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モトサービスエッジ 土方の トラブルから考える二輪車メンテ Vol.2「FI車エンジン不調の原因を探る」

 近年のバイクは電子制御で動作している部品も増え、素人が簡単に手を出せる個所が少なくなってきた印象がある。
となれば、メンテナンスはプロのメカニックが専用機器を駆使して行うことになるわけだが、さしものプロメカニックでも頭を抱えてしまうトラブルも数多い。
 そんなときに頼りになるのは、今まで培ってきた経験と、それに裏打ちされた直感的判断力。

 というわけで今シリーズでは、プロメカニックが現場で直面したトラブルと、その問題をどのように解決したかを紹介していく。
 今回はフューエルインジェクションを採用したスクーターで起こりやすいトラブルの原因を探ってみよう。

前回の記事「コールドスタートなのにアイドルアップしない!?」

 

信号待ちでエンストする!?

前回のFIコーションが点灯しなくても、故障状態にあるという話をした。
今回もその流れで、エンジンに不調を起こしたアドレスV125である。

今回の患者であるアドレスV125Gと同型車両。この車両に関わらず原付のシリンダーヘッドのカーボンが噛みが原因で起こるエンジン不調の話は少なくない……。

そのオーナーは「少し前から時々、信号待ちをしているとエンストしていたけど、セルを回すとそれなりにエンジンはかかっていた。でも、今回は、そのあと全くエンジンがかからなくて、その内バッテリーが心細くなり、キックをしてもダメで……」ということだった。

走行距離は1万5000キロ超。ひとまず、バッテリーを充電して、一応故障診断モードにして診てみると、エンジンがかからなかったことによる過去故障的なトラブルは入っていたりする。だが、現状FIコーションはメーター上に立っていない。
実はこれ、FI原付1種2種スクーターによく聞くトラブルなのだ。
原因は燃焼室内に堆積したカーボンなどが排気バルブ等に噛みこんでの圧縮不良で、4サイクルFI原付1・2種車両での事例が多い。

 

インジェクションならではの問題とも言える

でも、電子制御のフューエルインジェクションのバイクですよね? と、思う人も多いだろう。FIなのだから燃調が正確に行われているし、燃焼状態も良好なハズだと。

ところがである。エンジンが良好に力を出しライダーが良好と感じる反応を示す燃調と、理想(理論)空燃比などで言われる燃調とには差がある。実際には理論値よりガソリンが濃い状況でエンジンは回っている。また、エンジンが冷えている冷間時にはかなり濃い燃調が取られている。

そういったときには未燃焼のガソリンもエンジンの燃焼後には含まれている。それをそのまま排気ガスとして出してはクリーンではない。そこで、エンジンの燃焼室から出た直後の排気ポートで新気を入れて(エアーインジェクション)、未燃焼の燃料を燃やしているというのが実情なのだ。

そこに今回の故障の原因の一端がある。加えて、その特性を理解せずにいるユーザーの使用方法である。このユーザーは朝、暖気もままならず走り出し、職場に向かうというのがメインの使い方だった。当然、走り出しから燃調は濃いままで、走り出しはその出力低下を補うためにスロットルを開け気味にして…。という毎日であった。

実際、プラグやマフラーを外し、排気ポートを除いてみるとかなりカーボンが付着している。となれば、修理の方法として、エンジンのヘッド周りのカーボン除去となる。とくに圧縮漏れの原因となる、バルブフェイスとシートの当たり面とその周囲を…。
となるとエンジンを降ろしてシリンダーヘッドをバラシての整備が必要になる、というのが順当な考えではある。

しかし、それでは修理費用もかさむ、原付サイズとは言えだ。

 

バラさず、ケミカルの力で問題解決

そこで、まずはケミカルを使ったカーボン除去をトライする。これは多くの事例があるといったとおり、対処療法的だが現場で行われている方法である。

エアフィルターボックス、点火プラグ、エキパイなどを外す。吸気側のエアフィルターボックスなどには吸気気温度センサーなどが付いているので断線に注意

手順はインシュレーター等のゴム類を避け、カーボンの除去機能のある洗浄剤を吸排気ポート、プラグホールを通じて燃焼室に送り込む。スペースが許すなら、細い樹脂ブラシなども活用する。仕上げはコンプレッサーの圧縮エアやクランキングを使い汚れや余分なモノを燃焼室の外に出すといった具合だ。

カーボン除去効果のあるケミカルをプラグホールや吸排気ポートに吹き込む。泡立って内面に付着して汚れを浮きあがらせるタイプがいい。

横倒しエンジンなので上流にあたるスロットルボディからエンジンコンディショナーを注入。吸気通路の届く範囲をコンパクトヘッドのブラシも使い清掃。インジェクターやアイドルスピードコントロールバルブなどの周囲も清掃にもつながる。

今回のアドレスV125の場合は、上記の清掃方法を実施して組み上げると問題は解決。始動も良好、試運転の結果も悪くなく、出力もしっかりと出ていた。

ただ、近い将来また、同じことが起きてしまう可能性がある。そこで使用にあたっての注意点として冷間時は少しアイドリングが落ち着いてから走り出すこと、そして時々でいいので清浄系燃料添加剤をガソリンに入れるようにと薦めた。
とくに清浄系の燃料添加剤は効果的で、車両メーカーもこの種のトラブル防止するために純正品を販売しているし、オイル・ケミカルメーカーなども製品を出しているのでチェックしてみるといいだろう。

なお、メーカー純正をはじめカーボン除去効果のある燃利用添加剤が出ている。同時にこれらは燃料通路やインジェクター内部をクリーンにする効果もある。小排気量スクーターだけでなく大型バイクにもおススメだ。なかには燃料タンク内の防錆効果が得られるものもあるので、色々とチェックしてみるといい。

<次回に続く>

 

モトサービスエッジ 土方大助さん


●モーターサイクリストなど二輪車雑誌や一般誌のライターを経て、現在は静岡県浜松市にあるバイクショップ「モトサービス エッジ」の店長を務めている。
ライター時代は試乗テスト、カスタム、整備ものの記事に参加していた。その傍ら、自らテイスト・オブ・ツクバに参戦してFZ750でZERO1クラス優勝したほか、KENZ SPORTSの川島氏に引きずられて鈴鹿8耐や全日本ロードレースにメカニックとして参加。2006年の鈴鹿8耐ではスズキ系チームの監督として祭り上げられ、2台のGSX-R1000を走らせた。
国内外の原付からリッターマシンまで幅広くメンテナンスを行う。そのほか鈴鹿8耐に出場するマシンの整備も担当する、自称“何でも屋さん”。
「ユーザーさんの困っていることや要望を、一緒に考えながら解決していく」ことを自身のスタンスとしている。

 

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