ひと昔前であれば、100万円以下で購入できるバイクは一部のスクーターなどを除けばほぼ国産車のみだった。
しかし、欧州のバイクメーカーも東南アジアなどに向けた小排気量モデルをラインアップし、さらに日本の普通二輪免許に当たる欧州A2免許に対応する最高出力35kW(約47.5馬力)以下のモデルを用意するようになったことから、日本でも100万円以下で買える輸入バイクが少しずつ増えてきた。
そこで、国産車と同レベルの価格設定を特徴とする、個性的な輸入4モデルを紹介しよう。
トライアンフ
ストリートトリプルS
価格:99万9000円
今年1月に発売されたトライアンフのストリートトリプルSは、100万円を僅かに下回る、戦略的な価格設定がなされたことで話題となったシリーズのエントリーモデル。
同車は欧州のA2ライセンスモデルのベース車で、上位モデルのストリートトリプルRSやR Lowの765ccではなく、660cc並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。現地では35kW仕様もラインアップするが、日本に輸入されるのは最高出力95.2馬力、最大トルク6.7kgmのフルパワーモデルだ。
スペックと価格はホンダCB650R(97万9000円)に近いが、重量は188kgとCBよりも10kg以上軽量なので走りの楽しさでは負けていないはず。ライド・バイ・ワイヤを採用し、スロットルレスポンスとトラクションコントロールの設定を変更できるロードとレインの2つのライディングモードを備えるなど充実した装備も特徴で、個性的なスタイリングやLED式2眼ヘッドライトは上位モデルと共通だ。
ハーレーダビッドソン
ストリート750
価格:88万3300円〜
2013年のミラノショーで発表され、15年に日本に上陸したのがハーレーダビッドソンのストリート750。エンジンは6.0kgmを発揮する749cc水冷Vツインで、ハーレーらしいゆったり感とハーレーらしくないクセのなさが特徴。
初めてのハーレーとしてだけでなく、初めての輸入車、初めてのアメリカンバイクとしても適した1台だ。国産車では、最大トルク6.4kgmの649cc並列2気筒エンジンを積むカワサキ バルカンS(85万8000円)が近い。
重量は233kgと軽くはないが、750mmのシート高とコンパクトなサイズは小柄な女性でも安心して運転でき、手ごろな価格なのでカスタムのベースモデルとして購入するのもいいだろう。
同シリーズには、価格は100万円を少し超えるがよりハイスペックなエンジンを搭載し、ドラッグスタイルのハンドルバーやバーエンドミラー、倒立フォークなどを標準装備するカフェレーサーテイストのストリートロッド(103万5100円)もラインアップする。
BMW
G310R
価格:62万300円〜
G310GS
価格:69万5000円〜

●G310R

●G310GS
34馬力/2.9kgmの313cc水冷4ストローク単気筒DOHCエンジンを積んだネイキッドがG310R、それをアドベンチャーに仕立てたのがG310GS。新興国やA2ライセンス、そして最高出力が25kW以下に制限されるAライセンス取得後2年以内のライダー向けに開発された車両で、普通二輪免許で運転できるBMWのエントリーモデルだ。
重量はRが159kg、GSは170kgだが、これは320cc並列2気筒ネイキッドのヤマハMT-03 ABS(65万4500円)の169kg、248cc並列2気筒アドベンチャー、スズキ Vストローム250 ABS(61万3800円)の189kg、同じくカワサキ ヴェルシス-X 250ツアラー(70万4000円)の183kgと比較すると非常に軽量と言え、250cc車とは明らかに違う低速トルクの太さと相まって走りが楽しい。
特にRは車体がコンパクトなため街なかでも非常に扱いやすいので、国産250ccクラスを考えている人なら是非とも候補に入れてほしいモデルだ。
ドゥカティ
スクランブラーSixty2
価格:92万円
ドゥカティのサブブランド、スクランブラーのエントリーモデルで現行ドゥカティの最小排気量車がスクランブラー シックスティ2。エンジンはドゥカティ伝統のLツインで、排気量は普通二輪免許で運転できる399cc。最高出力は40馬力、最大トルク3.5kgmは国産車、例えばホンダのCB400スーパーフォア(56馬力/4.0kgm)や400X(46馬力/3.9kgm)と比較するとやや非力だが、重量が183kgと比較的軽量なこともありドゥカティらしい走りの楽しさはしっかりと味わえる。
ブレンボ製前後キャリパーを採用し、リヤにはプリロード調整可能なショックアブソーバーを装備。スクランブラーの名のとおり、ポジションはアップライトでサスストロークも長めなのも特徴だ。
上位モデルとのデザイン差が少なくボディサイズは800と同等なので、あえてシックスティ2を選ぶというのもありだろう。
輸入車も候補に入れ、自分に合うバイクを見付けよう!
趣味の乗り物であり個性を主張するアイテムでもあるバイクは、走りの味付けやスタイルなどそのメーカーの”こだわり”も考慮して選びたいもの。本来は国産車か輸入車かではなく、全てのメーカーを同じ目線で比較・検討してもいいわけだが、高価だった輸入車はそもそも「想定外」となってしまうことが多かったのも事実だ。
しかし近年は、車両価格100万円の予算があれば輸入車にも手が届く時代になった。国産車なら600〜750ccクラスの大型バイクが選べるが、排気量はバイクを選ぶ要素の1つでしかない。自分のバイクライフに合う1台を見付けるためにも、海外ブランドの走りもぜひ味わってみてほしい。
report:片倉義明