アニメやゲームのキャラクターをラッピングなどで大胆に描いたクルマを「痛車」と呼ぶ。
「見ていて痛々しいクルマ」がその語源などと言われるが、ボーカロイド「初音ミク」が描かれたスーパーGTマシンがサーキットを走り、「itasha」として海外でも通じるジャンルになるなど、ひとつのカスタムカー文化として浸透しつつある。
では「イタンシャ」とは何か。漢字では「痛単車」と記すのだが、これを見ればもうおわかりだろう。バイクの痛車のことである。しかし、クルマに比べ外装面積が少ないバイクの場合、一筋縄にはいかない難しい要素も……。そうしたなか、オーナーの皆さんの創意工夫で華麗に彩られた「痛単車」たちを当記事では紹介したい。
痛車に比べると数の少ない痛単車だが、もし見かける機会があったら、趣向を凝らしたカスタムの「ワザ」に注目してみてほしい。
カワサキ ニンジャ400×アイドルマスター
ゲーム、アニメ化、劇場版アニメと世界観を拡大していき、多くのファンを獲得し続けている人気シリーズ『アイドルマスター』。同作のキャラクター、小早川紗絵と塩見周子をサイドカウルに大胆に描いたマシンがこのニンジャ400だ。
オーナーのぱぴよんさんによると、テーマは「和風」と「レーシーさ」。なぜ和風かというと、作中でアイドルユニット「羽衣小町」を組む小早川紗絵と塩見周子は京都出身という設定があり、オーナーのぱぴよんさんはそこをクローズアップしたのだ。キャラクターが印刷されたシートは反射素材を用いて、昼はラメ、夜はマット調の質感となるゴージャスな仕上げだ。
カワサキ ニンジャ250×アイドルマスター
左右のサイドカウル、スクリーンに描かれているのはアイドルマスターの北条加蓮。このカワサキ ニンジャ250のテーマは「カッコカワイイ」とオーナーのコージさん。
マシンには北条加蓮しかいないが、作中で加蓮が所属する3人組ユニット「Triad Rimus」のマークがあしらわれており、キャラと世界観への愛情が満ちあふれている。
ホンダ CBR1000RR×アイドルマスターシンデレラガールズ
オーナーのsonoさんはCB400スーパーフォアのフルラッピング痛単車を製作していたが、「カワイイ系」でまとめたCBに対し、カッコよさを重視した2台目の製作を決意。構想1年、製作期間半年を経て完成したのが、神谷奈緒をクローズアップしたこのCBR1000RRだ。
一見オールペンに見える紫基調の車体はフルラッピングで、印刷したステッカーはカウルの形状に合わせて書き下ろしてもらったキャラのイラストのみ。
ゼッケンナンバーの「70」はもちろんナオの語呂合わせで、タンクには作中でのセリフを英訳したフレーズが立体的に描かれている。
ホンダ CBR250RR×ポプテピピック
4コママンガを原作とし、2018年アニメ化で大ブレイクした『ポプテピピック』のポプ子の目をCBR250RRの丸目2灯ヘッドライトと融合! オーナーのきさまさんは「ノリと勢い」で作ったというが、デザインを自分でしっかり考え、ボディの各所には作中の「煽り文句」もしっかり入っており、世界観を見事に表現している。
きさまさんがTwitterでこのマシンを公開したところまたたく間にバズり、しまいにはコミック原作者の大川ぶくぶ先生の目にとまり「いいね」をもらうという奇跡のような出来事が。「見かけはふざけたバイクですが、安全運転に努めます!」ときさまさん。
ホンダ レブル250×ブラックラグーン
車体面積(=描けるキャンバス)の大きいフルカウル車が多い痛単車だが、タンクを大胆に彩ることで個性を発揮しているマシンも。こちらのレブル250は『ブラックラグーン』の世界観を表現したもので、タンク右面にはメインヒロインのレヴィ、左面にはバラライカが。
キャラのイラストは、シルバーにカーボン調のシートを重ねたもので、ハードなイメージにまとめられているほか、銃のホルスターやサイドケースなどは自作。ど派手なガンアクション作品である『ブラックラグーン』劇中に出てきそうな雰囲気に仕上げられている。
ヤマハ TZR250RS×ウマ娘 プリティダービー
スマートフォン向けゲームからスタートし、テレビアニメやwebコミックなど世界観を広げていった、競走馬を擬人化した作品「ウマ娘 プリティダービー」。オーナーのゆきポメさんは乗馬をたしなんだり、乗馬クラブで馬の世話をしたり、リアルの馬も大好きで、車体に描いたキャラクターは「サイレンスズカ」。
このキャラを選んだのは、モチーフとなったサイレンスズカの現役最後の勇姿を幼いときに見た影響もあるといい「このマシンで北海道にあるサイレンスズカのお墓参りに行くのが夢」だそう。
まとめ●モーサイ編集部 写真●痛車天国
*当記事は痛車専門雑誌『痛車天国』(八重洲出版)の記事を再構成・編集しています。
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