増えたわけだし、せっかくだからキレイな写真を撮りたいというのも人情だろう。で、ツーリング先で手軽にそこそこの写真を撮るためのポイントはというと……。
- 4. 石部棚田(松崎町) ●南西向きの斜面に広がる4.2ha、約370枚の棚田は、江戸時代に崩壊した棚田を20年かけて現代に再生したもので、静岡県の棚田十選の一つ。駿河湾も一望でき、条件のいい日は富士山や南アルプスを見ることもできる
①最近のスマホは“使える”。カメラは画角がかなりワイドだから景色を撮るには最適。しかし、そこでバイクや自分といった被写体をクローズアップするには、近付ける必要がある。ズームする場合は景色がフレームアウトするので構図を考える。
- 5.天城山隧道(伊豆市〜河津町) ●いにしえからの道に現代の"馬"が巡り会う。薄暗い山林の中にある、切り石のみで作られた隧道の佇まいは幽玄で荘厳。その姿は時代を超えて移動や物流に対する人の欲求と創意を伝える。日本の道100選の一つ
②ミニ三脚やバイク用カメラマウントは必須。この一工夫で、自撮り、長時間露光、走行動画撮影も可能となり世界が広がる。脚が自在に曲げられる「ゴリラポッド」が便利。
- 6.県道59号(西伊豆町) ●山の斜面を縫って走る"険道"。その勾配が緩やかになったかと思うと突然視界が開けた。標高約750m、仁科峠まではあと僅か。深い谷、彼方に霞む人里。文字どおりの雄大な眺めに伊豆の山深さと豊かな自然を実感する
③GoProなどのウェアラブルカメラを使う。バイクに搭載して動画、あるいは持ち歩いて静止画。画角は超ワイド、中位モデル以上はWi-Fiでスマホからのリモート可能と、撮れるシーンの幅も広がる。
- 7.西天城高原(西伊豆町) 高原。牛が放牧される広大な牧草地の向こうには、条件がよければ駿河湾と富士山が。一帯は西伊豆で最も眺望のいい場所として知られ、4月は410号沿いに桜が咲く
つまり、スマホ+GoProの組合せがお薦め。まあナビとしてスマホを使いながら、こんなシステムを構築している人はたくさんいるので、いまさら釈迦に説法という話ではあるが(まだの方はお急ぎ下さい)。
- 8.仁科峠(西伊豆町) ●仁科峠から西伊豆スカイラインへ接続する県道411号西天城高原線は1999年に敷設された新しい道で、眺望のよさで人気。良好な路面コンディション、直線とRの大きなコーナーをつなぐレイアウトは車載撮影にも向く
最後にお願い。細野高原、石部棚田、天城山隧道などは四輪も入って来るが、基本は徒歩の来訪者向けの遊歩道なので歩行者優先、くれぐれも穏やかに、お静かに。
report●関谷守正 photo●小見哲彦/柴田直行
- 9.筏場のわさび田(伊豆市) ●大見川の上流に位置する筏場のわさび田は15ha(東京ドーム3個分)という広大な面積を持ち、一つの谷が全部わさびで埋め尽くされる。特にお薦めは日よけのシートが外される晩秋。周囲の紅葉と相まって言葉を失う景観が展開される