2018年の国内二輪車出荷台数と同需要台数が業界から発表された。それによると、出荷台数は前年比6%減の33.5万台、より実販に近い需要台数は36.9万台となり、こちらは前年比3.8%減と相変わらずの苦戦状態が続いていることがわかる。
さらにクラス別の数値を見ると原付第一種と同二種の台数差が3.7万台まで縮まり、2019年にも逆転する可能性が強まったことが注目される。
長年にわたって国内需要を支えてきた同一種がいよいよ終焉の危機に突入していることが、数値面からも明確になってきた。
report:田島史郎
縮まる1種と2種の台数差
特に、軽二輪車や小型二輪車クラスは、海外からの逆輸入車や海外ブランドが加わるため、需要台数の方が増えることになる。出荷台数の減少が続く中にあって、需要台数はプラス3~4万台の数値が毎年発表されている。
2018年の確定数値で最も注目されるのが、原付第一種と同第二種の出荷台数動向だ。
上記のように、2017年は8.5万台あった台数差が、わずか1年で3.7万台まで半減しているのだ。これは、原付一種の販売減に歯止めがかからず、毎年のようにマイナスが継続していることに起因している。
一方で、原付二種は制限速度がクルマと同等になっているので、より安全快適に乗れることが定着してきたことや、限定免許がスタートして取得しやすくなったことなどが需要増要因として上げられる。
マーケットを見ても、各銘柄からの魅力あるニューモデルの発売が相次いでいることや、海外銘柄車も参入、さらに並行輸入車も増加して価格面での顧客メリットも生まれているなど、プラス要素が多く、消費者の購買意欲を高めている。
これに比較して、第一種クラスは販売台数の減少とともに、商品ラインアップも減少、OEM生産が始まるなど、銘柄にとっても魅力ある商品から、負債商品へと変わりつつあるようだ。グローバルマーケットをみても、50ccクラスのマーケットはほとんどないのが実情で、将来的にも大きな変動が生じない限り需要が伸びる可能性は少ないとされる。
2018年の、第一種と第二種の台数差は3.7万台まで縮小しているので、このままの状況が続けば2019年には逆転して、国内マーケットの台数面での主力商品は初めて原付第二種クラスということになる。
世界的な変化に対応できるかどうか
この状況が業界にとって手放しで喜ばしい状況なのかと云えば、答えは複雑だ。保有台数で約1千万台ある50cc車が加速して減少することは、あらゆる面でマイナス要因が強い。もちろん販売店経営に与える影響もボディブローのように効いてくるはずだ。
第二種販売が増えるのは歓迎だが、この規模でかつてのような第一種マーケットを補完できるのかと云えば規模的にはまだまだ小規模だ。どこまで拡大可能なのかは非常に不透明との見方も強い。
さらに、現在のマーケットは以前とは全く異なる状態になっている。以前は、4銘柄が国内で生産して傘下の販売店に供給するスタイルだった。しかし、国内銘柄も世界での生産体制に変わり、現地で仕入れば、誰もが輸入して販売可能なグローバル流通に大きく舵を切っている。
同じ車両(?)なのに、ふたつ目の流通が当たり前のように生まれている。加えて、国内銘柄の生産車両なのに、銘柄の正規流通以外のグローバル流通で国内に出回るケースが当たり前のようになってきた。それだけではなく更に、海外銘柄の車両も負けじと加わってきた。
もっとも、原付50cc制度が生まれたのは昭和初期と云われている。当時、自転車の前輪に小さなエンジンを搭載して駆動させる「原動機付自転車」だ(原動機を後輪に装着するモデルもある)。それから一世紀近く経過しているのに、制限速度30Km/hなど時代錯誤な状態が続き、残念ながら、世界的な変化に後れを取ってしまっている。
今後はこの傾向を受けて、国内4銘柄だけでなく、海外ブランドの国内進出がさらに加速する可能性が強まっている。125ccまでは、国内安全基準をクリアしていれば販売に大きな負担が無い。その安全基準も世界統一基準に移行しつつあり、何処で生産しても世界マーケットで販売が可能になる魅力ある商品ともいえる。
もっと言えば、ある程度の資本力が有れば、何処にでもある高性能な工作機化などを購入し、同程度の車両を生産することが可能な時代に突入しており、今後とも新しいメーカーが生まれることは確実視されている。
工作機器の性能があがり、PC制御された自動生産体制により、誰でも(?)高品質なパーツから車両まで生産できる可能性が高まっている。新規事業としての商品のひとつとしてとらえられている。
果たして、原付第一種クラスの逆襲はあるのか、このまま原付二種クラスの勢力が拡大するのか、注目の2019年販売戦線は、すでに後半戦へと突入しているのである。