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世界的に電動バイクが増えている
「自動車業界は100年に一度の大変革期」──そんなフレーズを目にしたことはないでしょうか。パリ協定といって世界中の国々がCO2排出量を減らすことを決めたように、環境対応をしようというのは世界のコンセンサスとなっています。
そうした中で、四輪だけでなく二輪にも電動化の波は来ています。
日本ではホンダが業務用のスクーターを中心にバッテリー交換型の二輪車を量産しており、郵便配達などで実際に活用されはじめています。またカワサキが電動のスポーツモデルを開発しているのも知られています。
海外メーカーでは、アメリカのハーレーダビッドソンが「ライブワイヤー」というスポーツタイプの電動バイクを出していますし、台湾のキムコなども電動モデルには積極的です。
ボッシュのような大手サプライヤーから電動化ユニットが出ていることもあり、電動の二輪車については新興メーカーも多く見られる状況になっています。
ポイントは「定格出力」で、最高出力とは別物
では、そうした電動バイクの区分はどうなっているのでしょうか。従来のエンジン車であれば排気量によって原付(50cc以下)、軽二輪(250cc以下)などと区別していますが、エンジンを積んでいない電動バイクの場合はそうはいきません。
基本的には電動バイクの場合は駆動モーターの定格出力で区分が決まります。そして、道路運送車両法では、その区分は3つしかありません。
- 0.6kW以下:原付一種
- 0.6kW超1.0kW以下:原付二種
- 1.0kW超:軽二輪
ちなみに、ここでいう「定格出力」というのは、特定条件下において発生する出力のことで、カタログで見かける最高出力とは異なるものです。
ですから定格出力が0.6kW以下の原付相当の電動バイクでも、最高出力が0.6kWどまりというわけではありません。
具体的には、前述した郵便配達業務に使われているホンダのベンリィe:の場合は、原付一種の仕様ベンリィe:Iでは定格出力0.58kWに対して、最高出力は2.8kW。原付二種仕様のベンリィe:IIでは定格出力0.98kWで、最高出力4.2kWとなっているのです。
道交法と車両法で扱いが異なることも──0.6kW、1.0kW、20kWがポイント
さて、道路運送車両法では3種類にわけられる電動バイクですが、運転免許区分に関わる道路交通法では定格出力で20kWという新しい基準が存在しており、これによって4つに分けられるという「ねじれ現象」が起きています。
- 0.6kW以下:原付免許
- 0.6kW超1.0kW以下:小型二輪免許
- 1.0kW超20kW以下:普通二輪免許
- 20kW超:大型二輪免許
つまり、道路運送車両法ではどんなに大きなモーターを積んでいたとしても、軽二輪(250cc以下扱い)となるのですが、運転するために必要な免許としては、20kW超の定格出力を持つ電動バイクに乗る場合は、大型二輪免許が必要というのが現状です。
ですから、道路運送車両法では軽二輪なのに公道を運転するには大型二輪免許が必要になるという、うっかり間違えてしまいそうなことが起きかねないのでした。
過渡期ゆえに起きているねじれ現象で、電動の乗り物がもっと普及する頃には解決していることを期待したいのですが、この部分は現時点での要注意ポイント。なにしろ、20kW超の電動バイクを普通二輪免許で乗ってしまうと無免許運転という非常に重い罪になってしまうのです。
いずれの電動バイクも「現時点では車検不要」となる
ところで、道路運送車両法においてはどんなに出力が大きくても電動バイクである限りは軽二輪扱いということは、すなわち「車検不要」ということです。ハーレーダビッドソンのバイクを車検不要で乗れるというのは、過渡期の電動バイクならではといえるかもしれません。
もっとも車検があろうがなかろうが、電動車両というのは基本的にオイル交換が不要であるなどメンテナンスコストは下がる傾向にあるのは、すでに電気自動車が普及始めている四輪業界では常識となっています。
また比較的大きなバッテリーやモーターを積んでいる場合、回生ブレーキといって駆動モーターで発電することで減速する機能があり、それで十分な制動力が出せるので、ブレーキパッドが減りづらいといった部分でもメンテナンスコストは抑えられる傾向にあります。
ただし、電動の場合は音や振動でトラブルが予見しづらい傾向にありますから、ある程度のスパンで定期点検をすることは必須といえます。
バッテリーの管理など独特のノウハウも必要になったりするのです。そうした違いもありますから、初めての電動バイクを買うのであれば、やはりノウハウに長けたショップで購入することをお勧めします。
レポート●山本晋也 写真●カワサキ/ヤマハ/ホンダ/BMW/ハーレーダビッドソン/八重洲出版 編集●上野茂岐