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【三ない運動よさらば!!】かつての三ない運動推進県・埼玉の新たな試み

「免許を取らせない」「乗せない」「買わせない」をスローガンに、全国の高校で展開されてきた三ない運動。その先鋒とも言えた埼玉県だが、今年から方針を大きく転換。高校生に運転技術の向上を含め、交通社会の一員としての自覚を促す試みに取り組んでいる。

 

ついに、高校生にバイクと笑顔が戻ってきた!


(上写真)地元の秩父を始め小鹿野町、川越市、熊谷市、飯能市など周辺地域の高校から集まった参加者たち。参加費は無料で、自分のバイクでここまで走ってきて実技を行う。いかにも、という風体の学生は皆無で、みんなマジメそうな格好をしているのが現代風。

 

ひと昔前の社会認識では“バイクは若者の乗り物”という認識があったはずだが、現在では“大人の乗り物”と思われている。
一時期より減ったものの、中高年ライダーの無謀な運転や事故、あるいはり運転など交通モラルの低下も目につく。これらの要因のひとつが、三ない運動にあったのは間違いではない。

この運動は1970年代以降深刻化した暴走族問題や若者の死亡事故多発に端を発するが、これは教育現場における責任の放棄であり臭いものにフタをする安易な方法。
事実、その効果を疑問視する声は80年代後半から既にあり、運動を推進してきた全国高等学校PTA連合会も2012年に三ない運動宣言を見送って以降、乗ることを認め、交通安全指導に力を入れる姿勢に変わった。

そんな中、県内の公立高校では毎年春になると新入生に「高校生にバイクは不要」と書かれた入学説明資料を2016年まで配布し続け、三ない最後の牙城とも言うべき存在だったのが埼玉県だ。

しかし、2018年ついに三ない運動を廃止し、2019年からは届出制によりバイクの所有や運転、通学を可能とした。
同時に交通教育にも注力し、県教育委員会の主催で地域ごとに高校生のための安全運転講習会を積極的に開催している。

 

高校生の自動二輪等の交通安全講習

ここで紹介するのは秩父郡横瀬町にある秩父自動車学校で行われた講習会の模様で、100人超の地元高校生が参加。
一本橋やスラローム、ブレーキングなどの実技と、交通社会の一員としての自覚や交通事故時の対応法、救急救命法などを学ぶ講義が約4時間にわたり実施された。
講習に使うバイクは各自の所有車で、原付スクーターが8割、400cc以下のバイクが2割ほどだった。

アンケート結果によると、彼らがバイクに乗る理由は移動手段であったり、バイクが好きだからであったりと、かつてのバイクブームを支えた若者たちと大差ないことがうかがえた。
また、この日の一本橋の通過タイムの最高記録はなんと27秒。安全運転指導員の基準が15秒であることを考えると、相当な逸材だろう。白バイ隊員はその高校生をスカウトしたかったようである(笑)。

友人なのだろう、楽しそうに話しながら講習を受ける受講生。1980年代前半にはこのような講習の風景が見られたはずなのだが……。

思えばバイクブーム全盛時には各地の所轄警察署などがこういった講習会を開き、同じような光景を目にしたものだが、三ない運動の盛り上がりと共に風化していったようにも思える。

そして、大型二輪教習や高速道路ふたり乗りなど、バイクを取り巻く環境や利便性は格段に改善されてきている中、三ない運動の撤廃は大きな出来事である。

●埼玉県警察の後援により、白バイ隊員が正しい乗車姿勢の取り方や運行前点検、正しいブレーキングやコーナリングのこなし方、バランスの取り方など、極めて実践的な内容を指導。みんな真剣な面持ちで見入っていた

●救急救命講習では人工呼吸や、心臓マッサージの方法を教わる。普段、走っていて危ない目に遭ったり、ヒヤッとした経験のある人も多かったようで、「とてもためになった」、「安全運転を心掛けたい」という感想が多く見られた

バイクに若者を魅了する力がなくなったわけではないのは、参加者たちの表情や感想が証明している。
教育委員会のこのような取り組みは大いに評価すべきだし、今こそメーカーが音頭を取って、官民を挙げての取り組みに力を入れるべきである。

 

新境地? を切り開く今どきの若者たち

格好と受講態度は今どきの若者の傾向が表れているのか、みな真剣に取り組んでいるのが写真からも伺える……が、それと裏腹に乗っているバイクは超個性豊か。

写真上はロケットカウル装備のバリオスでスラロームに挑戦している受講生で、ほかにもセパハン装備のゼファーも見受けられた。
写真中央は正統派のYZF-R25。膝にはプロテクターを装備しており、ベテランバイク乗り以上に安全への対策を施していることがわかる。
そして指導員も警官も苦笑いしたのが、写真下の旧車會風GS400EとXJR400。よもやこんな仕様で講習会に参加するとは思いも寄らなかったが、バイクに乗るための筋道を示せば、それに沿ってきちんと権利を獲得するのがイマドキの若者なのかもしれない。

 

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