2019年はホンダV4が誕生して40周年です。一時は「V4でなければホンダでない」くらいの熱狂もありましたが、今では直4の影に隠れてしまった感もあります。
ですがV4は生きています。伝統を守るだけでなく、最新技術もてんこ盛りとなって、VFR800FとVFR800X、2モデルがラインアップされているんです。
レーシングマシンNR500からV4の歴史はスタート
さて、元祖ホンダV4は1979年のレーシングマシン「NR500」です。WGP復帰の際に、4ストロークで2ストロークに打ち勝とうと、V4長円ピストン32バルブ(1気筒当たり8バルブ)という空前絶後のスペックで120馬力・2万回転を目指しました。
そして、ホンダV4が一躍メジャーになったのは1985年鈴鹿8耐のRVFですね。ヤマハのケニー・ロバーツ/平 忠彦組を猛追して、結果的に逆転勝利を決めたあの名レースです。結局8耐でホンダV4は11勝と、いやぁ、もう憎いくらいに強かった。
高回転までスムーズに力強く回って、とにかく壊れない。これがホンダV4の強さの大きな理由でした。
市販車も1982年のVF750シリーズから始まって、VFR、RVF/RC45と我が世の春を謳歌しつつ、街中やサーキットにはその野太い排気音があふれていました。
NR500から40年経った今、そしてRVF最後の8耐勝利から20年、現在ホンダのV4マシンはどうなっているのかというとMotoGPではRC213Vが絶賛活躍中でその性能は優位性は明らかですが、市販車はVFR800FとVFR800Xだけです。
世の中の変化もあるでしょうが、最大の理由は排ガス規制への適合が難しくなってしまったことですね。エンジンレイアウト上、後ろバンクのシリンダー周りが熱的に厳しくなるのがV4の宿命で、これが排ガス規制に響いてくる。この問題をクリアすべき新型V4も構想されていると聞きますが……。
このVFR800F(RC79)は、1998年のスポーツツアラーVFR(RC46)が源流です。基本はRVF/RC45のV4がベースですが、20年の時間の中で相当洗練されております。
世の中の変化もあるでしょうが、最大の理由は排ガス規制への適合が難しくなってしまったことですね。
エンジンレイアウト上、後ろバンクのシリンダー周りが熱的に厳しくなるのがV4の宿命で、これが排ガス規制に響いてくる。この問題をクリアすべき新型V4も構想されていると聞きますが……。
このVFR800F(RC79)は、1998年のスポーツツアラーVFR(RC46)が源流です。基本はRVF/RC45のV4がベースですが、20年の時間の中で相当洗練されております。
まず2002年のRC46でカムチェーンに変更されV4 VTECを採用しており(RVFはサイドカムギヤトレーン)、とにかく排気音が下と上では全然違う。低回転ではツインのようにダバダバ回り、高回転になるとブォーッというV4サウンドから、さらにキーンッという金属音に変わる。
それでいてストレスなく回転がギュンッと一直線にのびていくあたりはV4独自のテイストです(振動も少ない)。
80年代バイクブームを経験した人に刺さるVFR
しかも、動きがクイックでハンドリングが軽快といったV4エンジンの持つメリット──クランクが短いとか、車体幅がナローとか──は健在で、これが峠道では非常に楽しい。
最近のスーパースポーツより性格がマイルドでありながら、スパスパ曲がってよく寝てくれるので、年甲斐もなくコーナーを攻めてしまう。
S字の切り返しが決まった際には「オレ、もしかしたら上手いの?」なんて、とんでもない錯覚におちいるほどです。
さらに、2018年11月から発売されているトリコロールカラーのモデルには、あの「インターセプター」の名が冠されております。
この名はアメリカ市場での歴代V4モデルに与えられたもので、彼の地におけるホンダV4の代名詞です。
AMAスーパーバイクでインターセプターは大活躍し、フレディ・スペンサーやフレッド・マーケル、ババ・ショバートが歴代のエースとしてこれを駆りました。
そういった意味で、80年代のバイクブームの中で大人になり、レースファンだった私にとって、現在のVFRは心身ともにしっくりくるモデルでした。同じ経験をした人にもきっと刺さるのではないでしょうか。
先ほど「洗練されている」と言いましたが、この最新型VFR800Fは「大人のスポーツバイク」として、各部の仕上げも非常にエレガント。性能面も含めて商品としての完成度はピカイチです。
さすが、亀の甲より年の功、ですね。
(レポート●関谷守正 写真●岩崎竜太 編集●上野茂岐)
*当記事はモーターサイクリスト2019年8月号の記事を編集・再構成したものです。