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紛れもなくインドネシア仕様のWR155Rに見えるけれど……

2025年3月21日(金)~23日(日)にインテックス大阪で開催されている第41回大阪モーターサイクルショー2025の会場から、気になる情報を早速キャッチ。ヤマハブースでは、日本のユーザーには馴染みが薄いけど、「どこからどう見てもあの車種」とわかるオフロードバイクを発見。しかし、いろいろと隠し事が多いようで……。
ヤマハブース中央付近。ダートを模した路面が築かれ、1段高い壇上に飾られていたのはヤマハを象徴する青いオフロードバイク。それは、「インドネシアなどで販売されているWR155Rと思われるモノ」なのだが、少々様子がおかしい。
シュラウドなどのデカールは、ほぼすべて青いカッティングシートのようなモノで隠蔽。ノーマルにはないハンドガードやフロントフォークのチューブなどは、パーツを追加しただけのことだろうが、リヤフェンダーに張られていたであろうコーションラベルもなければ、エンジンの打刻も隠されている。しかも、「オフロードカスタマイズコンセプト」という展示名称以外、メーカーからは何も公表されていない。
謎を深めるのは、展示車両の状況。このWR155Rと思われるバイクは明らかにオフロードを走行しており、リヤマッドガード裏側には洗車で落とし切れていない土の跡が残り、ステップやブレーキペダルなどは、オフロードブーツで付いたと想像できるキズが多数刻まれている。オドメーターの数字は411km。恐らく実走距離なのだろう。そして「コンセプト」と名乗る以上、そこには何かメッセージが込められているはず。そこで、いずれこのモデルが国内販売されることを前提に、3つの可能性について検証してみた!

その1:セローへの発展は、残念ながら厳しそう……

2020年夏に生産終了となったセロー250は、ヤマハどころか国内メーカーを代表するマウンテントレールとして人気を集めたモデルで、後継の登場を多くのファンが待望。これは「オフロードのヤマハ」復権のためにも必須と思われるが、残念ながらWR155Rと思われるこのコンセプトモデルが、セローに発展することはなさそう。何よりも問題となりそうなのはシート高。身長167cm・体重68kgのライダーだと、両足のつま先がツンツン状態で、ここから「2輪2足」でトコトコ山道を楽しむことをコンセプトに掲げ続けてきたセローに仕様変更するのは、不可能と思われる。
ちなみに、インドネシア仕様のWR155Rは880mmのシート高。最終型セロー250より50mmも高い。



その2:125cc仕様化は十分に考えられる
インドネシア仕様のWR155Rは、可変バルブタイミング機構(VVA)を採用した155cc水冷単気筒OHC4バルブエンジンを搭載。つまり、日本でも現在ラインアップ中のYZF-R15と同型となる(今回のコンセプトモデルにもVVAのステッカーを残されていた)。そしてYZF-R15には、ボアが6mm縮小された124cc仕様のエンジンを積む、YZF-R125という兄弟車が存在。つまり、125cc化は難しいことではない。
欧州ではかつて、WR125Rというオフロードモデルが販売されていたが、こちらは2017年に生産終了。一方で、現在もYZF-R125やXSR125やMT-125がラインアップされており、日本だけでなく欧州でも、WR125Rの発売にはなんら違和感がない。アプリリアなどの外国勢なら選べるが、日本メーカーの現行ラインアップにフルサイズホイールの本格的なオフロードモデルは皆無。つまりライバル不在だ。これらの理由から、「125cc仕様化の研究開発で実走させていた車両を、取り急ぎショーに持ってきた」というシナリオは、かなりあり得ると思う。


その3:それでもやっぱり155cc仕様を望みたいワケ

今回展示されたコンセプトモデルを見ると、インドネシア仕様のWR155Rと同じく、鋼管製フレームやスチール製スイングアーム、調整機構のない正立フロントフォークやプリロードのみ段階調整できるリヤサスなど、装備はシンプル。それでも、車体パッケージはオフ車としてかなり本格的で、ロングシートはかなり前側に座ることを許容し、スリムな車体とシュラウドデザインのおかげで足をフロントアクスルシャフト方向に出しやすく、オトナが乗ってもスタンディングがビシッと決まる位置にハンドルとステップがセットされていた。つまりライポジからも、オフロードの楽しさを満喫できるバイクであることが伝わってくる。
もちろんこれが125ccの原付二種だったら、維持費の面でのアドバンテージは生まれるが、代わりに高速道路は走れない。首都圏に住んでいると、オフロードに到達するためには事前にある程度の距離を移動しなければならないことがほとんど。せっかく本格的なオフロードライディングが楽しめそうな車体なのに、その場所にたどり着くハードルが高ければ、その存在価値は……。というわけで、維持費が多少高くなろうとも、インドネシアと同じく日本でも155cc仕様を展開するという可能性にも期待しておきたい!
レポート●田宮 徹 写真●モーターサイクリスト編集部
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