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モトサービスエッジ 土方のトラブルから考える二輪車メンテVol.3「無意識が引き起こすギヤの異常摩耗」

バイクの動きや状態を人に伝えることは難しい

あるオーナーから「高速道路で6速巡行から加速すると息つきをする」という相談があった。バイクはCB400SF(NC42)で走行距離は2万5000km程度、車両もきれいで手入れもある程度行き届いており、それ以外には問題はないという。

CB400Super Four(NC42、キャンディークロモスフィアレッド)
価格92万8400円(ダークネスブラックメタリックは88万4400円)。

まず、考えるのは「息つく」というキーワードだ。
燃料系統に起因して、スロットルにエンジンが反応しないときになどに使う表現である。同じエンジン回転域で、ギヤが6速のときしか起こらないというだから、FIに起因したトラブルの可能性が高くなる。ギヤポジセンサーだったり、スロットルポジションセンサーだったり、もしくはそれを受け取るほうのECUであったりと想像する。

しかしFIコーションは出ておらず、故障診断機にかけても異常はない。だからって「異常なしです」とはいかない。不具合の原因を突き止めて、直す必要がある。ひとまず試乗をして現象を再現し、症状を確認することにした。

足癖に起因する異常摩耗

結果から言うと、FIやECUに起因することではなくミッション系に原因があった。オーナーは軽いギヤ抜けが起きたときのショックを「息つき」と思っていたのだ。

エンジンを降ろしてクランクケースを割った状態。進行方向は上側だが、逆さまにしてあるのでシリンダーヘッドは裏側になる。向かって左側の空間にクラッチが入る。この時点で対象のギヤのドッグ部分に欠けや打たれて角が丸くなっている様子が見られた。

色々試すと、オーナーが感じていた不具合はエンジンの回転数、速度に関わらず5速、6速で起きた。ただし、それを再現するためにはスロットルを一定にして駆動力がわずかに加わっているかいないかという状態を作る必要がある。そこからスロットルを一気に開くと、一瞬の「ガクッ」と反応が遅れ、もう少し連続的にショックが伝わってくる。オーナーはこのトラブルの一部を「息つき」と表現していた。

ミッションを取り除くと現れるシフトフォーク。メインシャフトの3、4速ギヤを左右に動かし5速と6速のギヤに動力を伝える役目を担うセンターのシフトフォークに注目。右側の左側のシフトフォークが無傷なのに比べ、側面が見事に削り取られている。

その時点で十中八九、故障個所はミッションの5、6速ギヤだろうと判断。オーナーからエンジンを降ろしてクランクケースを割る了解を得て、確認すると5、6速のドック部分に欠けが見つかった。プロ野球選手のインタビューではないが「今日から自信が確信になりました」と言ったところ。
加えてメインシャフト側の3速&4速ギヤを左右に動かし動力の伝達経路を変えるセンターのシフトフォークにも明確な異常を発見。そうした、関連部品を交換して修理は終わった。

メインシャフト側の3、4速ギヤのドッグ部分。4カ所あるがそれぞれに角が欠けているのが分る。駆動力が抜け、そこから駆動力がかかる瞬間にギヤが抜けてショックが起きた。二枚ある歯車は一体で間に先ほどのセンターシフトフォークが入る。

センターのシフトフォークを目で見てわかるほど薄くなっているが計測。仕様限度を大きく下回っている。左右のシフトフォークは摩耗すら見られなく、とてもキレイだった。シフトドラムもキレイだったのでこちらのほうは問題のある部分のみ交換。

トラブルの原因について考えたが、おそらく「足癖」の悪さではないかと思われる。これは、フロントブレーキと同時に替えたであろう、リヤのブレーキパッドがまったくないことがヒントになった。
無意識にリアブレーキを踏みこんだ状態で走っていたようで、その反対側の左足も5速、6速の走行時に、ペダルを無意識に踏みこんだあるいは、かき上げた状態でキープしていたのではないだろうか。

そのせいでシフトフォーク摩耗して変速ギヤの送り量が少なくなっていき、ミッションの噛み合いであるドッグ部分が欠け、そのため高いギヤでのギヤ抜けが起きたと思われる。
教訓ではあるが、変速時は必要以上にチェンジペダルを押し込み続けないことである。

センターのシフトフォークの新旧比較。本来のギヤとの当たり面を超えて本体まで削れている。

モトサービスエッジ 土方大助さん


●モーターサイクリストなど二輪車雑誌や一般誌のライターを経て、現在は静岡県浜松市にあるバイクショップ「モトサービス エッジ」の店長を務めている。
ライター時代は試乗テスト、カスタム、整備ものの記事に参加していた。その傍ら、自らテイスト・オブ・ツクバに参戦してFZ750でZERO1クラス優勝したほか、KENZ SPORTSの川島氏に引きずられて鈴鹿8耐や全日本ロードレースにメカニックとして参加。2006年の鈴鹿8耐ではスズキ系チームの監督として祭り上げられ、2台のGSX-R1000を走らせた。
国内外の原付からリッターマシンまで幅広くメンテナンスを行う。そのほか鈴鹿8耐に出場するマシンの整備も担当する、“何でも屋さん”。
「ユーザーさんの困っていることや要望を、一緒に考えながら解決していく」ことを自身のスタンスとしている。

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