観光もグルメも懐かしさ全開
房総半島を一泊ツーリングして改めて知ったのは、小さいけれどもピリッとアクセントの効いた観光スポットが多い、ということ。つまりじっくりと時間をかけて探す楽しみがあり、日帰りで訪れるにはもったいないエリアなのだ。もちろん日帰り旅を繰り返して房総半島を探検していく、という攻略法もアリだ。
「濃溝の滝」は、以前から観光地として存在していたものの、インスタグラムに投稿された一枚の写真がきっかけとなり「首都圏から近い秘境」として人気急上昇中のスポット。そのため観光バスの出入りも多く、混雑しがちだから早朝に訪れたい。
濃溝の滝 ●君津市の清水渓流公園内にあり、かつてトンネルを掘って農業用水を引いた「川廻し」の洞窟の一つ。秘境ムードが人気を呼んでいる
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●3月と9月の早朝には差し込む光がハート型を描く幻想的な光景を見られるそうだが、この日は残念ながら見られず、指でハートを作る生田
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●「幸運の鐘」はカップルにも人気
「大山千枚田」も、やはり首都圏から最も近い棚田として有名で、里山の奥に広がる田んぼを眺めると、日本の景色の美しさにほれぼれ。
大山千枚田
●鴨川市にある大小375枚の棚田で、雨水だけで耕作する日本で唯一の天水田でもある。そのため生息する動植物も非常に多様とか!
「道の駅 保田小学校」は、その名のとおり廃校になった小学校の校舎をリフォームして再利用している施設で、校舎の中に足を踏み入れれば気分はたちまちタイムスリップ。
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道の駅 保田小学校
●鋸南町にある、保田小学校の校舎を改築した道の駅。体育館を使った市場や教室を生かした雑貨店や食堂があり、宿泊施設や温泉も備えている
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●一見すると近代的な建物だが、中に入ると長い廊下に教室が並ぶ、昔ながらの校舎がそのまま残されている
「懐かしくてうれしくて、思わず駆け出したくなるけれど、そんなことしたら廊下に立たされちゃったりして」とジョークを飛ばした小川に、「それは実体験ですね」と石井がツッコミを入れれば、「子供を連れて家族と一緒に来るのもいいけど、こうして大人だけで小学校だった場所訪れるってのも童心に返れていいもんだね」と生田が大人のコメントでまとめる。中年男三人旅も夕飯と風呂と寝床をともにして仲間意識が高まったのか、会話のテンポもますますスムーズになってきた。
「月の沙漠」も子供のころに聴き、よく歌ったもので、今見れば砂漠と言うにはあまりに小さく狭い砂浜なれど、それも大人になったからこその感想なのかもしれない。
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月の沙漠 ●大正時代の画家で詩人の加藤まさを作詞、「月の沙漠」のモチーフとなった海岸。美しい白い砂浜には歌の世界を再現する銅像がある
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●「いくつになっても青春バクハツだ~!」と叫んでジャンプ。高さが足りないのはご愛嬌!
房総はグルメも楽しい
さて、房総といえばもちろん新鮮な海の幸だ。宿泊した「おんじゅく大野荘」では自慢の伊勢えびや刺身をたっぷりと味わい、太平洋の恵みを満喫。
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おんじゅく大野荘 70120-049-551 http://www.oonoso.co.jp
伊勢えびとあわび料理が専門で、多くのタレントも訪れるグルメ旅荘。夕食に饗された「伊勢えびの鬼殻焼き」は、秘伝のタレを重ね塗りしてじっくりと焼かれていて、えびの芳香な味をいっそう深めた極上の海の幸。8月からは伊勢えび漁が解禁となるため、鬼殻焼きだけでなく刺身も味わえる。海が見える大部屋もあるほか、タイル職人が手がけた幻想的な風呂では神経痛や筋肉痛などに効果がある温泉でくつろげる。港町の情緒をゆったりと楽しみつつ、じっくりと疲れを癒やそう。大野荘オリジナル「伊勢えびせんべい」は芳醇なうまさで、お土産にもぴったりだ。
しかし房総グルメはそれだけにとどまらない。山間部には多くの牧場があり、フレッシュミルクを使ったソフトクリームが絶品。
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濃厚な味のソフトクリーム ●濃溝の滝がある清水渓流公園の喫茶店「風鈴堂」が作っている「君津ソフト」は、地元の牧場で搾られた新鮮な牛乳を使ったソフトクリームで、濃厚なミルクの味わいがたまらない。また、地元産の卵を使った「舞プリン」も格別なおいしさだ
また、近頃は本格的な石窯を使って焼き上げるピザ屋や、町外れにぽつんとたたずむヨーロピアンスタイルのカフェが注目を集めており、房総の新たなグルメスポットになっている。「村のピザ屋カンパーニャ」もその一つで、古民家を改装した店舗はノスタルジックで、夏休みに泊まりに行った田舎のおばあちゃんの家を思い出す。
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村のピザ屋カンパーニャ
☎0439-29-2373 http://muranopizzaya.com
フランスパン用の上質な小麦粉、水、塩、酵母で作られた生地に、地元君津産の豚から作った自家製ベーコン、ドイツとデンマーク産をブレンドしたチーズなどを載せて石窯で焼かれるナポリ風ピザは絶品の味。店舗はオーナーである加藤満穂さんが生家を自ら改築した古民家で、石窯も加藤さんの手作り。地元産トマトをふんだんに使ったマルゲリータをはじめ、トマトソースを使わず地元産ハーブで風味を出したビアンカハーブ、小えびやツナ、しらすをトッピングしたシーフード系ピザも好評。素朴な味わいの奥に手作りだからこその深みがある。
道の駅 保田小学校で食べた「鯨カツバーガー」は給食の味。
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鯨カツバーガー
●道の駅 保田小学校内にある「Cafe金次郎」
(9:30~17:30 水曜定休)で味わえる房総グルメ。イカメンチやアジフライのバーガー、ミックスフライ定食やカレーライスもお薦め。メニューは季節ごとに変わるので、何度訪れても楽しめる
「いや~、たった一泊、しかも近場の房総でこれほどの夏休み気分を味わえるとは予想外でした!」と、満腹の小川が放った言葉に、二人は黙ってうなずくばかりなのだった。
(まとめ●山下 剛 photo●小峰秀世)
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