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■2022年8月31日〜9月2日、幕張メッセにて開催「オートモーティブ ワールド2022」
「クルマは将来、どのように動かす?」というイベントだった
「オートモーティブ ワールド」はクルマの先端技術展。2022年の今回で第15回となる、なかなかの老舗イベントだ。
同時開催として「スマート工場EXPO」「ネプコン(電装系) ジャパン」「ロボデックス(ロボット系)」「バイオマス展」「風力発電展」「水素・燃料電池展」「太陽光発電展」「二次電池展」「スマートグリッド(送電系)EXPO」「脱炭素経営EXPO」があった。
つまり「オートモーティブ ワールド」を核としたクルマの先端技術展とはいえ、スポーツ走行や快適性が云々……というものではなく、総体として事実上クルマがどのように環境適合して永く生き残るかについての技術展示となっている。
さらに、クルマそのものについてのネタは少なく、全体的に見ればむしろ、「従来から続くクルマ技術はひとまずおいておいて、明日のクルマに足りないものは周辺を含めて何だろう?」という感触だった。←レポーター個人のイメージです!
一方「バイクの話題もあるのかな」と探してみる。でも、ない。サンプル展示どころかパネルでの展示すら、ない。将来の可能性を表す展示にバイクがないということは、バイクに未来なんてないということだろうか?
水素燃料を扱うブースにてバイクについてうかがってみると、解説員は聞かれてキョトンとしているというレベルだ。水素は、重くかさばる圧力容器でガスを溜めておくのはやりにくい、冷却システムごと液体状態で載せるのは非現実的だし、吸着させても重量がかさむと、一般道を走るバイクの燃料とするのは難しそうだ。内燃機関としての技術と楽しさをガソリンエンジンから継承できるからと願っても、水素バイクの社会的実現は厳しそう?
水素関連以外のブースで聞いてみても「メーカーからバイクについての部品オーダーはない」「バイクについての話はない」などと、この脱炭素を問う社会で二輪は取り残されているような感触……。
電動バイクは、たとえ作れたとしても、いっぱい走らせるのは難しい?
そんな中、唯一、電動バイクと充電システムのセット展示があった。そこのブース解説者は実際に電動バイクで走り込んで、ツーリング中も各地で充電し、今でも十分に使用できることを確認していると話してくれた。これまでもさんざん内燃機関バイクに乗ってきたライダーとしての話だ。
ガソリン車とは乗り味から燃料(エネルギー)の充填方式まで違うが、どちらもそれぞれ楽しめるという。長距離も、事前に充電可能場所に立ち寄るルートを設定すれば問題ないとのこと。ルートに自由度がないのは問題じゃないか?とも感じるが、まあそれはさておいて、カーディーラーでも充電でき、たいがいは空いているとのいい情報もいただけた。
電動バイクは長い航続距離や大パワーを狙って車両を造るとどうしても重くなり、その重さによるデメリットを解消しようとするとますます大きなバッテリーが必用となりさらに重く……と負の連鎖に陥ってしまう。そうならないキリのいいところは、車重で150kg近辺、出力で250cc近辺までの設定という。
車両の金額や車検の有無など、コストも考えてこの設定がいいらしい。
使いやすそうで、買いやすそうだが、さて流行ってくれるかどうかというと、そこはインフラについての実際と、ユーザーによるイメージの両方が好転しないと難しそうだ。
メーカー同士がバッテリーは交換式?充電方式をどうする?設置場所は?と綱引きをしていたり、発動機部分の自社開発/製造にこだわっていたりすれば、たとえ技術的に可能であったとしても、街に電動バイクがあふれるのはもうちょっと先のことになりそうだ。その間にバイク離れが進まないことを願う。
以下はレポーターの興味に任せた気まぐれ会場取材。
「カワサキ」は液化水素運搬船をモニター上で動かす
我らがカワサキは、グループとしては世界初の液化水素運搬船の開発、「すいそふろんてぃあ」の建造に取り組んでいるとのことで、イメージを動画にして展示。人だかりができていたけど、ごめんなさいカワサキさん、燃料の大量輸送の話だとどうしても身近な感じがしない。重要案件であることは理解していますが。大型といえばカワサキですが、これはちょっと大きすぎ。
「日東工器」は水素充填ノズルを前面に
幅広く高技術の製品をリリースする日東工器は水素充填ノズルを展示。水素ステーションにて、一般のドライバー/ライダーが自分の手で満タンにできるタイプ。気体の状態で水素を流すため最大限に安全性が高められていて、圧力がかかっているのに、接続のときでも「プシュン」とすら言わないくらい漏れがないよう作っているとのこと。他社とは違う高レベルにあると、自信満々。何年かあと、水素ステーションが身近に感じられるようになってさえいたら、自分も使っているかも?
