環境規制強化対応や経営対応が要因か
バイクの新車価格の高騰が止まらない。特に目立つのが1000ccクラスのスーパースポーツカテゴリーの新車価格で、この10年間で約2.5倍まで急騰していることがわかる。各銘柄が、自社頂点のハイスペッククラスとして性能競争も激化。そろそろ2020年モデルの発売時期を迎えるだけに、その価格動向に注目が集まる。
このスーパースポーツクラスの最高峰クラスは、1998年にヤマハYZF-R1が登場して本格的なマーケットが本格化したといわれる。わずか175Kgのボディから繰り出す150Psのハイパワーは衝撃的デビューだった。当時の新車価格は約100万円(税別)で、当時としてはかなり思い切った価格だった。
ホンダも、これに対抗して2004年に現在も継続するフラッグモデルCBR1000RRを発売。価格は、ちょうど100万円だった。カワサキやスズキからも対抗モデルが相次いで発売され、マーケットはハイスペックの熱い戦いが展開されていった。
この頃の新車価格は100万円前後で落ち着いていたが、それでも「遂に100万円時代突入か」と云われたほどの高額車両であったことも確か。
それでも2000年~2010年頃までは、徐々に値上げがあったものの2012年モデルのCBR1000RRが133万円だったので8年間で約33万円の値上げと過激な水準ではなかった。
それが2015年型モデル前後を境にして、200万円時代に一気に突入していく。さらに、その後もイヤーモデルが登場する都度、価格の上昇に歯止めがかからない状況が続き、250万円に近づいていく。
もちろん、50ccクラスのバイクでも値上げは行われているが、これほどの上昇は見られず、しかも比較的短期間での上昇はかつて経験のなかった事象といえる。
この要因は色々と考えられる。縮小する国内マーケットでの安定した経営をキープするためには、販売台数の極めて少ない同クラス車両の継続販売は、価格の変更が必要とみられる。
また、国内だけではなく世界的に環境規制が強まっており、この対応費用が必要になっているとみられる。例えば、国内では平成10年、平成18年に排気ガス/騒音規制が大幅に強化された。更に、平成28年規制では欧州EURO4規制とほぼ同等の規制に適合された。
同時に、新たな「車載搭載診断装置=OBD」義務化もされており、この対応にも当然ながら費用が掛かりそうだ。この後、2020年にはほぼ最終規制とも云われている「EURO5」規制が実施されるため、この対応も当然ながら必要になろう。
いずれにしても、このクラスの新車を購入しようとするなら、限定販売が多いために、事前予約をして、ほぼ定価での購入が求められる。新車価格に登録諸費用や消費税を加えた総額は200万円というより300万円に近い金額になっていく可能性が強い。
一昔前、海外ブランドの車両は高額という認識があったが、今や差ほど変わらない価格帯に。一時、軽自動車の上級車種が150万円を超えたとか、いや200万円を超えた、と話題にもなったが、今や、スーパースポーツバイクは、それ以上の贅沢品(?)になってしまうのかもしれない。