石川県の能登半島北部に位置し、輪島塗や御陣乗太鼓など文化的な魅力の多い輪島市は2019年1月23日、「ライダーを笑顔で歓迎する都市」宣言を行った。宣言文の内容は以下のとおりだ。
輪島市ライダーを笑顔で歓迎する都市宣言(宣言文)
能登半島の先端に位置する輪島市は、豊かな海と山々に囲まれ、白米千枚田に代表される世界農業遺産「能登の里山里海」が広がる自然豊かな街です。また、禅文化が息づく曹洞宗大本山の總持寺祖院や日本遺産「北前船寄港地・船主集落」である旧角海家や門前町黒島地区の街並み、日本を代表する伝統工芸「輪島塗」、千年の歴史のある輪島朝市、能登のキリコ祭りや海女文化など先人達が築き上げてきた伝統文化、里山里海の幸を活かした輪島の食など多彩な魅力に満ち溢れています。
私たちは、この素晴らしい街に住んでいることを誇りに思い、全国からお越しいただくライダーの皆様を全市挙げておもてなしの心で歓迎し、賑わいと交流がより一層活発になることを願い、ここに「ライダーを笑顔で歓迎する都市」を宣言します。
このような宣言を行うのは、全国的で初の試みだった。宣言文においては「全国からお越しいただくライダーの皆様を、市をあげておもてなしの心で歓迎し、賑わいのあるまちづくりを進めていく」と書かれているが、宣言から2年が経った今、輪島市はどうなっているのだろうか。
輪島市が「ライダーを笑顔で歓迎する都市」宣言を行った理由は?
改めて、宣言の背景や宣言に基づく取り組みについて輪島市に聞いた。
輪島市地域振興課の担当者は、ライダーを中心ターゲットにすえて宣言を行った狙いなどについて「輪島市を含めた能登半島には美しい景観とおいしい食べ物があることに加え、ライダーにとって走りやすい適度にカーブを描く走りやすい道があることから、能登半島をライダーの聖地とし、地域の活性化に繋げたいという想いがありました」と振り返った。
宣言の背景には、1998年から2021年2月現在まで市長を務める梶 文秋氏(2021年2月現在も市長在任中)自身もバイクの魅力を知る大型二輪ライダーであったこともある。
「ライダーを笑顔で歓迎する都市」宣言で輪島市はどう変わった?
宣言後、輪島市はバイクによる地域活性化のアドバイザーとして、バイク冒険家で日本ライダースフォーラム代表の風間深志氏を「輪島モーターサイクル親善大使」に任命、早速ツーリングライダーを迎える環境の整備に取り掛かった。
手始めに、市の西端に位置する観光名所の「権現岩(トトロ岩)」から1.8㎞(バイクで約3分)の好立地にあった道の駅赤神(アカカミ)をライダーの歓迎拠点とするため、屋根付き2輪駐車場の整備、無料で使うことのできるエアゲージ・エアポンプ・スマホ充電器の設置を完了。長距離を移動するライダーにとってうれしい環境改善が行われた。
これ以外にも、市内の区役所や公民館、美術館の設備をベースに「二輪車無料休憩所」を26ヵ所も整備している。「二輪車無料休憩所」では、屋根のある場所で雨風をしのいで休憩ができるほか、車両点検、軽整備や雨具などの装備の着脱も行える。
また、ツーリングに欠かせない楽しみのひとつであるグルメに関しては、ライダー御用達メニューとして「バイクウカレー」を開発。カレーの上に車輪に見立てたふたつのメンチカツと排気口に見立てたブロッコリー、灯台にに見立てたポテトフライなどを配置した満点のボリュームながら価格は1000円を切る(2021年2月現在)嬉しいメニューだ。ちなみにネーミングは「バイク」と「倍食う」をかけている。
その他、道の駅赤神を始め、市内各所にライダーへの歓迎看板が設置され、市観光サイトにてライダー限定サービスを受けられるお店や無料休憩所を紹介するなど、市内のどこに行ってもライダーへの歓迎ムードが感じられる。
「ライダーを笑顔で歓迎する都市」宣言の効果は?
輪島市地域振興課の担当者によると、宣言の成果は早々に見られているようで、能登半島をツーリングで訪れるライダーは目に見えて増加しているという。
さらに、訪れるライダーのマナーの良さが地元で評判になっているといい、地元の方もライダーも相互に恩恵を受けている様子が伺えた。
市内には、白米千枚田、輪島朝市、總持寺祖院、権現岩(通称トトロ岩)、曽々木海岸・窓岩といった観光名所も多く、輪島市を訪れれば自然も文化も一度に楽しめるツーリングになることは間違い無い。
「ライダーを笑顔で歓迎する都市」の背景には「能登半島は訪れれば訪れるただけの発見と魅力がある」(同市)という想いもあったというが、かねてより風光明媚で風情があり、ライダーを飽きさせない土地としての魅力を持っていた能登半島。日本で唯一の走行できる砂浜である千里浜なぎさドライブウェイや海岸線の景色が楽しめるのと里山海道は有名だ。
そしてツーリングの拠点として輪島市も馴染みのある土地である。まだ訪れたことの無い人も、すでに訪れたことのある人も、能登半島、そして輪島市で新しい魅力を発見する旅をしてみてはいかがだろうか。
レポート●安藤悠太 編集●モーサイ編集部・中牟田 写真●輪島市地域振興課/観光課