https://www.nitto-kohki.co.jp/
「双葉電子工業」は透過光表示のスイッチを展示
乗り物の電子化が進むと、表示やスイッチも変わっていく。こちらはマルチデザインプレート。
何でもない樹脂パーツであるところにバックライトからの透過光でスイッチを表示し、タッチパネルでの操作が可能というもの。もう今年(2022年)の11月にはメーカー納入の予定だそうだ。極端な話、今のクルマやバイクの樹脂パーツ部分はどこでもスイッチ化できそうで、将来が楽しみ。
「三菱鉛筆」は芯やインクで培った分散技術を披露
「uni」のロゴが高々と掲げられていた! クルマや燃料などとは、いったいなんの関係が!? その節はお世話になりました。けっしてサイコロにしたことはございません……の三菱鉛筆。
うかがってみると、電極の高性能化や最適化が、筆記具インクの分散技術……混ぜ方の技術を応用してうまくできるらしい。ほかにもカーボン焼成技術を使った振動板や電極などを製造。筆記具の芯としてカーボン材を扱って135年は伊達じゃない。
「FIVE WORKS」には無線で動く太陽光発電パネル洗浄機
芝刈り機のように見えるが……太陽光パネル洗浄機「SolarCleano」。リモコン操作で、広大に広がるパネルを回転するブラシで洗浄できる。パネル間が70cmあっても渡れてしまう。長さは1450mm、重量80kg、速さ40m/分、バッテリー稼働時間は2.5時間、無線は200m。エネルギー源を変えるということは、それに応じてこういう関連製品も登場してくるのだなと、妙に深く感じ入った次第。
「石垣商店」は銅製品特化型でこれからを斬る
観覧車、いいね! 先進素材が並ぶイベント内にあって、昔ながらの銅を前面に出しての展示を見ると心が安らぐ。そういえば最近、ワッシャー以外の銅パーツって、どこで見たっけ?
だが展示は懐かしさを狙っているわけではなく、じつは石垣商店は柔らかく熱伝導が高い銅でも精密な加工ができる業者。有名メーカー向けに変圧器や制御盤を納めている。
「Bell Energy」はカードで充電の設備、「TREVOLA」は求めやすい電動バイク
バイクツーリング中にちょっと充電……に対応するBell Energyの「Bell Charge」。給電コネクタを差し込み、充電時間をセット、カードで決済するだけ。こういうインフラが整っていけば、電動バイク市場も大きく動きそう。
解説に来ていたTREVOLA開発者とのおしゃべりでは、なぜか「2スト良かったよね」って盛り上がった。電動バイクというものを、内燃機バイクの延長線上にはない、まったく異なった乗り物として提唱。どっちのバイクもそれぞれにいいねということで、ウルフやガンマの話になったのだった。ほかのブースではほぼバイクの話ができなかったので、少々の脱線は許してほしいのだ。
以下、参考として「TREVOLA」の諸元を載せておくが、欲しくなりそうないい数値。軽くて、パワフルで、安い。250ccクラスとして気軽に乗れそう。
「TREVOLA SC-PRO Street Model」主要諸元
【モーター・性能】
種類:永久磁石5000W電気ハブモーター 総排気量:200〜225cm3相当 最高出力:13.1ps/80-100km/h 最大トルク:340Nm/0-50km/h 変速機:100%直接インホイールモーター バッテリー容量:72V 60Ah 一充電走行距離:80km(市街地走行) バッテリー重量:36kg
【寸法・重量】
全長:2,047 全幅:745 全高:1,138 ホイールベース:1,460 シート高:780(各mm) 車両重量:140kg タイヤサイズ:F110/70-17 R140/70-17 【カラー】
オレンジ、緑、ピンク、黒
【生産国】
中国
【価格】
60 万円
「アベル」からはステンレス黒発色材料が!
黒色といってもいろいろあるけれど、こちらはステンレスへの特殊酸化皮膜によりもたらされた独特の輝きをもった黒。見る角度で変わる色調が魅力的。塗装でもメッキでもない極薄膜は、耐熱、耐候、耐食性に優れた素材であり、曲げや絞りの変形加工をしても割れないという優れもの。つや出し、つや消し、ヘアラインと、各表面にも対応する。
過去にはレクサスへの納入があった。バイクのマフラーにも使用されたことがあるという。
「Caresift」では車両のCTスキャンデータを得られる
リバースエンジニアリングで他社製品を研究するとき、非破壊でCTスキャンデータを得てしまえるのがこちらの技術。組み付けられた状態での計測になるので、数値や形状の分解による変化がない。細部まで再現されるし、内部構造も分かる。極論、ライバル想定車をデータ的に一台丸ごと丸裸にできてしまうと。写真はアルミ構造サンプル。
「NVデバイス」の視線検知モジュールはライディング中にも使えそう
いちど人の視線を登録(3分くらい指定の場所を見るだけ)したら、マウスでポインティング&クリックするように、モニター上のものを視線で操作できるようになる。工場内で手が塞がっている場合の作業支援システムとしての開発だが、乗車中に手が空かないライダーにもいいかも!と思って紹介。勝手に夢を膨らませるわけです。
画面下にある視線検知モジュールが小さいのも、バイク搭載にちょうどいいのではないか!? 写真は基板の任意の場所を拡大して確認、その後承認ボタンを押すという試用画面。
以上、幕張メッセの2〜6ホール全部を歩いていたら、自分の体にエネルギー問題が発生したのでこれまでとします。
レポート&写真●モーサイ編集部・黒田
オートモーティブ ワールド
https://www.automotiveworld.jp/autumn/ja-jp.html